映画監督の安藤桃子と女優・安藤サクラ。映画の世界に生まれ落ちたふたりは、それぞれの道を見つけ、輝き、母ともなった。人生のひとつの節目に立つ姉妹を、篠山紀信が激写
「なぜか、いつも人生の節目といえるタイミングで篠山さんに撮影していただいているんです」。そう語るのは、映画監督の安藤桃子と女優・安藤サクラの姉妹。ふたりは今、どんなターニングポイントに立っているのか? 近未来の展望は? それぞれの現在について聞いた。
―― 篠山さんがおふたりを撮るのは三度目ですね。
安藤桃子(以下M) 自分たちの波がぐっと変わってゆくときに、必ず写真を撮っていただくご縁に恵まれています。最初は七五三で、次は姉妹が映画界に出たタイミングでした。
―― 桃子さんにとって、サクラさんはどういう存在ですか?
M 幼い頃から姉の私が観察人で、サクラが被写体という感じです。子どもを産んで、自分が異常な母性の持ち主であることに気づきましたが、子育てしていても、この感じすでに知ってる!と思うことが多くて。そうした母性をサクラに対して抱いていたんですよね。親が子どもの写真をたくさん撮るように、サクラの瞬間、すべてを撮りたいとひたすらカメラのシャッターを押していました
―― 2014年に、映画『0.5ミリ』のロケ地でもある高知に移住されました。昨年、現地で立ち上げた「桃子塾」について教えていただけますか?
M 今、37歳なのですが、ちょっとずつ渡せるものができてきました。老若男女みんなで膝を突き合わせて、子どもたちの未来に向かって、一緒に種をまいてゆきたい。そのためにはまず子どもたちがどんな感性をもっているのかを知らないといけないなと思い、話し合うことから始めました。
―― 子どもたちと対話することで発見は?
M 子どもたちからは真理と哲学ばかりが出てきます。彼らには未来のビジョンがインプットされていて、それを形にするカギをもっている。一年間語り合った結果、やっぱり映画を撮ることにしました。映画の現場は、社会の縮図なんです。主役も脇役も必要で、裏方の人たちも各自の持ち場で光っている。子どもたちを見ていても、前に出ることで輝く子もいればそうでない子もいます。でも輝きの光量は一緒なんですよね。
―― 高知でイベントを企画されているとか?
M 『~未来の子供たちへ~カーニバル 00 in 高知(仮)』という文化フェスを秋に行う予定です。農業、食育から映画、音楽までさまざまな分野の文化人、専門家を招き、課題解決に向け未来をイマジンするフェス。問題や課題というとネガティブに思えますが、理想や夢と置き換え、子どもたちの未来のために想像する。クリエイティブに課題を解決する新しいスタイルを、高知ならではのやり方で生み出せればと思います。
― 桃子さんの行動力に脱帽します。
M アイデアは出し惜しみしてはいけないと思うんです。使うとアイデアの神様はまた降りてくる。移住して5年になりますが、このイベントは高知への愛の集大成です。高知は「全部ハートにあるよ」ということを教えてくれました。幸せはここ(ハート)にあるのであって、数字では測れない。(続きを読む)
SOURCE:「The Resonance of Two」By T JAPAN New York Times Style Magazine:JAPAN BY JUN ISHIDA, PHOTOGRAPHS BY KISHIN SHINOYAMA, STYLED BY NAOKO SHIINA, HAIR & MAKEUP BY KANAKO HOSHINO MAY 31, 2019
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