── 個展「この星の光の地図を写す」の東京での開催にあわせて刊行される3冊について、それぞれの見どころを教えてください。
石川さん(以下敬称略):『この星の光の地図を写す』は、展覧会のカタログ的な意味もある大冊の写真集になります。 2016年12月に水戸芸術館ではじまり全国を巡回してきた展示ですが、ようやく今まとまりました。20年間の旅の軌跡を振り返る写真集なので、ぜひ手に取ってほしいです。武田砂鉄さんや藤田貴大さん(マームとジプシー)、黒河内真衣子さん(Mame Kurogouchiデザイナー)、も寄稿してくれていて、読み物としても面白いです。
『THE HIMALAYAS』はこれまでのヒマラヤ遠征の記録をまとめた総集編的な本。これだけ細かくそれぞれの遠征についてまとめた本は今までありませんでした。海外からの反響が特に大きいですね。全編英語ですが、日本語訳の冊子もついています。カバーはポスターにもなる仕様にしていて、永久保存版です。
そして写真集『Ama Dablam』は、今まで5冊連続で刊行してきたヒマラヤシリーズの最新作で6冊目の写真集になります。2013年と2018年の2回にわたって登ったアマダブラム遠征で撮影した写真をまとめました。カトマンズから山の頂きまで、遠征を追体験できます。ヒマラヤで最も美しいと言われる山をあらゆる角度から見てください。
── なぜ同日に3冊も刊行されたのですか?
石川:初台の展覧会のオープニングに合わせられたら、最高だなあと思って。
── 昨年登頂されたアマダブラム(ヒマラヤ山脈にある標高6,856mの山)は、「女神の首飾り」という意味があると聞きました。名前だけ聞くと美しく優雅な山の印象を受けますが、実際に登頂されてどうでしたか?
石川:山のシルエット通り、急峻でテクニックを要する山でした。難しかったけど、登れてよかったです。
── 登頂時に印象的だったエピソードはありますか?
石川:下山時、ノドが乾きすぎて、最後は「コーラ、フルーツ、コーラ、フルーツ……」と呟きながら下っていました。ベースキャンプで飲んだコーラが最高でしたね。
── 今後もSLANTからのシリーズに新刊が加わる予定はありますか?
石川:ヒマラヤの山に登頂するたびに増えていくと思います。アマダブラムに関してはSLANTと一緒に新作動画も作りまして、初台のオープニング前後に見せられる予定です。
── 『THE HIMALAYAS』は過去に出されていたものの再編集版ということですが、どのような視点で再編集をしたのですか? またなぜこのタイミングで再編集版を出されることにしたのでしょうか?
石川:前号はとても人気があってすぐに品切れになってしまったからです。前号は、2015年のK2(*注:カラコルム山脈にある山。エベレストに次いで世界第2位の高さを誇る)の遠征までをまとめたものでしたが、その後のカンチェンジュンガ(*注:エベレスト、K2に次いで世界第3位、標高8,586mの山)への下見や2018年のアマダブラム遠征の章を増やしており、今回は本当に読みごたえがあるものになっています。
2016年から全国巡回していた大規模個展も東京でフィナーレ
── 個展『この星の光の地図を写す』は、2016年の水戸芸術館に始まって新潟、千葉、北九州など2年かけて各都市を巡回してきました。都市ごとに展示内容を少しずつ変えているそうなのですが、東京ならではのコンテンツはありますか?
石川:東京ではかなり大きな作品が数点増えたり、ポリネシアの島々を撮影したシリーズも作品が増えています。ザ・ノース・フェイスのテント内で映像を見る場所も設置したりして、より身体で体感できるような展示になっています。
── ご自身の出身地でもある東京・初台で大規模個展のフィナーレを迎えるということに思い入れはありますか?
石川:すべてを出し切ったと思うので、ぜひ観に来てほしいです。
原動力は世界を身体で知りたいという思い
── なぜ世界中を旅することに惹きつけられ、さらにはずっと続けられているんでしょうか?
石川:好奇心が強いんでしょうかね。世界を身体で知りたいという思いが強いんです。
── 石川さんのように世界中を移動することで世界を見つめる人もいれば、ほとんど一生を同じ場所で同じ風景を見つめながら同じ日常を過ごす人もいます。それぞれの視点にはどのような違いがあるんでしょうか?
石川:違いはないですね。そこで気持ちを揺さぶられる何かに出会えるかどうかが大切です。読書体験などは日常において、旅と同じような出会いを得られると思います。
── 盛りだくさんな内容で幕を開けた2019年ですが、今年の目標は何ですか?
石川:悔いなく生きることですかね。