現在、歌舞伎座で行われている高麗屋三代の襲名披露興行。松本幸四郎が二代目白鸚に、市川染五郎が十代目松本幸四郎に、松本金太郎が八代目市川染五郎に。親子孫3代そろっての襲名は38年ぶりの慶事とあって、連日、大勢の観客でにぎわっている。
来月2月も続く、このおめでたい襲名披露興行「二月大歌舞伎」にて、前衛芸術家の草間彌生の絵画をモチーフにした「祝幕(いわいまく)」が作られることが発表された(提供は、一般人の中野道代氏)。「祝幕」とは、特別な興業の際に贔屓筋や後援会などから贈られる幕のこと。このたびの祝幕は、昨年制作された3枚の絵画を1枚の幕にデザインしたもので、草間彌生らしいカラフルで生命力に満ちたアートが、三人の新しい門出を彩る。
使用される絵画は、かねてから草間彌生のファンだったという松本幸四郎が、昨年6月アトリエに出向き、自ら選んだと言う。
「草間先生に『今までの作品の中からどれでもいいから選んでください』と言われて、そのときの新作3点を選びました。もちろん代表的な作品のドットやカボチャも好きですが、これを見たとき、新しいといいますか、先生はまだまだ進化していると感じました」
「じつは草間先生と初めてお会いしたのは、15年ほど前で、そのときにおっしゃっていたことが今でも印象的に残っています。『肉体は有限だけれど、作った作品は永遠になる。そのためには、いかに自分の思いがつまった作品を作るかが大事で、だから人生は闘いなんだ』と。今回、久しぶりにお会いして、変わらずに闘っているお姿を目にしましたので、であるならば、新しい作品にしたいと思いました」
「祝幕で地色が黒というのも他にないと思う」というように、インパクトは十分。つねに新しいことにチャレンジしつづけてきた高麗屋にピッタリだ。
「草間先生の作品は、色が豊かで深くて、そして洗練された美しさがある。歌舞伎の美と共通するところがあります。『一緒に新しいことをやりましょう』という言葉をかけていただいて、来月の舞台へのエネルギーになりました」
「二月大歌舞伎」では、昼の部「一條大蔵譚」で一條大蔵卿を、夜の部「熊谷陣屋」で熊谷次郎直実をつとめる幸四郎。
「1度にこの2つを演じるなんて無謀だとわかっていますが、一生に1度のスケールの大きい興行なので、のちのち『あの襲名興行は大変だったね』と思えるような”たいへん”な思いをしたいです」
エネルギッシュな襲名舞台と、それに華を添える美しい祝幕。ぜひ劇場に足を運んで、美の共演を目に刻もう。
text:Hiromi Sato
歌舞伎座百三十年
松本幸四郎改め 二代目 松本白 鸚
市川染五郎改め 十代目 松本幸四郎 襲名披露
松本金太郎改め 八代目 市川染五郎
「二月大歌舞伎」
【日 程】平成30年2月1日(木)~25日(日)
【場 所】歌舞伎座
【時 間】昼の部:午前11時~ 夜の部:午後4時30分~
[貸切] 12日(月)夜の部 ※幕見席は営業