2019.06.27

独立前後のフィンランドで活躍した女性芸術家を紹介。「モダン・ウーマン」展、国立西洋美術館で開催中

国立西洋美術館の新館展示室 2階では2019923日(月・祝)まで、「日本・フィンランド外交関係樹立100周年記念 モダン・ウーマンフィンランド美術を彩った女性芸術家たち」を開催。これまで日本ではほとんど紹介されてこなかった、フィンランドの近代美術の発展に貢献した女性芸術家たちの作品がまとめて観られる貴重な機会だ。

国立西洋美術館の新館展示室 2階では現在、これまで日本ではほとんど紹介されてこなかった、フィンランドの近代美術の発展に貢献した女性芸術家たちの作品がまとめて観られる「日本・フィンランド外交関係樹立100周年記念 モダン・ウーマンフィンランド美術を彩った女性芸術家たち」を開催中。

ヘレン・シャルフベック「占い師(⻩色いドレスの女性)」1926年
ヘレン・シャルフベック「占い師(⻩色いドレスの女性)」1926年 フィンランド国立アテネウム美術館 
Finnish National Gallery / Ateneum Art Museum, Kaunisto Collection 
Photo: Finnish National Gallery / Hannu Aaltonen

フィンランドの機能的で実用的なプロダクトデザインや建築、それに『ムーミン』シリーズなどは日本の人々にも身近な存在となっているが、フィンランドのアートに関してはまだまだ知られていないと言える。この展覧会では、2017年に日本で回顧展が開催された、フィンランドを代表するモダニズムの画家ヘレン・シャルフベック(18621946)、フランスで写実主義や自然主義を学んだ彼女の親友マリア・ヴィーク(18531928)、パリでロダンに学び、 彼の代表作「カレーの市⺠」制作時の助手も務めた彫刻家シーグリッド・アフ・フォルセルス(18601935)、シャルフベックとロダンに学んだヒルダ・フルディーン(18771958)、シャルフベックに学んだ画家で美術批評家のシーグリッド・ショーマン(18771979)、ヴァシリー・カンディンスキーの影響から革新的な色彩表現を追求したエレン・テスレフ(18691954)、第二次世界大戦後の世代を代表する表現主義の画家エルガ・セーセマン(19222007)という、フィンランドの近代美術界に革新をもたらした7名の女性芸術家に注目。当時のフィンランド国内はロシアからの独立前後のナショナリズムに沸いていたが、彼女たちはあくまで国際的かつ「モダン」であり続けようとし、自立したキャリアや革新的な表現を追求していった作家たちだ。

マリア・ヴィーク 「ボートをこぐ女性、スケッチ」1892年頃 フィンランド国立アテネウム美術館 Photo: Finnish National Gallery / Jenni Nurminen
マリア・ヴィーク 「ボートをこぐ女性、スケッチ」1892年頃 フィンランド国立アテネウム美術館 Finnish National Gallery / Ateneum Art Museum, Granberg Collection Photo: Finnish National Gallery / Jenni Nurminen
ヒルダ・フルディーン「考える老人」1900年 フィンランド国立アテネウム美術館蔵 Photo: Finnish National Gallery / Hannu Aaltonen
ヒルダ・フルディーン「考える老人」1900年 フィンランド国立アテネウム美術館 
Finnish National Gallery / Ateneum Art Museum, Antell Collections
Photo: Finnish National Gallery / Hannu Aaltonen

本展はフィンランド国立アテネウム美術館の企画によって欧米3都市で開催された国際巡回展をベースに、日本オリジナルの内容へと再構成したもの。同美術館のコレクションから厳選された絵画、彫刻、素描、版画など約90点の作品を通して、当時の彼女たちが何を目指し、何を求めたのかなどが、観ている者に静かに伝わってくる。

作家ごとの活動がダイジェスト的に紹介されるメインの展示に加え、女性芸術家たちが受けた当時の芸術教育について紹介する、日本オリジナルの展示も。1906年に女性に完全参政権を付与した世界初の国であり、女性たちが経済、政治、文化とさまざまな分野で活躍する男女平等主義の先進国として知られるフィンランド。その風通しのいい社会の源流には、情熱と勇気を持って世界へ飛び出していった彼女たちの活躍もあったはず。

常設展会場の一部を使っての企画展なので、フォルセルスやフルディーンが学んだロダンの作品なども同時に観られるのが嬉しい。暑い夏のひとときに清々しい気分を運んでくれる展覧会、ぜひ足を運んでほしい。


「日本・フィンランド外交関係樹立100周年記念 モダン・ウーマン―フィンランド美術を彩った女性芸術家たち」
会期:〜2019923日(月・祝)
会場:国立西洋美術館 新館展示室 2階(東京都台東区上野公園7-7
時間:9:3017:30 金、土曜 9:3021:00 ※入館は閉館の30分前まで
休館日:月曜、716日(火)※715日(月・祝)、812日(月・休)、 916日(月・祝)、923日(月・祝)は開館
料金:一般 ¥500、大学生 ¥250(高校生以下及び18歳未満、65歳以上は無料 ※入館の際に、学生証または年齢のわかるものを要提示)/毎週金・土曜の17:0021:00、毎月第2・第4土曜日は本展と常設展は観覧無料/「国立⻄洋美術館開館60周年記念 松方コレクション展」923観覧当日に限り、同展観覧券で本展も観覧可/常設展の観覧券で本展も鑑賞可
03-5777-8600(ハローダイヤル)
http://www.nmwa.go.jp/


text : Shiyo Yamashita

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独立前後のフィンランドで活躍した女性芸術の画像_1
ヘレン・シャルフベック「占い師(⻩色いドレスの女性)」1926年 フィンランド国立アテネウム美術館 Finnish National Gallery / Ateneum Art Museum, Kaunisto Collection Photo: Finnish National Gallery / Hannu Aaltonen
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独立前後のフィンランドで活躍した女性芸術の画像_2
マリア・ヴィーク 「ボートをこぐ女性、スケッチ」1892年頃 フィンランド国立アテネウム美術館 Finnish National Gallery / Ateneum Art Museum, Granberg Collection Photo: Finnish National Gallery / Jenni Nurminen
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独立前後のフィンランドで活躍した女性芸術の画像_3
ヒルダ・フルディーン「考える老人」1900年 フィンランド国立アテネウム美術館 Finnish National Gallery / Ateneum Art Museum, Antell Collection Photo: Finnish National Gallery / Hannu Aaltonen
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独立前後のフィンランドで活躍した女性芸術の画像_4
エレン・テスレフ「装飾的風景」1910年 フィンランド国立アテネウム美術館 Finnish National Gallery / Ateneum Art Museum Photo: Finnish National Gallery / Yehia Eweis
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独立前後のフィンランドで活躍した女性芸術の画像_5
シーグリッド・ショーマン「自画像」制作年不詳 フィンランド国立アテネウム美術館 Finnish National Gallery / Ateneum Art Museum Photo: Finnish National Gallery / Hannu Aaltonen
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独立前後のフィンランドで活躍した女性芸術の画像_6
エルガ・セーセマン「自画像」1946年 フィンランド国立アテネウム美術館 Finnish National Gallery / Ateneum Art Museum Photo: Finnish National Gallery / Yehia Eweis
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独立前後のフィンランドで活躍した女性芸術の画像_7
シーグリッド・アフ・フォルセルス「青春」1880年代 フィンランド国立アテネウム美術館 Finnish National Gallery / Ateneum Art Museum Photo: Finnish National Gallery / Hannu Aaltonen