映画『ゾッキ』で長年の盟友同士が初タッグ。山田孝之と松田龍平が語る映画製作の魅力とは?

『超能力研究部の3人』や『音楽』」などの原作で知られる漫画家・大橋裕之の初期短編集を実写映画化した『ゾッキ』。共同監督を務めるのは、今回初の監督に臨んだ山田孝之、もうすでに監督として活躍している齊藤工、そしてベテラン監督の域に達している竹中直人。3人の俳優が1つの映画を共同で監督するという発想が新しく面白い。その作品で、山田孝之監督パートに出演を果たした松田龍平。37歳の同じ年、10代の頃からの付き合いという2人の関係性、映画への思いに迫る。

スタッフ、キャストが魅了された『ゾッキ』ワールド

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―─監督を務めることになった山田さんが、松田さんにオファーされたんですよね。

山田さん(以下敬称略) そうです。原作を読んだとき、僕のパートでこの人に演じてほしいと希望したみなさん、オファーを受けてくださったんですけど、その中でも自転車で旅に出る藤村という役は、絶対龍平くんに演じてもらいたいと思って、かなり早い段階からオファーさせてもらいました。でも、最初、龍平くんは乗り気ではなかったです(笑)。一緒に共演がしたい、芝居がしたいんだよ、って言われたんですけど、今回はこういう形で一緒にやろうよって話をしました。

松田さん(以下敬称略) 僕らはやっぱり役者だからね。山田くんがプロデューサーとか、いろいろなことをやっているのは知っていたけど、一緒に仕事をするなら、やっぱり役者として共演したいな、という気持ちがあったから。この作品に限らず、ほかの作品でも呼んでくれたりして、嬉しかったんですけど、なかなかタイミングが合わなくて。今回、話を聞く中で、山田くんが監督をやるということで、それは面白そうだなって思って。関わり方としていいんじゃないかなって。それに原作がとても面白くて、ファンになってしまいました。すごく淡々としながらも、最後の旅行のシーンとかは想像するとぐっとくるものがあってよかったです。

山田 そう、原作の大橋さんの世界観は、日常が愛おしくなるエピソードがたくさんあって、最高なんですよね。みんなそこに惚れて集まったわけで。今回、その大橋さんが育った愛知県の蒲郡で撮ったんですけど、どこの街を切り取ったとしても、この映画で描かれるように、普通にこれぐらいいろんなことが起こってるんです。ちょっと半歩引いて、普段と違うものの見方ができる映画だと思います。

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―─出演が決まって、どんなことを2人で話しましたか?

山田 クランクインの直前、蒲郡の隣の豊田市で合流してホテルに着くまでの間に、1時間ぐらいあったと思うんですけど、龍平くんが演じる藤村ってこういう人だと思うんだよねっていう話をしました。もうそのときからすごく嬉しくて、僕のテンションが高かったですね。龍平くんとは衣装合わせでも会ってますけど、現場では工くんのパートや竹中さんのパートの撮影が始まっていて、僕のパートは最後だったんです。監督として現場を見たり、プロデューサーとして現場を手伝ったりしている中で、ついに自分のパートの撮影が始まるぞ、そして龍平くんがきたーーー!って(笑)。

松田 (笑)。山田くんは熱いな、と改めて思いましたね。そのとき自分の持っている藤村を語ってくれたので、僕のイメージに組み込みながら、役作りしました。はじめに藤村はなぜ旅をするのか。彼が旅をする理由は演じる上で一番重要なのかもしれないなって思って。そこがわかれば、旅の道中での藤村の印象がまた変わってくるのかなって。山田くんは、映画を作るにあたって、原作にない部分もたくさん想像して、脚本を作っていたとこがあったし、僕はそういう部分を擦り合わせながら演じていきました。

松田龍平が目の前で芝居している。それがただただ嬉しかった

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―─山田さんが現場で感じた、俳優・松田龍平の魅力とは?

山田 僕は松田龍平のファンなんです。同じ年で10代から知っていますが、ずっと共演したくてたまらない憧れの存在です。でも、なぜかずっと共演がなくて。今回は思い描いていた形とは違いますが、やっと一緒にお仕事ができて、目の前で松田龍平が芝居をしていて、僕がその芝居を一番最初に見れているんです。それがもう嬉しくて。ずっと見ていたいんだけど、基本一発OKという感じでした(笑)。最高に芝居がいいから、とにかく嬉しくて、ずっとニヤニヤしていました。

松田 本当?(笑)。

山田 いやいや(笑)。現場で芝居見せてもらって、やっぱりいいなってずっと思っていたから。「やっぱいい」、「やっぱいい」ってずっと言ってました。

松田 芝居を見た時に、「あれ?」って思うから、「やっぱ」って言葉がつくんじゃない?(笑)

山田 違うから。過去に何度も「いいな」って思っている中で、実際に見て「やっぱりいいな」ってことだから(笑)。

松田 (笑)そうか。ごめんごめん。


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―─(笑)。松田さんから見て、監督としての山田さんはいかがでしたか?

