今面白い古典作品の読み方。【橋本和明】【山崎ナオコーラ】【児玉雨子】が解説!

古典は、授業や受験で必要だったからしぶしぶ読んでいたという人も多いのでは。歴史は繰り返すからこそ、過去にさかのぼってその魅力を味わい、新たな面白さに気づいたり今を生きる一助とすることもできる。推しの作品と魅力を、古典の読み手3人に聞いてみた

 

「古典の世界は、バラエティ番組と似ています」/橋本和明さん

橋本和明プロフィール画像
演出家・ディレクター橋本和明

1978年大分県生まれ。東京大学教育学部卒業、大学院では上野千鶴子ゼミへ。日本テレビでは「有吉の壁」「有吉ゼミ」などバラエティ番組の企画・監修を担当。現在も業務を継続しつつ「WOKASHI」を設立、Netflixなど多くのプラットフォームで活躍。高校の教員免許も持つ。

小学生時代、ある番組をきっかけに『徒然草』や『枕草子』『源氏物語』などの古典を原文で読み、宿題そっちのけで訳すように。

「著者の視点から人間の本質を知り、人間観察することの面白さを味わいました。その流れで大学時代は社会学の研究者を志していたつもりが、うっかりテレビの世界へ(苦笑)」

橋本さんの仕事には古典に加え、大学時代にハマった落語やコントなど、あらゆるエンタメが混じり合って生かされている。

「自分なりに血肉化し、妄想しながらテレビ番組や配信作品、TikTokなどさまざまなコンテンツを作っています。気軽に見られるそれらと、千年近く朽ちることなく読み継がれている古典は、類似する点も多い。知っておくと面白い〝気づき〟があるかもしれません」

「菊花の約」
「菊花の約」は、義兄弟の契りを交わした男二人の再会の話。弟分は貧しいながらも酒と肴を用意して待つが、到着した兄貴分は実は自害していて、魂だけがやってくる

展開が速くてオチまで完璧。怪談の世界へようこそ

古典とは時代を超えて価値があり、規範となるもの。高尚な印象があるが、ノックしやすいジャンルはあるのだろうか?

「初心者や久しぶりに古典を読む人におすすめなのが、怪談。怖いだけでなく、展開がドラスティックで、オチまでちゃんとある。テンポが速いので、ノリが今っぽいです」

怪談といえば、お岩さんが主人公の「四谷怪談」は、歌舞伎の演目でもおなじみ。

「実は、名作が多いんですよ。特に面白いのは、江戸時代後期に書かれた『雨月物語』。艶っぽいストーリー、ハラハラするような男女の恋愛譚、男同士の友情と、設定がバラエティ豊か。恐ろしさや不思議な描写の中に、悲哀や嫉妬を含めた人間の本質が、繊細かつしっかり描かれています」

全9編だから、ショートショート(超短編小説)感覚で気楽に読めるところも魅力。

「たとえば『蛇性の婬』は、豊雄というちょっとダメな男が主人公。絶世の美女を見初め、夢と現実で関係を持ち、契りを交わしたものの、美女の正体はなんと大蛇。距離を置いて新しい妻を迎えたけれど……。嫉妬を含む色っぽい恋慕の話でありながら、一方で豊雄の男としての成長を描いた物語でもあります」

あらすじを聞くだけでも展開が気になる。

「『吉備津の釜』は、浮気性の夫・正太郎と、妻・磯良の物語。正太郎は遊女と駆け落ちし、磯良はショックで命を落とす。その恨みから怨霊と化して遊女を呪い殺したため、一人残された正太郎はお寺にこもって除霊を受けるが……。その先は原文だと『いかになりつるやと あるひはしみ 或は恐る恐る ともし火をげてここかしこをるに 明けたるのに しき血ぎれて地につたふ』。声に出して読みたいほど美しく、リズミカル。端的に情景を伝えつつ、イメージを喚起する単語もぎゅっと詰まっている。怪談は、想像力を養う力を与えてくれると思います」

「吉備津の釜」
「吉備津の釜」のワンシーン。陰陽師から「体にお札を貼って42日閉じこもれば前妻の悪霊を祓える」と言われた正太郎。実践するも、友人が正太郎のもとを訪ねると叫び声が。しかし本人はどこにもおらず、髪の毛だけがぶらさがっていた……

