伝統芸能、文楽界のホープ竹本織太夫と、文楽を愛する日本文学者ロバート キャンベル。芸を受け継ぐことの意味と、文楽の今を大いに語り合う
「文楽」をご存じだろうか。人形浄瑠璃とも呼ばれ、成立は江戸初期にさかのぼる伝統芸能だ。いわゆる人形劇だが、そう聞いて興味の外と片づけてはいけない。江戸時代には庶民の人気を歌舞伎と二分し、メディアミックスよろしく双方のヒット演目を競って取り入れ発展した。現代の歌舞伎やドラマでもおなじみの「忠臣蔵」をはじめ、日本の演劇史に残る多くの作品が、人形浄瑠璃をオリジナルとしているのだ。
文楽の特徴は、ストーリーや台詞を語る“太夫”、心理や情景を音で表現する“三味線”、一体を3人で遣う“人形”の、3つのパートが一体となって演じる形式。華やかな人形に目を奪われがちだが、真の主役といえるのは実は太夫だ。太夫は、複数の登場人物の台詞からナレーションまで、すべてを一人で語り分け、その声で観客を物語世界へと誘うのだ。

今年1月、その太夫のひとり、豊竹咲甫太夫(とよたけさきほだゆう)が名を改め、六代目竹本織太夫(おりたゆう)を襲名した。織太夫は、江戸時代から続く由緒ある大名跡、竹本綱太夫の前名(前段階の名前)にあたり、それを継承することは、文楽の世界で中心的役割を担っていくことを意味する。この襲名を記念して、新・織太夫と、二十年来彼に注目してきたという日本文学者ロバート キャンベルとの、初顔合わせとなる対談が実現した。キャンベルが日本文学の専門家として、また文楽の一ファンとして、襲名とそれを取り巻く事象について織太夫に迫り、ふたりの対話から文楽の魅力と、知られざる側面が垣間見えてくる。(インタビューを読む)
SOURCE:「In the Name of Bunraku」By T JAPAN New York Times Style Magazine
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