さまざまな分野で活躍する“おやじ”たち。彼らがひと息つき、渋い顔を思わずほころばせる……そんな「おやつ」とはどんなもの? 偏愛する“ごほうびおやつ”と“ふだんのおやつ”からうかがい知る、男たちのおやつ事情と知られざるB面とは。連載第14回は音楽家の蓮沼執太さん
ライブやコンサートに限らず、CM、美術館やギャラリー、映画や舞台で……私たちは、蓮沼執太さんが手がけた音楽をあちこちで耳にする。独特の浮遊感とやわらかな多幸感で包む込み、つい下を向きがちな目線をふっと上げてくれる音楽を構築するその人は、音楽を生業にするミュージシャンからも一目置かれる存在だ。
ソロからデュオ、はたまた15人のメンバーで構成するアンサンブル“蓮沼執太フィル”まで、多角的なアプローチで音楽を表現する蓮沼さん。2015年にアーティストを支援し、文化交流を目指すアジアン・カルチュアル・カウンシル(ACC)のグラントでニューヨークに滞在。その後、アメリカと日本を行ったり来たりの生活を送っている。
「ずっと東京で生活してきて、東京とは違う場所で生活してみたいと思うようになりました。日々の生活がダイレクトに作品に影響するので、音楽ができあがるまでのプロセスもすごく大事。場所や環境が違えば、時間の流れも違ってきます。時間の流れが違うということは、音楽はある時間の中での芸術を作っていることだから、生まれるものが変わってくるのかな、と」。
ニューヨークでは、ブルックリンの歴史保護地区内にあるアパートを借り、ひたすら部屋にこもって作品を制作する。「僕の場合は、歌詞を書いて曲を作り、編曲して、アレンジやプロデュースも行います。アイデアや発想を音楽化・作品化していくタイプの作家なので、常にスタジオに引きこもらないと作品ができなくて(笑)」。滞在中は日々のルーティンがあるそうで、「朝は7時か8時に起きて、自分で作った野菜やたんぱく質多めの朝食を摂り、メールをチェックしたら、あとは夜まで音楽制作」。途中ランチをはさんで約2時間後。集中力を途切れさせないようにしたり、ふと集中力が切れたときに口にする“ちょうどいいおやつ”が、ヨーグルトだと言う。
「ヨーグルトは冷蔵庫に必ずあって。甘く濃厚なギリシャタイプよりも、無糖のプレーンヨーグルト派。本当は飲むタイプのヨーグルトが好きだけど、甘みが強いものが多いので、これをよく振ってゴクッと。特にほぼ毎日通っている近所のスーパーマーケット『トレーダー・ジョーズ』で売っている緑色のパッケージのものは、食べるというよりも飲み心地がよくて、好きですね」。(続きを読む)
SOURCE:「Mr. Sweet Tooth ― Vol.14 SHUTA HASUNUMA」By T JAPAN New York Times Style Magazine:JAPAN BY YUKINO HIROSAWA, PHOTOGRAPHS BY TAKASHI EHARA DECEMBER 23, 2019
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