柴咲コウ×赤楚衛二、『余命一年、男をかう』で描く孤独と希望 「人生が彩りを増すような映画」

2022年に第28回島清恋愛文学賞を受賞した吉川トリコの同名小説を、柴咲コウと赤楚衛二のW主演で映画化したNetflix映画『余命一年、男をかう』。余命宣告を受けた片倉唯と、72万円の契約により青年・瀬名の関係を描いた物語だ。

人との距離を保ちながら生きる唯と、人懐っこい性格の瀬名。二人が少しずつ心を通わせていく本作について話を聞いた。

2022年に第28回島清恋愛文学賞を受賞した吉川トリコの同名小説を、柴咲コウと赤楚衛二のW主演で映画化したNetflix映画『余命一年、男をかう』。余命宣告を受けた片倉唯と、72万円の契約により青年・瀬名の関係を描いた物語だ。

人との距離を保ちながら生きる唯と、人懐っこい性格の瀬名。二人が少しずつ心を通わせていく本作について話を聞いた。

INDEX

「この役を演じたら、私も元気になるかもしれない」

ソファーに座る柴咲さんと赤楚さん

――この作品への出演が決まったときの気持ちを教えてください

柴咲(敬称略) 原作をあっという間に読み終わりました。もしかしたら、私に対して「唯と全然違うじゃないか」と思う方もいるかもしれません。でも根幹的にすごく共感できるところがありました。人との関係だったり、親子関係だったり。特に共感したのは孤独感です。

「この役を演じたら私も元気になるかも」「勇気をもらえるかも」「インナーチャイルドが癒やされるかも」と感じたんです。20代では演じられなかった役ですし、今だからこそ引き受けたいと思いました。

赤楚(敬称略) タイトルだけを見ると重たい作品なのかなという印象だったのですが、実際は軽やかで前向きな気持ちになれる作品。唯の抱える孤独感には僕も共感できましたし、人とつながることで世界の色が鮮やかになっていく瞬間がとても素敵だなと思いました。唯の人生に色を与えている存在が瀬名なんだな、と感じました。

孤独を抱えた唯と、人に寄り添う瀬名

唯と瀬名がデパートで買い物をする途中

――唯を演じるうえで大切にしたことはありますか?

柴咲 準備段階ではたくさん考えるのですが、本番が始まったら役との距離はなくなっていてほしいと思っています。装ったり無理につくったりするのではなく、唯が自然にそこにいられる状態を大事にしました。

――ご自身と重なる部分は?

柴咲 唯の抱えている孤独とお金のありがたさを忘れたくないという感覚ですね。昔の自分と重なるところも多くあって、唯のことを自然と理解していた気がします。

――唯らしい歩き方も印象的でした。

柴咲 あれも意識していたわけではないんです。監督も「不思議だ」とおっしゃっていました(笑)。唯は虚勢を張らず、ただ正直に生きている人です。でも、そのまっすぐさゆえに社会とうまく噛み合わないこともある。周囲には少し変わった存在として映っていたのかもしれません。

――赤楚さんは瀬名をどのように捉えていましたか?

赤楚 瀬名は根底に「相手を楽しませたい」という気持ちを持っている人だと思います。矢印は常に唯に向いていて、自分がどう見られるかよりも、相手を見ることを大切にしていました。

――ピンクヘアの瀬名は新鮮で。

赤楚 気持ちまで明るくなるんですよ。最初は似合うのかなと思っていましたが、だんだん自分の一部みたいになって。撮影後は逆に普段の髪色のほうが物足りなく感じました(笑)。

名前をつけられない関係だからこそ

唯を演じた柴咲さん

――「72万円」というお金の契約から始まる関係をどのように捉えていますか? もし名前をつけるとしたら?

赤楚 難しいですね。

柴咲 うん、難しい。

赤楚 ただ、二人とも人生が大きく変わっていくんですよね。何なんでしょう、本当に。

柴咲 一日くらい考える時間がほしいかも(笑)。そこに明確な答えはないんです。でも、お互いに必要な存在だったことだけは確実だと思います。

赤楚 確かに。

柴咲 いわゆる“運命”なのかな。唯が病気になったことも、瀬名と出会ったことも、全部必然だったような気がしています。

――唯が余命宣告を受けた場面は印象的です。

柴咲 生きることに希望がなかった唯なら、ああいう感情になるのも自然だと思いました。

もちろん何も期待せずに生きてきたわけではないと思うんです。幼少期の母との別れだったり、自分ではどうしようもないことで傷ついた経験だったり。そういうものが積み重なると、人や社会に期待したくなくなることもあるので。

