現代社会におけるイメージの圧倒的な力とは。アレックス・ダ・コルテの個展、金沢21世紀美術館で開催中

金沢21世紀美術館では2023年9月18日(月・祝)までの期間、ヴェネズエラ系アメリカ人アーティスト、アレックス・ダ・コルテの個展「Alex Da Corte Fresh Hell アレックス・ダ・コルテ 新鮮な地獄」を開催中。大型映像インスタレーション11点などを展示する本展は、ダ・コルテにとってアジアの美術館で初の個展となる。

金沢21世紀美術館では現在、ヴェネズエラ系アメリカ人アーティスト、アレックス・ダ・コルテのアジアの美術館では初となる個展を開催中だ。

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セイント・ヴィンセント名義で活動するミュージシャン、アニー・クラークが出演。アレックス・ダ・コルテ《開かれた窓》2018 © Alex Da Corte studio

ダ・コルテは1980年ニュージャージー州カムデン生まれ。現在はペンシルベニア州フィラデルフィアに在住、世界的に活躍している。2018年のカーネギー・インターナショナルに出展して注目を集めた彼は、翌2019年のヴェネチア・ビエンナーレで世界的に名が知られるように。2021年にはメトロポリタン美術館屋上庭園のコミッションに選出。2022年にはデンマークのルイジアナ近代美術館で個展が開催されるなど、近年世界的に評価が高まっている。スカーレット・ヨハンソンをフィーチャーした「プラダ ガレリア」のキャンペーン「The Glass Age」でコンセプトやアートワークからディレクションまでを手がけていたことも記憶に新しい。

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57のチャプターとプロローグで構成された映像作品を、4台の大型リアプロジェクションで四角の箱に映し出すサイトスペシフィックな展示形式で発表。アレックス・ダ・コルテ《ゴム製鉛筆の悪魔》2019 © Alex Da Corte studio

人気アニメーションのキャラクターや美術史上の人物に自ら扮し、メディアを通して伝えられる「イメージ」とはいったい何なのかを見る者に問いかける作品で知られるダ・コルテ。アメリカ特有のポップな色使いと見覚えのあるキャラクターのイメージで構成されるダ・コルテの映像作品は、一見楽しげでありながら、現実世界における人間の不安や孤独、寂しさを感じさせるのが特徴だ。本展では最近の作品を含めた大型映像インスタレーション11点などを展示。チーフ・キュレーターの黒澤浩美は「圧倒されるような大きな箱型のスクリーンに投影される、様々にサンプリングされたイメージは、実体もなく、コケティッシュでおかしいのですが、深く関わるほど心がかき乱されるような不思議な魅力があります」とコメントしている。

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虹の7色(Red、Orange、Yellow、Green、Blue、Indigo、Violet)の頭文字を順番に並べて一語にしたニーモニック(符号)をタイトルにした作品。アレックス・ダ・コルテ《ROY G BIV(ロイ・ジー・ビヴ)》2022 © Alex Da Corte studio

本展では、フィラデルフィア美術館にあるコンスタンティン・ブランクーシの部屋を模した場所を舞台に、マルセル・デュシャンに扮したダ・コルテが登場する映像作品《ROY G BIV(ロイ・ジー・ビヴ)》も展示。彼はここでデュシャンが演じたローズ・セラビィ、ブランクーシの彫刻《接吻》のクレイアニメへと変化しながら、人間の存在や時間、恋人との愛と別れを演じてみせている。

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クレス・オルデンバーグが1972年に発表した作品に着想を得た作品。ダ・コルテ自身の人生を彩ってきたアイテムを並べている。アレックス・ダ・コルテ《マウス・ミュージアム(ヴァン・ゴッホの耳)》2022 © Alex Da Corte studio

また、この美術館の特徴的な丸い展示室には、インスタレーション作品《マウス・ミュージアム(ヴァン・ゴッホの耳)》が登場。マウス・ミュージアムとはアメリカの彫刻家、クレス・オルデンバーグが自身の作品を展示するためにミッキーマウスをモチーフに制作、1972年のドクメンタ5で発表した作品。ダ・コルテはこの作品に着想を得て、さらにゴッホへのオマージュも加えて、マウスの左耳を切り取った形の本作を制作した。この中に展示されているのは、ダ・コルテが幼い頃から集めていたアニメーションの人形やプラスチックのおもちゃなど、彼の人生の証ともいえる収集品となる。

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ダ・コルテ自身がエミネムに扮した作品。アレックス・ダ・コルテ《THE SUPERMAN》2018 ©︎ Alex Da Corte studio

ダ・コルテ自身がほとんどの登場人物を演じていることや、展示作品の多くが大きなテレビを模した箱に収められたインスタレーションとして展示されているのも見もの。「『新鮮な地獄』とは、視覚情報が押し寄せる中で、現代社会の消費文化を定義するようになった欲望と記憶と知覚の関係にも踏み込み、氾濫するイメージがもたらすものは何か、といった問いにも、私たちを向き合わせています」(黒澤)という本展で、ぜひ現代社会におけるイメージのパワーを再認識してみて。


「Alex Da Corte Fresh Hell アレックス・ダ・コルテ 新鮮な地獄」
会期:〜2023年9月18日(月・祝)
会場:金沢21世紀美術館 展示室7~12、14(石川県金沢市広坂1-2-1)
開館時間:10:00~18:00(金・土曜日は20:00まで)※観覧券販売は閉場の30分前まで
休館日:月曜(ただし7月17日、9月18日は開場)、7月18日
入館料:一般 ¥1,200、大学生 ¥800、小・中・高校生 ¥400、65歳以上 ¥1,000 
電話番号:076-220-2800
https://kanazawa21.jp/

 

 

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