Web3.0と呼ばれるデジタル次世代について基礎知識をつけた第一回に続き、今回はメタバースについて学習。メタバースはこれからどう発展していく? アバターという第二の自分にどんな物語が起こったら楽しい? ナビゲーターには前回同様「HARTi」の代表取締役社長CEO・吉田勇也さんが登場。巷で話題の「Bondee」をはじめ、イマジネーションがふくらむメタバースが描く未来を楽しく予測!
メタバースってなんですか?〜SNS時代にどう進化する?〜
鈴木えみ(以下・E):メタバースって言葉をよく聞くようになったのは最近ですが、その昔に流行っていた「アメーバピグ」(※1)とか、あれもメタバースと言えるんですか?
吉田勇也(以下・Y):そうですね。メタバースは、「メタ(超越した)」+「ユニバース(世界)」を組み合わせた言葉で、対概念となるのが「リアルバース」。まさに「アメーバピグ」や「あつ森(あつまれ どうぶつの森)」なんかはメタバースで、実際は昔からあったものなんですよね。ただ「アメーバピグ」の時代はコンテンツはあるけれど、当初はPCでしか利用できなかったじゃないですか。
E:むしろスマホすらない時代でしたもんね。
Y:そう、SNSが浸透する前だったんで。それがデバイスの進化や、5G、NFT、そしてWeb3.0に繋がり、メタバースでももっといろんなことができるね、っていう風になったのが現在の状況ですね。そういったブロックチェーンサイドからの発展が期待されているって状況です。
E:ここ最近流行っているアプリ「Bondee」(※2)もそうですよね。私も「Bondee」でアバターを作ってみたんですけど、意外と周りにやっている友達がいなくて。だからどう交流していいかわからない(笑)。
Y:「Bondee」は見た目の可愛さや、自分のアカウントを二次元コードで気軽にシェアできる便利さで、一気に話題になりましたね。
※1 アメーバピグ……2009年に登場した仮想空間アバターコミュニティサービス。PC、フィーチャーフォン、スマートフォンでサービスを提供。現在はスマートフォン版のみ継続。
※2 Bondee……2022年にローンチしたメタバースSNSアプリ。ユーザーの好みに合わせてパーソナライズできるアバターや部屋(マイスペース)を用いて、仮想空間上でコミュニケーションを取ることができるプラットフォーム(2023年3月現在100万ダウンロード突破)。
E:こうやっていろんなアプリが登場するけれど、どれを始めて、どこで交流するか、選択が必要になってくるってことですか?
Y:それはいい質問ですね。そうなんです。メタバースも結局人がいないと、意味がないんですよね。友達がそこにいなかったら、発展しようがない。今、何が起きているかっていうと、土地が有り余ってて、人がいないって状況なんですよ。
E:なるほど〜。
Y:実は僕も「アメーバピグ」世代なので結構やっていたんですけど、えみさんはあれってどれくらいの期間やってました?
E:結構長くやっていた気がします。当時はSNSもなくて、他にやることがなかったから(笑)。モーションや着せ替え、友達とトークできるのが新鮮で。知り合いだけでなく、知らない人にも話しかけたり、ちょっとした“ドキドキ要素”もありました。
Y:ですよね。あの時代ってインターネット上でアバターを操作して交流できるサービスがピグしかなかったから、割とみんな継続してやっていたと思うんですよ。でも今これだけSNSが普及して、みんな忙しいから。メタバースの世界で、今のSNS以上のものが生まれるのかという点が課題なんですよね。
メタバースの世界はどう変わる?〜NFTが仕込まれた未来〜
E:現状、こういったメタバース空間にNFTが仕込んであって、いろんなアイテムを売買できるアプリやコミュニティもあるんですか?
Y:今だと、「ZEPETO」(※3)って知ってます?
E:それ、やってました!