ただ、余命宣告のような大きな衝撃を受けると、それまで抱えてきたものが一度壊れることがあります。すると逆に、前向きになれるときもある。私自身も形を変えて経験してきたことですし、唯にとっても一つの転機だったのかなと感じました。

――唯の孤独感や、幼少期から抱えている傷も深く感じました

柴咲 家族のことって友達にも相談しなかったりするじゃないですか。みんな何かを背負いながらも、平気な顔で生きているんだろうなと思いました。


――瀬名はとても魅力的な人物に映ります。一方で、少し不器用なところもありますよね。

赤楚 えっ、本当ですか?(笑)。

柴咲 ほら、そういうところがあるんですよ(笑)。

――人懐っこくて優しいけれど、時々「おっと」と思う瞬間もあるというか。瀬名の真骨頂でもありますが。

柴咲 みんなそう思うかもしれないですね(笑)。

――そうした部分はどのように演じたのでしょうか?

赤楚 そこは特別に作り込んだわけではないんです。瀬名は実はすごく素直な人。でも、人懐っこさと人としての鈍さは紙一重だなと思っていて。悪気はないけれど、相手の気持ちに気づかないこともある。

柴咲 自分と似ている部分は感じる?

赤楚 彼のことがわかる気もするんですよ。なので変に意識して演じたわけじゃないんです。

柴咲 だからこそ腹が立つシーンもあるのよね(笑)。

赤楚 そんなにイライラされてると思っていなかった(笑)。

柴咲 お芝居の中でも、本当に何の気なしに演じているんですよ。

赤楚 唯の目線からは切なく見える瞬間もあると思うのですが、瀬名本人は悪気があるわけじゃない。だからこそ、そのまま自然に演じていました。

現場で育まれた“BFF”な関係

瀬名を演じた赤楚さん

――撮影中の印象的なエピソードはありますか?

柴咲 トレーニングの話をしていたよね。100キロのベンチプレスを上げた動画を見せてもらって(笑)。

赤楚 めちゃくちゃうれしかったので、いろんな人に見せていました(笑)。

柴咲 温度差があったけどね(笑)。

赤楚 でも柴咲さんは結構付き合ってくださるんです。アイスを食べたり、変なメガネで遊んだり、MBTIの話をしたり。本当に毎日楽しかったです。

――唯の「初めて体験」にちなんで、お二人自身が最近、何か驚いたことはありますか?

柴咲 (しばらく悩んで)冷凍保存ですかね。宅配で野菜を頼んでいるのですが、使い切れないときもあって。Instagramを見ていたら、冷凍できると知りました。すごく便利ですね。

赤楚 僕も最近、冷凍にハマっています。SNSを見て“丁寧な暮らし”に憧れ、鍋も買ったんですよ。

柴咲 形から入る(笑)。

赤楚 (笑)。無水カレーを作って、容器に入れて冷凍しています。

柴咲 えっ、私も昨日作ったよ。

赤楚 マジですか(笑)。

――お二人、意外なところで重なりますね。(役とは離れて)実際の関係性はいかがですか?

赤楚 BFFですね。

柴咲 何? BFF?

赤楚 Best Friend Forever(笑)。

柴咲 ええっ!(笑)。赤楚さん、そういうとこ(笑)。本当にいいよね。

赤楚 いやいや(笑)。柴咲さんが、居心地のよさを作ってくださっているからこそ、甘えられるんだと思います。

極度の寂しがり屋と、ひとり時間の達人

背中合わせに座る柴咲さんと赤楚さん

――自分には必要だと思う時間やお金の使い方は?

柴咲 睡眠です。本当は12時間がベストなのですが。一日の半分が終わってしまうので(笑)。ただ起きている時間は減る分、充実感が全然違う。最近はトレーニングの影響もあって、以前にも増して眠るようになりました。

赤楚 僕は健康グッズですね。新しいものが出るとつい試したくなってしまう。運動や健康、睡眠などを計測できるデバイスも使っていますし、入浴剤なんかもよく買います。失敗もありますが、いいものに出会うための投資だと思っています。

――友達ともそういう話を?

