モーゼスおばあさん(グランマ・モーゼス)の愛称で親しまれてきたアメリカの国民的画家、アンナ・メアリー・ロバートソン・モーゼスの日本国内では16年ぶりとなる回顧展が、東京・世田谷美術館でスタート。70代で絵を描き始めた頃の作品から100歳で描いた絶筆、愛用品や関連資料まで、約130点を展示。2022年2月27日(日)まで。
アメリカの田舎の一農婦から、70代から絵を描き始め、80歳の時に開いた個展を機に国民的画家へ。グランマ・モーゼスことアンナ・メアリー・ロバートソン・モーゼスの日本国内では16年ぶりとなる回顧展が、東京・世田谷美術館にて、2022年2月27日(日)までの会期で開催されている。
グランマ・モーゼスは1860年ニューヨーク州生まれ。人生の大半を農家の主婦として過ごした彼女は、70代になってリウマチの悪化により得意の刺繍絵が上手くできなくなったことから、針の代わりに絵筆を手に取り、ニュー・イングランドの自然や農村の暮らしを素朴な筆致で描くようになった。彼女の絵は1938年に偶然村を訪れたアマチュア・コレクターのルイス・J・カルドアの目にとまり、彼が作品をまとめて購入してニューヨークの画廊に熱心に売り込んだことから世に出ることに。1940年にはアーティストとしてのモーゼスにとって最大の理解者となるオットー・カリアーが前年に開いたギャラリー・セント・エティエンヌにて初の個展「一農婦の描いたもの」が開催されている。
身近な出来事や自然を温かな視点で描いたモーゼスの作品は、ニューヨークのアート界隈の人だけでなく、一般の人々の心も打ち、彼女は瞬く間に人気作家に。とはいえ、その後も彼女は一主婦としての堅実な暮らしを守り、101歳で亡くなる年までに1,600点以上の作品を手がけている。
生誕160年を機に特別に企画された本展は全4章で構成。第1章「アンナ・メアリー・ロバートソン・モーゼス」では、縁のある場所や人生の転機となった作品、また絵画を始める前から得意とした刺繍絵などにより、彼女の人物像を紹介する。第2章「仕事と幸せと」では、モーゼズが描くキルトや石鹸、ロウソク作り、作物の収穫などの仕事を中心とした、家族や村の人々との素朴な日常の暮らしを紹介。結婚式や引っ越しなど、自身の思い出に基づいた作品もある。
第3章「季節ごとのお祝い」では季節ごとの特別な行事を描いた作品が。2月には楓の木から樹液を採取して煮詰め、メープル・シロップ作りをするシュガリング・オフ、夏にはピクニック、晩夏から初秋にかけてはアップル・バター作り。秋から冬にかけてはハロウィーンやサンクスギビング、クリスマスなどが続く。モーゼスは楽しい記憶と結びついたこれらの行事を丁寧に描き出している。そして第4章「美しき世界」では、モーゼスの絵の最も大切なテーマである自然の美しさを描いた作品を。100歳で描いた絶筆《虹》もここに展示されている。
絵画だけでなく、モーゼスのお気に入りのアクセサリーや手作りのショールや人形など、彼女のプライベートを垣間見ることができる品々も。彼女が表紙を飾った雑誌をはじめとした資料や、彼女が作品制作の際に使っていた作業テーブルなども展示されているのが興味深い。また、それぞれの章ごとに壁面の色を大胆に変えているなど、展示方法にも工夫が凝らされている。俳優・吉岡秀隆による音声ガイドや公式図録にも力が入っているので、こちらもお忘れなく!
生誕160年記念「グランマ・モーゼス展―素敵な100年人生」
会期:~2022年2月27日(日)
会場:世田谷美術館(東京都世田谷区砧公園1-2)
開館時間:10:00〜18:00
休館日:月(ただし2022年1月10日は開館)、年末年始(2021年12月29日~2022年1月3日)、1月11日
050-5541-8600(ハローダイヤル)
https://www.grandma-moses.jp/
text : Shiyo Yamashita
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