松田 山田くんは撮影中ずっとモニターを見ながらニヤニヤしていたなって印象が強いですね……(笑)。なんだかすごく心強かったです。あと、8時間睡眠も死守してくれましたし。

山田 『デイアンドナイト』という作品で初めてプロデュースしたときに、それは守っていかないといけないと思ったんです。スタッフもキャストも年齢も全て関係なく、眠れなかったらつらいじゃないですか。そういう最低ラインはみんなでやっていかないといけないと思って。

松田 ゆったりとやらせてもらえて、ありがたかったな。

山田 でも時間ができたらできたで、みんな遊んじゃうんだけど(笑)。それがメンタルの部分のケアになって、良かったなって思いました。寝るとフィジカルのケアができるし、どっちも大事かなって。適度に飲んで、適度に寝てもらう。それが一番いいのかなって今回思いました。だから、クランクアップの日までスタッフみんな元気でしたね。龍平くんたちキャストのみなさんとは、クランクアップした最後の日に。
(※コロナ対策自粛要請期間外)

松田 この夜は面白かったよね。もう監督じゃなくて、山田孝之になってたよね。

山田 嬉しいのと、安堵感が一気にきて、ものすごかったね(笑)。


変わらない共演への思い 叶うならラブストーリーで!?

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―─本作の舞台裏を追ったドキュメンタリー『裏ゾッキ』も公開されます。

山田 長期間で大勢の人が関わっていて、今回の蒲郡のように地方に行って撮影したりして、映画の現場はちょっとしたアクシデントから、ヘビーなトラブルまでつきものなんです。「全てうまくいきましたよ」っていう方が綺麗だから、普段はそういうところを見せなかったりもするんですけど、そういったものもひっくるめて、街全体が一緒になって作り上げたこと、いろんなことがあったけど、みんなで何とか作り上げたことを見せたいと思いました。全部見せて美談で済まさないというのも大事なことなんじゃないかなと思って、ドキュメンタリーを作りました。

松田 そんなこともやっていたんだね。

山田 (3月の取材時)まだ撮っていて、完成してないんだよ。メイキングとはまた違う感じで、竹中さんや工くんが行くより前に、最初のロケハンのところから撮って、現場自体もおさえつつ、現場をやっているときに、町の役場の人たちがどんな話をしているかとか、どんな問題が起こっているのかとか撮影してたんだよね。

松田 なんでドキュメンタリーを作ろうって思ったの?

山田 30歳から35歳までドキュメンタリーをやっていたとき、初プロデュースした『デイアンドナイト』という作品も同様に追っていて。そのドキュメンタリーを渋谷の映画館で公開したところ、観てくださった方々が『デイアンドナイト』を観たいと言ってくださったし、逆に『デイアンドナイト』を観てくださった方がドキュメンタリーも観たいと言ってくれて相乗効果があったので、今回もやってみたいと思ったんだよね。

松田 なるほどね。さすがです(笑)。

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―─おふたりは20年ほどのお付き合いになると思いますが、出会ったときのエピソードを教えてください。

山田 共通の友人がいて、僕の家に遊びに来たんです。

松田 その友達に「面白いやつがいるんだ」って言われてついて行ったんですけど、どこに連れて行かれるかわからなくて。そしたら山田くんの家で。

山田 僕は「龍平連れて行くよ」って聞いていました。

松田 あの時の山田くんの印象は、全然目を合わせない人だなって(笑)。

山田 そのとき母と2人暮らしで、部屋狭かったのに、そこにいきなり松田龍平ですからね(笑)。

松田 あと、部屋に等身大のグラビアアイドルのポスターが貼ってありました。

山田 なんで嘘つくの(笑)。

松田 嘘ついてないよ(笑)。山田くんが目を合わさないのと、ポスターの印象しかない。まさかその後20年も付き合いが続いて、映画で一緒に仕事するとは、だよね。

山田 あとは、共演を叶えたいね。

松田 誰か呼んでくれないかな。

山田 なかったら、みんなで企画しちゃえばいいんじゃない?
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―─これから共演するとしたら、どんな作品がいいですか?

山田 今日ラブストーリーがいいね、って話してました。以前小栗旬くんとも、同世代がみんな30代半ばを迎えて、ラブストーリーとかやったら受けるんじゃないって話をしたことがあります。

松田 訳ありラブストーリーね。

山田 訳あった方がいい?

松田 そんなピュアな気持ちになれないよ。

山田 ピュアにやろうよ。

松田 逆に怖いんじゃない?(笑)

山田 携帯電話は登場せず、雨の中ずっと走ってる感じで。携帯があったら一瞬で解決するのに、っていう。それが無理なら、刑事ものかな。

松田 いきなり保守的だね(笑)。
山田 手堅いほうが実現するかなと思って(笑)。

4月2日(金)より、全国公開!

https://zokki.jp/

監督:竹中直人、山田孝之、齊藤工
原作者:大橋裕之

photography:Koomi kim interview&text:Miku Sugishima

<Takayuki Yamada> hair&make_up:TOH(ROOSTER) Styling:KURUMI(ROOSTER)
<Ryuhei Matsuda> hair&make_up:Motoko Suga Styling:TAKAFUMI KAWASAKI (MILD)

<Takayuki Yamada>ジャケット¥39,600、シャツ¥37,400、パンツ¥31,900/Vivienne Westwood MAN(ヴィヴィアン・ウエストウッド インフォメーション03-5791-0058)
<Ryuhei Matsuda>ジャケット¥85,800・イージースラックス¥59,400/アンダーカバー(アンダーカバー) その他スタイリスト私物