スクリーンやTV画面の中の彼女は、会うたびに別人だ。そこに映るのは、過不足なく、彼女が演じる役柄だけだから。では、池脇千鶴という女性はいったい何者なのか? めったにメディアに登場しない彼女の素顔をスナップした!
へこたれても立ち上がれるたくましさを持っていたい
台本を読んで、気に入った作品でないと出演しないという心構えは、昔から変わっていない。
「私、台本を読むときが一番楽しいんです。うれしいんですよ。本当に面白い台本は、ぐいぐい読み進められるし、人物描写の軸がぶれないんですね。『あれ? この子って、こんなこと言う人間だっけ?』みたいになると、物語がぼやけて違和感が出てくる。そういうところをよく考えて判断します。でも、そのせいで仕事がだんだん少なくなって……。たまに仕事をすると、みなさん、びっくりするんですよ。『池脇千鶴って、まだいたんだ!?』みたいな。自分でも『ツチノコ俳優なんで、たまにしか出てきません、すみません』なんて言ってます(笑)」
目指しているのは、「安心して見てもらえる俳優」。
「物語にちゃんと溶け込んでいて、『実際にいてもおかしくないよね』って思ってもらえる。そんな俳優になりたいとずっと思っています」
生粋の役者のオフについて尋ねると。
「以前はヨガにも行ってたんですけれど、コロナ禍になってからは、まったく外にも出なくなって、ソファと体がひっついちゃうんじゃないかっていうくらい、ずっとソファにいますね。お酒が好きなので、飲みながら、お笑い番組を見たり、グルメ番組を見たり、マンガを読んだりしています」
飾らない人柄どおり、プライベートも力の抜けたスタイル。ちなみに好きなマンガは、ラズウェル細木の『酒のほそ道』。「コンビニコミックでハマりました。私のマネージャーがすごく顔が広いので、『酒のほそ道』全巻くれる人、いないですかねぇ』ってつぶやいたら、本当にくれる人を見つけてくれて、『やった!』って(笑)。40巻以上あるので、毎日ちびちび読んでます」
同居人は14歳になる黒猫。甘えん坊の彼に寄り添いながら、無理せず、のんびりマイペースで。「女優」という仕事が「ハレ」だとすると、池脇千鶴は確実に「ケ」を生きている。今後、彼女はどこに向かっていくのだろう。
「このまま普通に年を重ねていって、ときどきツチノコのように顔を出す感じだと思います。結婚にも興味がないんですよね。面倒臭いし、別れるとき大変だし(笑)、まだ夫婦別姓制度も決まってないし。なので、恋人さえいれば幸せです。ただ、仕事は私にとっての支えなので、ずっと続けていきたい。そしてたくましくあればいいかなと思います。へこたれてもいいけれど、ちゃんと立ち上がって、また歩き出せればいいかなって。そういう人間の力というのは、持っていたいなと思います」
Profile
いけわき ちづる●1981年生まれ、大阪府出身。1997年、「ASAYAN」の「第2回CM美少女オーディション」で、「第8代リハウスガール」に選ばれてデビュー。2001年、NHK連続テレビ小説「ほんまもん」のヒロイン役に。代表作に映画『ジョゼと虎と魚たち』『そこのみにて光輝く』『半世界』など多数。数多くの映画賞を受賞する実力派俳優。
SOURCE:SPUR 2021年7月号「その女、池脇千鶴」
photography: Toshio Ohno〈L MANAGEMENT〉 styling: Shihomi Seki hair & make-up: Noriyoshi Yamada interview & text: Hiromi Sato



