日本のカワイイカルチャーを世界に広めたレジェンドでありながら、変わらない愛らしさとピュアさで人の心を癒し続けるキティちゃん。サンリオに次々と新しいキャラクターが登場しても、その人気は不動です。「Hello Kitty展 ーわたしが変わるとキティも変わるー」は連日大勢の来場者がつめかけて盛り上がっています。
エントランスには、 紙袋から顔を出す巨大なキティちゃんが。さきほどの声の主はこちらの方のようです。リボンがよく似合うカワイイ女のコ。別の展示室には、キービジュアルの山口裕子さんによる原画も展示されていて、拝みたくなるような神々しさでした。
第1章では過去に発売された数えきれないグッズのうちの一部を、カラーごとにわけてアートのインスタレーションのように展示。その中で、このまま博物館の収蔵品にした方が良いかもしれないのが、1975年春に発売されたハローキティ第一号商品のプチパース。小さいがま口のお財布には、キティちゃんとミルクと金魚鉢が描かれています。おそらく数百年後には、日本の歴史的なオブジェとして、国宝級になっているのでは、と推察。プライスレスなアイテムはガラスケースに納められていて、その他の壁に貼られているアイテムは至近距離で眺めることができます。来場者は「これ持っていた!」などと盛り上がれるコーナーです。
たとえば、遠足で誰かが持っていて羨ましかった赤いチェックのリュックや水筒。昭和の空気が封入されていそうなペンケースやティッシュケースや小物入れ。カセットテープケースにも時代を感じます。見ていると走馬灯が流れ出すコーナー。ちなみに「ハローキティがサンリオで一番売れるキャラクターとなったのは1985年のタイニーチャムシリーズから」と説明に書かれていて、かわいい絵柄に和みました。タイニーチャムは男のコだけどハローキティのまねをして赤いリボンをつけていて、現代のジェンダーレス化を予言しているようです。
グッズのデザインにも変化があり、80年代のなつかしいシンプルなキティちゃんから、90年代に入るとCGが導入され、立体的なデザインも増えてきます。言われてみると写真調の、顔に陰影が入ったキティちゃんのアイテムも。また、キティちゃんにはピンクのイメージがありますが、意外にもピンクのアイテムが増えたのは90年代のキティブーム以降から。初期はパキッとした原色が多く、子どもに好かれそうな色合いです。90年代からは、対象年齢も広がっていったのでしょう。
2000年代に入ると、海外セレブがキティ好きを公言し、さらにハローキティグッズはおしゃれに洗練されていきます。海外のブランド、Heatherette(ヘザレット)とのコラボも印象的でした。マライア・キャリーやブリトニー・スピアーズ、ケイティ・ペリー、パリス・ヒルトンなど名だたるセレブがキティちゃんのファンでした、日本人として誇らしく、当時セレブのインタビューの機会があるとハローキティグッズをお土産に持っていった記憶が。パリス・ヒルトンには小田原のかまぼこハローキティのぬいぐるみを進呈したら、シュールさに驚きながらも喜んでくれました。
キティちゃんのすごさは、最先端のカルチャーやファッションセンスとうまく融合しながらも、「ご当地キティ」のグッズのようにシュールさも忘れない、というところです。おしゃれとシュールを両立できるキャラはなかなか他にいません。
第2章では、時代の空気を積極的に取り入れてきたキティちゃんの、ブームにまつわるアイテムを展示。1980年代に流行したモノトーンファッションのコーナーには高級感漂う黒いバッグなどが展示。1990年代半ばのギャルファッションのコーナーもありました。バッグには大量のハローキティのマスコットやポケベルが下がっています。
2000年に入ると、海外セレブファッションを取り入れたハローキティ。大人が持ってもCOOLというイメージになりました。この頃のキラキラしたポップなデザインはY2Kファッションの参考になります。続いて、2000年代に日本発信の文化としてカワイイカルチャーが注目された頃の、原宿デコラファッションのハローキティアイテム。既成概念にとらわれないクリエイティブな雰囲気です。ストリートファッションのコーナーもありました。スエットやキャッブなどジェンダーレスに着こなせます。現代の風潮を先取りしています。
第2章で、時代に合わせてアップデートしていくキティちゃんの感性に触れることができました。長年飽きられることがなく、人気を保ち続けているのは、好奇心旺盛で常に新しい文化を取り入れているからでしょう。
第4章では、「見返り美人図」や「風神雷神図屏風」「富嶽三十六景」など、東京国立博物館の所蔵品とハローキティがコラボした絵画も展示されていました。見返り美人を見てハッとするキティちゃんもかわいいです。
怒濤のコラボコーナーはさらに続き、ご当地キティや企業コラボ、ブランドコラボのアイテムも展示。JR西日本、NTT、マクドナルドなど名だたる大企業とのコラボを成功させてきました。アンバサダーとしてもトップの存在です。
そしてシュールな魅力が炸裂しているのはご当地キティ。長崎カステラ、アジの開き、ダイヤモンド富士、笹かまぼこ、かっぱ、ごんぎつね、パンダ、あえて対馬やまねこ、阿波踊りなど、あらゆるものにカワイイママに同化しています。
キティちゃんの輝かしい50年の活躍と、コラボの歴史を観賞できる展示でした。何よりキティちゃんは、私たちの人生とコラボしてくれる、ということに改めて気付かされ、感動の余韻に浸りました。
ハローキティ展(Hello Kitty展) -わたしが変わるとキティも変わる-
期間:~2025年2月24日(月・休)
時間:09:30~17:00 (入館は30分前まで)※毎週金・土曜日は19:00まで
休:月曜(祝日または休日の場合は開館、翌平日休館)、12月26日(木)~2025年1月1日(水)は休館。
※12月24日(火)、25日(水)は本展のみ開館。2月10日(月)は開館。
会場:東京国立博物館 表慶館
東京都台東区上野公園13−9
https://hellokittyexhibition.com/