Y:もう過去形になっちゃってますね……(笑)。元祖「Bondee」みたいな感じの「ZEPETO」の進化系で「ZTX」っていうのもあるんですよ。これはまさに「ZEPETO」のWeb3.0版で、アバター同士のアイテムを交換できるってものなんですけど、でもまだマスに広がっている感じではないですよね。ちなみに「ZEPETO」はいつ頃やってたんですか?
E:流行り出した時にすぐにアバターを作ってしばらくやってたんですけど、メニュー数がふくらむ前に止めちゃってるんですよね。これ以上の楽しみ方の展望が見えなくなって(笑)。
Y:やっぱりその難しさはありますよね。今のメタバースのアバターって「Bondee」みたいにレゴブロックのような見た目で、ファジーな感じなものが多いんですけど、それだと現状のSNSを超えられるのかっていう……。
E:そうですよね。私みたいに楽しみ方を見失っちゃう人もいっぱいいる気がします。
Y:となると、今後の発展の可能性としては、“メタバースのリアルが、よりリアル”っていう世界の方があるのかな?と個人的には思っています。「Unreal Engine」(※4)って知ってますか?
E:アンリアレイジ?
Y:とても似てるんですけど、「Unreal Engine」なんです(笑)。CMとか映画とかはこれで作っているものが増えていて、人気ゲームソフト「フォートナイト」もこの技術を使っているんですよ。親会社であるEpic Gamesにソニーが10億ドルの追加出資したことも、昨年話題になりました。
E:えっ、すごくリアルですね。撮影したデータじゃないんだ……。
Y:撮影したのかどうかわからないレベルのものが作れるんですよ。これが「PlayStation 5」とかに導入されて、NFT要素も搭載されたら、メタバースも何か変わっていきそうな気がしますよね。VRなどのXRとかに当てはめて、リアルな没入体験ができるようになると、何かがひっくりかえる予感がするんです。
E:確かに、これはいろんな概念が変わりそうですね。
※3 ZEPETO……独自のファッションやメイクアップを施した3Dアバターを生成でき、仮想空間上で他のユーザーとのコミュニケーションを楽しめるソーシャルアプリ。利用者数は●億人(2023年3月現在)に到達しており、アジア最大の規模を誇るメタバースプラットフォーム。
※4 Unreal Engine……リアルなビジュアルと没入体験を作り出す、世界で最もオープンで高度なリアルタイム 3D 制作プラットフォーム。
メタバースで何がしたい?〜第二の人生を歩んじゃう?〜
Y:例えば「Bondee」にどんな要素があったら、えみさんは継続できます?
E:今、いいこと思いついちゃったんですけど。何があったら続けるかって考えると、勝手にその中でアバターが暮らしていて欲しいっていうか。物語がちょっと進んでいた方がいいと思うんです。で、例えば、リアル生活では出会えなかったけど、めちゃくちゃ理想の彼氏を作れちゃうとか! ちょっとしたクエストがプッシュ通知できたら、すぐ見にいっちゃうかも。
Y: すごい楽しそうですね。今って土地があるのに友達がいないっていう問題もあるから、AIのアイドルがいたらそれは解決しますね。それこそ超リアルなK-Popアイドルもメタバース上でデビューしているし。
E:リアルな友達と逆に繋がりたくないっていう人もいると思うんですよね。メタバース空間で第二、第三の世界や人生を生きるっていう選択もできると、より需要が増える気がします。
Y:確かに。
E:それこそ自分の理想のアイドルを育成して、NFTにできるとか。コンサートとかできて、世界ツアーとかしちゃって。アイドルグループをプロデュースしたい!
Y:確かに二次創作的なものの可能性ってすごくありますよね。実際、この世界の技術者の方々にとって、そういった提案はフレッシュに映ると思いますよ! だからえみさんみたいにアイデア豊富な人が意見して、「メタバースって楽しいよね」って発言していくと、すごく変わると思います。
E:“リア充”がリアル世界と同じように集っているだけだとつまらないと思うんです。どうせやるなら、全く違う趣味になるような要素があるといいですよね。