環境問題に意識の高い世界中の人々の間で、憧れの地とされる中米のコスタリカ。エコツーリズム先進国で、自然のパワーを存分に体験できる2軒のおすすめホテルを紹介
エコツーリズム先進国と呼ばれる中米のコスタリカ。その理由のひとつに、国土の総面積の約4分の1が、国立公園や自然保護区であることがあげられる。太平洋とカリブ海に面して海岸線が伸び、熱帯雨林、そして霧のかかる森、熱帯雲霧林へと、さまざまな様相の森が広がる。だが、それらは、必ずしも、人の手の入らない原生林ばかりではない。バナナやコーヒーのプランテーション、牧場などに開拓されることで、森が破壊された過去もあった。そこにエコツーリズムが芽生えたきっかけは、1950年代、朝鮮戦争の兵役を拒否したアメリカのクエーカー教徒たちが移住してきたことだ。彼らは牧場を営みながら、森を保護することに目覚めてゆく。
コスタリカは「美しい沿岸」という意味。中でもオサ半島には豊かな風景が広がっている
同じ頃、コスタリカの生物多様性が海外の研究者たちに注目され始める。今では世界各地で見られるアクティビティ、ジップラインも、実はコスタリカの森で、植物学者が樹冠を観察するために発明したものだ。こうして、自然と共生する観光のかたち、エコツーリズムがコスタリカに根づいていった。日本では知名度が低いが、欧米の、特に環境先進国とされる国や地域、たとえばアメリカであればサンフランシスコ周辺のベイエリアやポートランドあたりで「コスタリカに行ってきた」と言えば、羨望のまなざしが注がれる。憧れの桃源郷と言っていい。
星の数ほどのエコツーリズムの楽しめる宿泊施設、いわゆるエコロッジがあって迷ってしまうのだが、そのなかから、おすすめの2軒を紹介したい。いずれも、ナショナル・ジオグラフィックが、世界中から得がたい体験ができるところを厳選した「ユニーク・ロッジズ・オブ・ザ・ワールド」のメンバーである。
まずは「FINCA ROSA BLANCA(フィンカ・ロサ・ブランカ)」。首都サンホセの郊外に立地し、国際空港にも近い。周辺はエレンディアという標高1200mの高原地帯で、コーヒーの産地として有名なのだが、ここは、敷地内にオーガニック・コーヒー・プランテーションを持つホテルである。農園を見学、焙煎などの製造過程を学び、テイスティング体験のできるコーヒーツアーは約2時間半、1人30USドル。10月から1月の時期には、収穫体験もできる。
「フィンカ・ロサ・ブランカ」のロッジの客室棟。アーティスト・オーナーならではのユニークな建築が緑に映える
部屋はそれぞれに個性的な壁画や家具で彩られている
FINCA ROSA BLANCA(フィンカ・ロサ・ブランカ)
公式サイト
宿泊客であれば、無料で参加できるサステナビリティツアーも面白い。ゴミのリサイクル、給湯用のソーラーパネル、オーガニック菜園などを見学する、いわばバックヤードツアー。取材でこうした施設を見せてもらうことはあるが、宿泊客向けというのは珍しい。ホテル側もゲスト側も意識の高いコスタリカらしい。プールも塩素の臭いがしないと思ったら、銅と銀のイオン化により水を消毒しているのだとか。サステナビリティリゾートとしての先進さに驚かされた。
創業者はシルビア・ジャンポールというアメリカ人女性。1980年代、彼女の個人別荘として建てられ、87年にホテルとして開業した。現在のオーナーは彼女の息子で、アーティストのグレンだ。
オーナーがアーティストと聞いて、独特の建築スタイルとアートに彩られたインテリアに納得する。モダンな抽象絵画はオーナーのグレン、素朴なタッチの細密画はコスタリカ人のアーティストの作品だそう。客室は、それぞれ内装が異なり、個性豊か。私たちが泊まったのは、4つあるマスタースイートのひとつ、スペイン語で「空」を意味する「El Ciero」。周囲を森の緑に囲まれた、気持ちのいい部屋だった。
リゾート敷地内をエコツアーで巡る。レストラン提供のグリーン・リーフも無農薬オーガニック栽培
新鮮なオーガニック野菜を中心にしたメニューは目にも身体にも優しい
フランスのコルドン・ブルーで学んだシェフの手による食事も美味しい。彩りも豊かな創作コスタリカ料理。夜になると、眼下には、首都サンホセの夜景が広がる。(続きを読む)
SOURCE:「Eco Trip to Costa Rica」By T JAPAN New York Times Style Magazine:JAPAN BY YUMI YAMAGUCHI, PHOTOGRAPHS BY YUKO IIDA AUGUST 15, 2019
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