東京・六本木の21_21 DESIGN SIGHTで、情報学研究者のドミニク・チェンを展覧会ディレクターに迎えた「トランスレーションズ展 −『わかりあえなさ』をわかりあおう」がスタート。「翻訳」の射程を押し広げることを試みる本展には、伊藤亜紗、永田康祐、長谷川愛、やんツーなどアーティストや研究者が参加する。会期は2021年3月7日(日)まで。
東京・六本木の21_21 DESIGN SIGHTで、アートやデザインの領域を超えて活躍する情報学研究者のドミニク・チェンを展覧会ディレクターに迎えた「トランスレーションズ展 ―『わかりあえなさ』をわかりあおう」がスタートした。
「翻訳=トランスレーション」という行為は、古くから異文化と接触し理解するための手段として行われ、今なお私たちの日常の中で続けられている。同時に、現代ではテクノロジーによって翻訳機能がめざましく発展し、言語の垣根を超えて「いつ」「どこ」でも相手と繋がることが可能になり、コミュニケーションの形も大きく変化している。
本展では「翻訳=トランスレーション」という行為を、他者同士が意思疎通を図るための「コミュニケーションのデザイン」と見なし、普段から何気なく使っている言葉の不思議さ、そしてそこから生まれる「解釈」や「誤解」の面白さを実感できる空間を創出。お互いの「わかりあえなさ」を受容し合う可能性が提示される。
会場では複数の言語が話される家庭や環境で生成される言語、クレオールを用いる人々が自らの物語を語る様子を収めたペイイン・リンの映像作品や、島影圭佑による視覚障害者のために文字を代わりに読み上げるメガネ、視覚言語としての手話の世界を鑑賞者とともに探る和田夏実+signedの映像作品などを紹介。
さらに、「サメを性的に魅惑する香水」の制作を通して、分子レベルでの異種間コミュニケーションについて考える、長谷川愛によるリサーチプロジェクトや、糠床に棲む無数の微生物たちの発酵具合を音声に翻訳するFerment Media Researchによるロボットまで、ありとあらゆる「翻訳」のあり方を提示する作品を紹介。国内外の研究者やアーティスト、デザイナーによる「多種多様な翻訳の技法のワンダーランド」に身を置くことで、この世界にあるさまざまな事物と心を通わせ、「わかりあえなさ」をわかりあう方法を探ることができそうだ。
現在、21_21 DESIGN SIGHTのウェブサイト内「DOCUMENTS」では、日本語、フランス語、英語を使用し、日本、台湾、ベトナムの血を引くフランス国籍のドミニク・チェンが自身の半生と翻訳について語る特別寄稿「わかりあえなさをつなぐこと」を公開中。また、会期中にはオンライントークイベントも予定されているので、是非こちらもチェックを。
「トランスレーションズ展 −『わかりあえなさ』をわかりあおう」
会期:〜2021年3月7日(日) ※事前予約制
会場:21_21 DESIGN SIGHT ギャラリー1&2(東京都港区赤坂9-7-6 東京ミッドタウン ミッドタウン・ガーデン内)
開館時間:平日 11:00〜18:30(入場は〜18:00)、土曜・日曜・祝日 10:00〜18:30(入場は〜18:00)
休館日:火曜(11月3日、2月23日は開館)、年末年始(12月26日〜1月3日)
入館料:一般 ¥1,200、大学生 ¥800、高校生 ¥500、中学生以下無料
03-3475-2121
http://www.2121designsight.jp/
text : Shiyo Yamashita