保護犬施設について考える【黒島結菜のHAPPY EVERY BUDDY!】Vol.3

俳優の黒島結菜さんが「すべての動物が幸せに暮らせる社会を考える」本連載。今回は、愛犬シャディを実際に迎えた動物保護団体「沖縄ハッピーテイルズ」を訪問。犬たちが譲渡される前に人の家に慣れる目的で暮らす「保護犬シェアハウス」を見学し、動物愛護の新たな可能性を探った。

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犬も人も幸せな、小さな保護団体が増えてほしい

沖縄ハッピーテイルズの代表・しえさんは、2017年に一頭の犬を保護したのをきっかけに活動をスタート。保護犬に対する活動を学ぶために大きな団体に所属して経験を積み、自分の理想の活動を実現するために独立した。SNSの発信を担当するのは、保護犬シェアハウスを運営する娘のなゆたさん。今は親子二人と、一緒に暮らすシェアメイトやボランティアメンバーとともに活動している。

黒島(以下、K) SNSを通じて見える様子がとにかくハッピーで、活動なさっているお二人の顔も明るく犬たちものびのびしていて。そこで、(コハダの)次は沖縄ハッピーテイルズから保護犬を引き取りたいと思っていたんです。

――黒島さんは、愛犬シャディを迎えたときのことをこう振り返る。シャディは昨年、この施設から黒島さんの家にやってきた。

しえ(以下、S) 保護活動は大変な面もあるし、つらい現実から目を背けられないこともあるけれど、犬たちと暮らす日々は本当に楽しくてハッピーな時間。それを伝えたいと思っていたので、そう言っていただけてうれしいです。私が保護活動を始めたのは、近所の外飼いの犬が愛護センターに連れて行かれてしまったのがきっかけ。“犬は外”という考え方が未だ沖縄の風土に根づいているのが原因で、残念ながらそれだと彼らを家族として見ていないということですよね。犬を飼うなら自分たちと同じように居心地のいい家の中で、それに基本医療も必要です。

 おうちシェルターには、わんちゃんが自由にくつろげるソファがあったり、テラスがあって、一般的な保護施設のイメージとはまったく異なる環境ですよね。

 大きくて立派な施設がないと愛護活動ができないわけじゃない。人間と犬の距離が近く、清潔で安心できる場所で救われる一頭の命が、その後に続く命を救うと信じているんです。

 昔から犬を飼うなら保護犬を、と思って多くの愛護団体を調べてきましたが、方針はさまざま。活動方針や発信している内容もまったく違いますよね。沖縄ハッピーテイルズが発信している内容にとても共感できたし、実際にシャディを迎えるまでもとてもスムースでした。

 大きな施設での保護を経験して、たくさんの頭数を助けられる一方で、そこでは幸せを見届けるには限界もあると感じたんです。だから自分で確実に責任を持てる範囲の頭数を救い出し、小さな施設で犬たちが幸せな生活を送れるようお譲りしたいと考えました。人間と過ごす密度が濃くなると、犬たちの表情が変わるのも早くなりますし、個々の性格を見極めてよりよいマッチングができるようにもなりました。

犬たちがのびのびとリラックスして過ごす「おうちシェルター」は、その名のとおり保護した犬たちが譲渡される前に暮らす家。なゆたさんのほか、シェアメイトたちが共同生活を送っている。いわゆるシェルターともまた違う、マンションの一角の居心地のいい部屋だ。黒島さんが訪問したタイミングでは、新たな飼い主を待つ犬4頭、豚1匹がここで暮らしていた。「ここのおかげで、シャディもわが家に慣れるのは早かったです」と黒島さん

 保護団体によって譲渡条件が違いますが、厳しくて断念する人もいると聞き、難しい問題だなと思いました。沖縄ハッピーテイルズはどういう基準で条件を設定しているのですか。

 うちは3つの条件を掲げています。1つ目は室内飼い、2つ目は終生飼育、3つ目は基本医療をきちんと施すこと。ごくごく当たり前のこの条件をクリアできれば、あとは家族構成や留守番の時間を知るための生活リズム、先住ペットがほかにいるかどうかなどをお尋ねしています。また、里親になる理由も大切です。そうそう、黒島さんがすごく熱心に答えて送ってくださった書類も残っていますよ。

 なんだか恥ずかしい…(笑)。一律の条件ではなく、人を見るということですか。

 そう、その人自身を知るためにインタビューをして、ご本人の性格や環境とマッチする犬がいればご提案します。譲って終わりじゃない、譲ったあとの日々が大切だからこそ、円滑にコミュニケーションがとれるお相手かどうかをよく見るようにしています。

 条件が厳しくなってしまうのは、お約束しても守ってくれない方もいるからですね。たとえば、ご夫婦やカップルには「お別れしたら、どちらが引き取ってくれますか」と踏み込んだことも、うちではお尋ねします。終生飼うことの意味を細かく確認しますし、抱え込んで手放す前に、困ったら私たちに相談してもらえる、長い信頼関係を築けることも大切と考えています。

――長年の活動から編み出された、今の沖縄ハッピーテイルズのルール。その一つひとつはすべて、動物たちの幸せを軸に考えられている。保護活動を続ける上で、しえさんとなゆたさん自身がやりがいや喜びを感じるのはどんなときなのか訪ねてみると、「まさに今、こういう瞬間です!」とのお返事。

 こうしてうちから保護犬を引き取ってくださった方が、犬と幸せな暮らしを送っているのがわかったときですね。卒業した犬のもらい手さんのコミュニティもあり様子がわかるようになっていますし、支援もしてもらって、温かい輪がつながっているのを感じます。

 シャディを迎えられて、コハダと私の日々はさらに楽しくなりました。これから先に介護なども待ち構えているけれど、きちんと向き合って最後まで犬たちの幸せを一番に考えていきたい。これから愛護団体への支援などにも目を向けていきたいし、すべての犬にそんな居場所を見つけてほしいです。

教えてくれたのは

沖縄ハッピーテイルズ
しえさん(左)、なゆたさん(右)

2018年発足。尻尾のついている生き物が幸せに暮らせる世界を目指す保護団体。沖縄県にシェルターと保護犬シェアハウスを持ち、「一度に保護する頭数は少なく、期間を短く」をコンセプトに保護活動を展開している。
Instagram: @okinawahappytails

今月の Happy moments with BUDDIES

写真を撮ることを趣味とする黒島さんご自身が撮影。「朝の"おはよう"のあいさつ。コハダはシャディのことが大好きなんです」。互いの存在を大切にする2匹の仲睦まじい姿に心癒やされる。

YUINA KUROSHIMA

1997年3月15日沖縄県生まれ。映画『カツベン!』で第43回日本アカデミー賞新人俳優賞を受賞。2022年度前期連続テレビ小説「ちむどんどん」(NHK)にて、ヒロインを演じている。映画『鋼の錬金術師 完結編 最後の錬成』が公開中。

SOURCE:SPUR 2022年8月号「黒島結菜のHAPPY EVERY BUDDY!」
photography: Anna Miyoshi 〈TRON〉 styling: Ayano Nakai hair & make-up: Akemi Ezashi 〈mod’s hair〉  text: Rio Hirai 〈FIUME Inc.〉

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