80年経った今、絵画や写真からその時代に向き合う。東京国立近代美術館で「コレクションを中心とした特集 記録をひらく 記憶をつむぐ」開催中

東京国立近代美術館の1F企画展ギャラリーでは現在、「昭和100年」「戦後80年」の節目の年に1930〜70年代の時代と文化を振り返る「コレクションを中心とした特集 記録をひらく 記憶をつむぐ」を開催中。戦争記録画を含むコレクションを中心とした計280点の作品・資料を通じて、新たな戦争の記憶を紡ぎ出す。

東京国立近代美術館の1F企画展ギャラリーでは現在、戦争記録画を含む自館のコレクションを中心に、他機関からの借用を加えた計280点の作品・資料で構成される「コレクションを中心とした特集 記録をひらく 記憶をつむぐ」を開催中だ。

東京国立近代美術館の1F企画展ギャラリーでは現在、「昭和100年」「戦後80年」の節目の年に1930〜70年代の時代と文化を振り返る「コレクションを中心とした特集 記録をひらく 記憶をつむぐ」を開催中。戦争記録画を含むコレクションを中心とした計280点の作品・資料を通じて、新たな戦争の記憶を紡ぎ出す。

東京国立近代美術館の1F企画展ギャラリーでは現在、戦争記録画を含む自館のコレクションを中心に、他機関からの借用を加えた計280点の作品・資料で構成される「コレクションを中心とした特集 記録をひらく 記憶をつむぐ」を開催中だ。

80年経った今、絵画や写真からその時代にの画像_1

「コレクションを中心とした特集 記録をひらく 記憶をつむぐ」展示風景 1章「絵画は何を伝えたか」より 右奥は宮本三郎《本間、ウエンライト会見図》1944年 東京国立近代美術館(無期限貸与) 撮影:木奥惠三

本展は「昭和100年」「戦後80年」の節目の年に、美術を手がかりとして1930〜70年代の時代と文化を振り返ろうというもの。絵画や写真、映画などの視覚的表現が担ってきた「記録」という役割と、それらを事後に見ることで再構成される「記憶」の働きに着目、過去を現在と未来に繋げていく継承の方法を、美術館という「記憶装置」において考察するものとなっている。

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松本竣介《並木道》1943年 東京国立近代美術館

展示は8章で構成。1章「絵画は何を伝えたか」では、1930年代以降、新聞、雑誌という旧来のメディアに加え、ラジオ、映画などの新興メディアが急速に発展・浸透していったメディア環境の中で、絵画が果たした社会的な役割について整理。松本竣介《並木道》、靉光《自画像》という、若くして亡くなった2人の画家の作品も見られる。

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「コレクションを中心とした特集 記録をひらく 記憶をつむぐ」展示風景 2章「アジアへの/からのまなざし」より (手前)鈴木良三《衛生隊の活躍とビルマ人の好意》1944年 東京国立近代美術館(無期限貸与) 撮影:木奥惠三

2章「アジアへの/からのまなざし」では、東北アジアから東南アジアへと日本が圏域を拡大する中で、絵画に描かれたアジアと描かれなかったアジアの両面に注目。梅原龍三郎や猪熊弦一郎、鈴木良三らが現地の自然や風俗・文化などをどう描いたかに注目したい。

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和田三造《興亜曼荼羅》1940年 東京国立近代美術館

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「コレクションを中心とした特集 記録をひらく 記憶をつむぐ」展示風景 3章「戦場のスペクタクル」より (中央)鶴田吾郎《神兵パレンバンに降下す》1942年 東京国立近代美術館(無期限貸与)、(右)田村孝之介《佐野部隊長還らざる大野挺身隊と訣別す》1944年 東京国立近代美術館(無期限貸与) 撮影:木奥惠三

3章「戦場のスペクタクル」では、日中戦争から太平洋戦争にかけて、陸海軍が画家たちに制作依頼した作戦記録画を展示。藤田嗣治や山口蓬春らの作品を通じて、戦況を伝えるために絵画を活用した理由について、戦闘場面のスペクタクル化という観点から考察している。4章「神話の生成」では戦時下の美術が文学や音楽、映画などと連動しながら大衆に深く浸透し、社会を動かした「物語」が生成するプロセスを検証。また5章「日常生活の中の戦争」では、戦時下に制作されたポスターなどを通じて、日常がどのように変化していったかを追体験できる。

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「コレクションを中心とした特集 記録をひらく 記憶をつむぐ」展示風景 6章「身体の記憶」より (左から)全和凰《ある日の夢(銃殺)》1950年 京都市美術館、鶴岡政男《夜の群像》1949年 群馬県立近代美術館、福沢一郎《敗戦群像》1948年 群馬県立近代美術館 撮影:木奥惠三

続く6章「身体の記憶」では、過酷な敗戦体験を経た1950年代に描かれた、傷つき、変形し、断片化された身体像を紹介。丸木位里・俊による《原爆の図》(再制作版)などはここに展示されている。7章「よみがえる過去との対話」では、1960年代後半〜70年代、ベトナム戦争の映像を契機に繰り広げられた、戦争の記憶を掘り起こす活動を紹介。広島平和記念資料館に収蔵された、市民が描いた原爆の絵などを見ることができる。そして8章「記録をひらく」では、戦後米軍に接収され、1970年に無期限貸与という形で日本に返還された戦争記録画が、長いブランクを経て読み替えられていく経緯を検証するとともに、未来に向けた活用の方法を問いかけるものとなっている。

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井上⾧三郎《ヴェトナム》1965年 東京国立近代美術館

戦争体験を持たない世代が大多数となった今、私たちはどのように過去と向き合うことができるかが問われている。美術作品や資料を通じて、新たな戦争の記憶を紡ぐこと。この夏の美術館での体験が、忘れてはならない過去を次世代へと繋ぐための一助となるはずだ。

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撮影:木奥惠三

「コレクションを中心とした特集 記録をひらく 記憶をつむぐ」
会期:〜2025年10月26日(日)
会場:東京国立近代美術館 1F企画展ギャラリー(東京都千代田区北の丸公園3-1)
開館時間:日〜木曜 10:00〜17:00、金・土曜 10:00〜20:00(入館は閉館30分前まで)
休館日:月曜(ただし8月11日、9月15日、10月13日は開館し、翌日休館)
観覧料:一般 ¥1,500、大学生 ¥800 
※高校生以下および18歳未満、障害者手帳持参の人とその付添者1名は無料/学生証等の年齢のわかるもの、障害者手帳等を提示する必要あり
※本展の観覧料で入館当日に限り、所蔵作品展「MOMATコレクション」(4-2F)、コレクションによる小企画「新収蔵&特別公開|コレクションにみる日韓」(2Fギャラリー4)も観覧可能
問い合わせ:050-5541-8600(ハローダイヤル 9:00~20:00)
https://www.momat.go.jp/exhibitions/563