山下智久が語るHuluオリジナル『神の雫/Drops of God』。伝説のワインコミックを日仏米共同で実写ドラマ化

近年、海外へ活躍の場を広げる山下智久さん。国際的な作品としては初主演となる日仏米共同製作のHuluオリジナル『神の雫/Drops of God』が9月15日より独占配信スタートする。

ワインブームに火を付けた大人気漫画『神の雫』(作・亜樹直 画・オキモト・シュウ/講談社)。世界5か国で翻訳版が発売され、ワインの伝統産地、フランスでも高い評価を受けた作品を国際連続ドラマとして実写化したのがHuluオリジナル『神の雫/Drops of God』だ。山下さんが演じるのは、主人公の聡明なワイン評論家・遠峰一青。原作漫画のメインキャラクター、神咲雫という男性を、フランス人女性・カミーユに置き換えるという大胆な挑戦も話題を呼んでいる。フランス、イタリア、日本など世界各国で、約10カ月の長期間をかけて撮影された大作。撮影の様子や役作り、作品の見どころについて山下さんに話を聞いた。

原作にリスペクトを持ちながら、まったく新しい作品を作る

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――あらゆる意味で話題を呼ぶこと必至の大作、オファーを受けたときの感想は?

原作が非常に有名で、熱狂的なファンも多い作品なので、お話を頂いたときはもちろんプレッシャーを感じました。でも、小説や漫画の実写化については常に、原作にリスペクトを持ちながら、新しいものを生み出す気持ちで取り組んでいて、その気持ちはこの作品についても変わりませんでした。むしろいろんな意味で大きな作品に関われる期待のほうが大きかったです。

――おっしゃる通り、神咲雫役が女性に置き換えられた、ある意味で新しい作品です。

そうですね。もちろん原作も読んでいましたけれど、雫とカミーユの「置き換え」に限らず、まったく別の作品という認識で挑みました。偉大な原作のDNAは受け継いだ、新しいストーリー。漫画の原作者である亜樹先生ともお目にかかったのですが、先生方もこのキャラクター設定を面白がっていらして「好きにやって下さい」とおっしゃって頂いた。だから自信をもって脚本の方に忠実に、自由に感じたままに演じることができました。

――脚本を読んで、遠峰一青はどのような人物だと思われましたか。ご自身との共通点は?

一青は、常に自分の心に耳を傾けて、自分のやりたいことを突き詰める人だと思います。家族やキャリアについて、いろんな葛藤を抱えながら、最終的には自分の内なる声に忠実に、信じた道を選ぶことができる、尊敬できる人物です。何かにハマると一直線、周囲が見えなくなるほど入り込む情熱がある一方で、感情をあまり表に出さない、心に壁を作りがちなところは、少し自分と似ているかなと思いました。僕も心を開くまでに時間がかかるタイプなので(笑)。

価値観をアップデートしてくれた、多国籍キャスト・スタッフとの仕事

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 ――カミーユを演じたフランス人俳優、フルール・ジェフリエさんについては、どんな印象を抱かれましたか。 

仕事仲間としては、とてもよく周りを見て、キャストからスタッフまで一人一人が心地よく仕事ができるよう、気配りをする人だと感じました。作中では緊張感ある関係を演じる間柄でしたが、舞台裏では、和やかに楽しくやっていました。スタッフも交えて、よく食事にも行きましたし。フランスにまた一人、よい友人ができたなと嬉しく思っています。

――多国籍な撮影現場で、コミュニケーションで気を遣った部分はありますか。

やはり食事ですね。食卓を囲んで会話をすれば、打ち解け、お互いへの理解が深まる。僕は撮影現場でキャストやスタッフとの食事の機会を設けるのが、わりと好きなんです。どんな店や料理なら、みんな喜んでくれるだろう、と考え、店を選ぶのも大好き。タイでの撮影があったときは、タイ在住の友人に話を聞いて入念にリサーチし、店を選んだほどです。

――国際的な作品ならではのやりがいや、難しさは感じましたか。

違う国、異なる文化の中で育った人が集まって、一つの作品をよくしようと団結する現場は、すごくエキサイティングです。英語のセリフを覚えるのは、日本語に比べると多少時間はかかりますが、役に向き合い、気持ちを作っていく作業は、どの言語でもどんな作品でも変わりません。この作品ではむしろ、海外のキャストやスタッフとの仕事を通じて、自分の考え、価値観が日々アップデートされていく感覚にわくわくしました。この作品を通じ、いろんなことを吸収し、視野が広がり、役者としても成長させてもらったと思っています。

役作りは体作りから。飢餓感が研ぎ澄ます感覚を頼りに

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――国をまたいでの、長期間にわたる撮影というハードな現場を乗り切る上で、コンディション作りにおいて気を遣われた部分はありますか。

実は撮影期間中、厳しいダイエットを続けていました。ギリギリまで落とした体重をキープしていると、常に食べ物やワインのことしか考えられなくなり、香りや味わいの感じ方が普段、満たされているときと全然違うんです。ワインの味や香り、料理とのマリアージュにもすごく敏感になった。カミーユは嗅覚、味覚について天才的な能力を持つ人ですが、一方で一青は、ものごとを突き詰めていく努力の人。やり過ぎちゃうくらい突き詰める一青を演じる上で、監督と話し合って決めたことです。とてもしんどかったけれど、ストイックな一青の気持ちを疑似体験しながら、身体感覚をもって、長い撮影期間中、一青であり続けることができたと思います。