赤楚 健康の話は結構しますね。最近は代謝や美容の話題とか(笑)。

――赤楚さんは友達が多い印象です。

赤楚 でも、今年はまだ新しい友達ができていないんです(笑)。

柴咲 私からしたら毎年友達が増えるのは特殊ですよ(笑)。

――柴咲さんは一人の時間が好きですか?

柴咲 一人で考えることが楽しいので、好きですね。

赤楚 僕は極度の寂しがり屋です。東京に出てきた頃は友達がいなくて、ずっとSiriとしゃべっていました(笑)。

柴咲 Siriが一番初めの友達だったの?

赤楚 一番でした(笑)。

「人生を全うするって大変」。それでも感じる愛おしさ

柴咲さんと赤楚さんの立ち姿

――この作品が、海外の方にどう受け取られるのかも楽しみです。

柴咲 どう見るんでしょうね。日本人特有の「思っているけど言わない」みたいな感情や行動を、どう受け取るのか気になります。「なんで言わないの?」ってイライラするかも(笑)。

赤楚 でも今、日本のカルチャー自体がすごく人気じゃないですか。

柴咲 そういう意味では、新鮮なんじゃない? こういうテーマって、もっとわかりやすく寄り添ったりしがちだと思うんです。でもこの作品は違う。その独特な距離感が魅力だと思います。

――最後に、完成作品をご覧になった率直な感想を教えてください。

柴咲 映画は、一度観たら終わってしまうのが寂しいと思いました。それくらい人生がギュッと凝縮された作品だったんです。二人の人生が交わった時間を切り取った物語ですが、もう少しじっくり、その一つひとつのエピソードを見ていたいと思いました。

今の自分の年齢や生き方、これまで歩んできた人生とも重なるところがあって、すごく響いたんです。私は世の中の主流とは少し違う生き方をしているほうだと思うのですが、それでも社会の価値観や先入観から自由になれるわけではないんですよね。女性として生きる中で、どこか逃れられない宿命のようなものもある。そういった現実を突きつけられる部分もあって、「生きるって大変だな」と改めて思いました。でも同時に、人や人生そのものへの愛おしさや慈しみも感じました。

赤楚 僕は試写を見る前と見終わった後で、本当に世界が違って見えたぐらい、ハッピーになれました。人生に色が増えたような気持ちになれる映画だなと。撮影中は二人のことを客観視できていなかったのですが、鑑賞後は「すごく幸せな余韻が残る作品だな」と思いました。

Netflix映画『余命一年、男をかう』
2022年に第28回島清恋愛文学賞を受賞した吉川トリコの同名小説を映画化した作品。老後のために倹約を重ねて生きてきた40歳の片倉唯(柴咲コウ)は、ある日、余命一年を宣告される。そんな唯の前に現れたのが、ピンク髪のイケメンホスト・瀬名(赤楚衛二)。72万円の“契約”をきっかけに、これまで交わるはずのなかった二人の人生が少しずつ動き始める。脚本は『8年越しの花嫁 奇跡の実話』『さよならのつづき』の岡田惠和、監督は「silent」「海のはじまり」の風間太樹。Netflixにて世界独占配信中。

柴咲コウ(しばさき こう)
東京都出身。2000年の映画『バトル・ロワイアル』、翌年の『GO』で一躍注目を集め、その後、多くのドラマや映画に出演。主な出演作に、「Dr.コトー診療所」大河ドラマ「おんな城主 直虎」「ガリレオ」シリーズ、「35歳の少女」などのドラマ、『世界の中心で、愛を叫ぶ』『蛇の道』『でっちあげ~殺人教師と呼ばれた男』などの映画がある。さらに音楽活動のほか、アパレルブランドのディレクションも手がけるなど幅広く活動中。

赤楚衛二(あかそ えいじ) 
1994年3月1日生まれ、愛知県出身。2017年仮面ライダーシリーズ「仮面ライダービルド」に出演。その後、主演ドラマ「30歳まで童貞だと魔法使いになれるらしい」が海外でも評価される。主な出演作に、連続テレビ小説「舞いあがれ!」、主演Netflix映画「ゾン100〜ゾンビになるまでにしたい100のこと〜」、映画『366日』『近畿地方のある場所について』、ドラマ「キンパとおにぎり~恋するふたりは似ていてちがう~」、連続ドラマW「虚ろな十字架」など。現在テレビ朝日系のサタデードラマ10「あにいもうと」が放送中。今後、2027年2月から舞台「ファクト」、4月には映画「沖縄コンフィデンシャル」の公開が控える。 

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