スウェーデンを代表するデザイナーで陶芸家としても知られるインゲヤード・ローマンの幅広い活動を紹介する展覧会が、東京国立近代美術館工芸館で開催。工芸館の歴史ある建物の中に展示された、作家自身がセレクトした新旧の食器やインテリア雑貨など約180点は、北欧デザイン好きならずとも必見!
スウェーデンを代表するデザイナーで陶芸家としても知られるインゲヤード・ローマンの幅広い活動を紹介する展覧会が、東京国立近代美術館工芸館で開催。端正でありながら人肌の温かさも感じさせるガラス器や陶器の魅力を存分に感じられる展示は必見だ。
インゲヤード・ローマンは1943年ストックホルム生まれ。機能性を重視した日常使いの食器を中心に、シンプルながら芯の通った物作りを半世紀以上にわたって続けてきた。本展は2016年にスウェーデン国立美術館で開催された展覧会の出品作に最新作を加えたもの。ガラスメーカー、スクルフやオレフォスから発表されたガラス器や、自身の工房で制作された陶器、加えてイケアとのコラボレーションによって生まれた生活雑貨シリーズなどが一堂に集められている。「私が好きなのは産業とクラフトの間」と言うインゲヤードが手がけてきたのは、いずれも量産品。職人の手仕事に敬意を表しながら、作家性を求めず、「その物を所有しているのがあなただけである、という事に本質的な価値はない」と言い切る彼女のデザイナーとしての矜持が、それぞれのアイテムから伝わってくる。
展示デザインを担当したのは、スウェーデンを代表するデザインユニット、CKR。美術館の歴史ある空間と、インゲヤードの作品が見事に共存していて、その場にいるだけでも心地よさを感じることができるのが嬉しい。本国開催の時に彼らがオリジナルで制作した、金属製の脚に多彩な材料を使って作られた天板を載せたテーブルも作品展示に使われているので要チェック。重なり合うガラスを通してテーブルに映る光と影の美しさは息を呑むほど。
日本との繋がりも強く、2016年に有田焼創業400年を記念して、世界で活躍するデザイナーと有田の窯元の職人技術を融合、有田焼の新たな魅力を発信するべく立ち上げられたプロジェクト「2016/」に参加。また、’17年には木村硝子店より「インゲヤード・ローマン コレクション」を発表。今回も長期滞在し、トークイベントなど積極的に活動。10月27日(土)には美術館でも講演を行うので、ぜひその強い信念に裏打ちされたデザイントークに耳を傾けてみて。なぜ彼女の作品がこれほど長く、幅広い人々に愛されてきたのかがわかるはず。
インゲヤード・ローマン展
会期:〜2018年12月9日(日)
会場:東京国立近代美術館工芸館(東京都千代田区北の丸公園1-1)
時間:10:00~17:00(入館は閉館の30分前まで)
休館日:毎週月曜(9月17日、24日、10月8日は開館)、9月18日(火)、25日(火)、10月9日(火)
観覧料:一般600円、大学生400円 ※高校生以下および18歳未満、障害者手帳持参者とその付添者(1名)は無料
無料観覧日:11月3日(土・祝)
03-5777-8600(ハローダイヤル 8:00~22:00)
http://www.momat.go.jp/cg/exhibition/ingegerd_2018/
text : Shiyo Yamashita