――ワイン評論家というのも、難しい役どころだったと思います。テイスティングの美しい所作などはどのように訓練されましたか。

プロのソムリエの方が指導役で現場に入って下さいました。基本は教えて頂きましたが、「ルールに縛られ過ぎず、自由に表現していい」とおっしゃって下さったので、そのシーンごとの一青の気持ちや、場の雰囲気に合わせて、自分の表現をするよう心掛けました。撮影にも、実際のワインが贅沢に使われ、グラスから立ち上る香りや味わいが、表現の助けになったことも大いにあります。ソムリエの先生だけでなく、アクティングコーチとも、事前にシーンを解析し、準備をしっかりしてから撮影に臨むことができたので、撮影自体はとてもスムーズでした。

――移動を繰り返しながらの撮影現場で、一番印象に残っている場所はどこですか。

すべてですね。東京、タイ、フランスすべて、それぞれのシーンへの思い入れとともに、等しく印象に残っています。その中でもやっぱり、フランスの広大なぶどう畑の息を飲むような美しさと、そこでの撮影は特に忘れがたく心に残っています。一人で畑を歩くシーンを撮影したときは、役なのか自分なのかが一瞬、わからなくなったほど。カメラの存在さえ忘れて、無心でシーンに溶け込めたような気がします。自然の、大地の力のおかげかもしれませんね。

ワインを通じ、家族愛や人と人との絆を描いた作品

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――作中に登場する女性たちも印象的です。カミーユ、母親、恋人と、しっかりとした意志を持った、強い女性が多いですが、山下さんはそのような女性をどう思われますか。

普段の仕事の現場でも、作中の女性たちと同じようにしっかりと意志を持った逞しい女性たちとたくさんお会いしますし、常に敬意を抱いています。プロとして仕事をする人間にとって、仕事場はある意味戦場なので、男女の別はないですね。女性も男性も、自分の目標をもって突き進んでいくことが、その人の人生を豊かにするように思います。時代もどんどん進化しているので、お互いの立場を尊重し、意見を交換し合い、リスペクトし合うべきなんじゃないかなと。女性たちと演じる場面が多かった本作も、そういう意味でとてもやりやすかったです。

――ワインの物語であると同時にさまざまな家族の形、愛や絆、許しがテーマになっている作品です。山下さんご自身の家族観について教えてください。

家族は、とても大事な、かけがえのない存在です。ただ、同時に家族のように大切な仲間もいる。家族というのは、良くも悪くも無条件に絆が深い他者ですが、友人でも心から信頼し合って、時に家族以上の絆が生まれることもある。比べるものではないですし、僕にとっては、どちらの存在もとても大事。それから家族の形だって一つじゃないですよね。増えたり減ったり、変化したりしていくものだと思います。血のつながりだけがすべてではない。作品で描かれているのも、大きな意味での家族愛なのではないでしょうか。

――2023年3月、フランス・リールで開催された「Series Mania2023」に登壇されました。作品に対する期待、一部を見た観客やファンの反応など、現場で感じられたことはありますか。

非常に好感触でしたね。作品を楽しんで下さった様子が伝わってきましたし、会場でもとても温かく迎え入れて頂き、嬉しかったですね。長い製作期間中ずっと、僕らキャスト、スタッフ全員で、費やせる時間とエネルギーのすべてをこの作品に賭け、チーム一丸となって、取り組んで来た、その日々が報われた思いでした。幸いなことに、本作以外でも、僕はいつも意欲あるいいチームに恵まれるのですが、今回は、撮影現場のほど近くに住むフランス人スタッフも、皆と同じホテルに泊まって寝食を共にしていた。結果、現場の結束力はとても強いものになった。そんな環境を含めたいろんなものが、作品を作り上げてくれたのだと思います。

ワインは人なり。人生観と生活を変えたワインの奥深さ

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――本作の出演を通じ、レストランやワインの楽しみ方は変わりましたか?

それはもう、完全に世界が変わりましたね。フランスでの撮影期間中は、フランス在住歴が長く、ボルドー大学の醸造科まで卒業しているワイン通の友人を頼りに、いろんなレストランへ食事に行きまくりました。この店ならこのワインを飲んだほうがいい、あの店ならスペシャリテの料理をどこ産のワインとぜひ、と事細かに指導を受けて(笑)。楽しかったですね。ワインも、この作品に出演する前までは機会があれば飲む程度でしたが、役作りを通して、本当にいろいろ飲んだし、めちゃくちゃお金もかけました。やっぱり、ピンもキリも知っておきたいなと。ありがたいことに友人にワイン好きがいたので、ワイン仲間を紹介してもらったり、いいワインを一緒に飲ませてもらったりと、本当に得るものが大きかった。

――やはり、類まれな高級ワインの味わいは、素晴らしいものでしょうか。

そうですね。一口目から圧倒的においしいですし、とても品質が高く、“高級”といわれるのも納得だなあ、と思わせる説得力がある。同時に、ぶどうからワインになるまでずっと愛されて造られたワインなんだなということが伝わってくる。そんな風に味わうようになると、たとえ値段が安くても、愛情たっぷりのワインもあるな、と気づくことがあり、その経験も楽しかった。産地のそばで味わうワインの味も格別でした。気温や気圧の変化、振動などいろんなことが関係するという話ですが、何より、土地のパワーをより味わえる気がしましたね。

――試写を観ての率直な感想、山下さんが考える本作の見どころをお聞かせください。

撮影期間中から感じていたことですが、完成作を観て、ワインも人間も自然の一部なのだなと改めて強く感じました。ワインは、ぶどうが育つ自然環境、醸造、熟成、そこに関わる人……と、いくつもの要素が複雑に絡み合ってできているお酒です。人間も同じで、誰に育てられ、どんな環境で成長するかはとても重要。ワインと人は似ているな、とつくづく思う。ワインを通じて、人間について学んでいく、壮大でドラマチックな作品になったと自負しています。


9月15日よりHuluにて独占配信開始