ガーナのスラム街を廃棄物アートで変える。長坂真護による初の美術館での個展が上野の森美術館にて開催中

先進国が投棄した廃棄物でアートを制作、売り上げをガーナのスラム街に還元している唯一無二の美術家、長坂真護による美術館での初個展が、東京・上野の上野の森美術館で開催中。電子機器廃棄物を使った作品や世界平和への願いを込めた作品とともに、長坂の足跡を紹介する、ポジティブかつ示唆に富んだ展覧会だ。

先進国が投棄した廃棄物でアートを制作、その売り上げでガーナのスラム街を救う活動を展開している美術家、長坂真護による美術館での初個展「長坂真護展 Still A “BLACK” STAR Supported by なんぼや」が、現在東京・上野の上野の森美術館にて開催中だ。

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「真実の湖 Ⅱ」2019

長坂は1984年生まれ。自ら経営する会社が倒産したことから2009年に路上で活動する画家となり、NYやパリなど世界16ヵ国を回りながら、独学でアートを学び、水墨画や西洋美術と現代美術を組み合わせた作品を発表するようになる。その後、2016年に雑誌に掲載されていた写真を通じて世界最大級の電子機器廃棄物投棄場として知られるガーナのスラム街・アグボグブロシーの存在を知り、翌年6月に現地を訪れ、先進国が捨てた電子機器を燃やすことで生計を立てる人々と出会う。大量のガスを吸い、癌などの病に蝕まれ、30代でこの世を去る人も多いアグボグブロシー。長坂は、先進国の人々の豊かな生活は彼らの犠牲のもとに成り立っているという事実を、アートの力を使って伝えていくことを決意したという。

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「Ghana's son」2018

彼が提唱するのは「サステナブル・キャピタリズム(持続可能な資本主義)」。作品の売り上げから生まれた資金で、これまでに1,000個以上のガスマスクをガーナに届け、2018年にはスラム街初の学校「MAGO ART AND STUDY」を設立した。また、2019年にはアグボグブロシーにスラム街初の文化施設となる電子廃棄物美術館「MAGO E-Waste Museum」を開館し、それまでの軌跡をエミー賞受賞監督カーン・コンウィザーがドキュメンタリー映画『Still A Black Star』として発表。同作は2021年アメリカのNEWPORT BEACH FILM FESTIVALで「観客賞部門 最優秀環境映画賞」を受賞している。

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「FULL MOON」2021

長坂の当面の目標は、2030年までに資金を集め、現地にリサイクル工場を建設して、新たな産業と雇用を生み出すこと。長期的には廃棄物からアートが作れない状態にまで持っていくことを目指しているという。本展では、そんな彼の足跡を紹介するとともに、ゲーム機のコントローラーやテレビのリモコン、パソコンのマウスやキーボードなど現地の廃棄物をキャンバスに貼り付け、油絵を施した作品や、長坂の地元福井の越前和紙に墨や金銀泥、クリスタルを重ね、世界平和への願いを込めた作品などを紹介している。

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「ミリーちゃん」2021

展示した作品はオンラインで販売し、売り上げと入場料の一部をリサイクル工場建設や開拓農地の取得などの支援に繋げる。私たちが自身の快適な暮らしと不可分な環境問題や格差問題にアートを介して繋がれる、またとない機会だ。


長坂真護展 Still A “BLACK” STAR Supported by なんぼや
会期:〜2022年11月6日(日)
時間:10:00~17:00 ※入館は閉館の30分前まで
050-5541-8600(ハローダイヤル 9:00〜20:00)
https://www.mago-exhibit.jp

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