『徒然草』は生きづらい時代に寄り添う、令和の人生指南書

「世の中を斜めに見る視点や人とは異なる価値観でそそられるのが、随筆と呼ばれるエッセイ。たとえば、鋭い観察眼を持つ、清少納言による『枕草子』。"すさまじきもの"や"あさましきもの"は、非常に美しい描写ではあるけれど、つぶやきシローのあるあるネタと同じくらい世の中を斜めに見ている」

生きづらい世の中にぴったりの一冊が、"つれづれなるままに"から始まる『徒然草』。誕生したのは約700年前、鎌倉幕府から室町幕府への転換期、激動の時代だ。

「和歌の実力者として豊かな教養と鋭い感性を備えていた吉田兼好(兼好法師)は、王朝文化への想いを抱きつつも、その対極といえる庶民の、地に足の着いた暮らしにも興味津々。20代後半で出家してからは、よく歩き、見聞きしたものを、あれこれ綴る人生を送りました」

特に刺さったエピソード(段)は?

「はっとさせられたのが92段。人は弓を射るとき、2本の矢があると思うと、2本目を当てにして最初の矢をおろそかにする心が出てしまう。また、学びに関しても、夜には翌朝があると思い、朝になるとまた夜があると思ってしまう。長い一日でも怠け心に気づかないのに、矢を射る一瞬の怠け心なんて自覚できるはずがないという話。まとめて仕事しようと思った日曜、お昼までゴロゴロ→Netflixを見る→夕飯作り始めて、気づいたら日曜終わってんじゃん!みたいなことがある僕には耳が痛い(苦笑)。一瞬を大事にして、ちゃんと生きようと思わされます。

「徒然草」
92段の、道を学ぶ人は、夜には翌朝があると思い、朝には夜があると思いがち。「課題をすぐに実行することがいかに難しいか。とはいえ、人生は長くないからこそ、一瞬一瞬を大事にしたいと思わされます」

あとは134段の高倉院の法華堂の三昧僧の話も好きですね。ある僧侶が鏡に映る自分の醜さに衝撃を受けた。以降は鏡も見ず、人にも会わず、自室にこもって一生を終えた。その姿勢がすばらしい、という話。ぱっと読むと『こんなこと書いていいんかい!』とツッコミどころ満載。ただ、これは容姿について言及しているけれど、心の愚かさや弱さ、芸の未熟さにも言い換えられる。真正面から向き合うことがいかに難しく、人はいかに自分をよく見せたいかを指摘。取り繕わず、あるがままに生きることをよしとしています」

小学生の頃、「人はなぜ死ぬんだろう? いつか親も自分も死ぬのかな」と考え、泣いていた橋本さんの心をなぐさめたのが29段。

「ある男が片づけの最中、死んだ友人のメモ書きを不意に見つけてしまう。一瞬で友人と過ごした時間に戻れる一方で、人の死はとても悲しい。でも悼む男もいずれは死にゆく——という話。『考えてもしょうがない。人生ってそういうものだから、このまま受け入れて生きていこう。頑張るけれど、大して期待はしない』という結論に至りました(笑)」

ほかにも季節の移ろい、男女の恋愛の話、名誉や財産の話、人生の述懐と、盛りだくさん。

「根本にあるのはすべてのものは変化し、常なるものはないという無常観。それを嘆くわけでも苛立つわけでもなく、心静かに受け入れて日々過ごすことは、究極の理想なのかも」

さらに兼好は、現代社会で耳にする"おひとりさまのススメ"についても語っている。

「家族を持つ人生を歩まなければいけない重圧はいまだにあるけれど、当時から兼好はそれを一刀両断。そうじゃない生き方を歩む人の背中を押してくれている、感度が高く進歩的な人。人生の指南書だけど、うっすらダメ人間なことも伝わってくるから、堅苦しさはない。しいて言えば、人間の弱さをわかりつつ、そこと向き合い真理を探るマツコ・デラックスさんみたいな人だったのかもしれません。

『徒然草』は、悩んだり、落ち込んだときにページをめくると、気持ちをふっと軽くしたり、気づきをくれることも。 人生を伴走するような存在になりうるはずです」

『改訂 雨月物語 現代語訳付き』

『改訂 雨月物語 現代語訳付き』
上田秋成著 鵜月 洋訳注 角川ソフィア文庫/990円

人間世界で邪悪な葛藤、報われない想いを抱えた亡霊たちが日常の闇にひっそり登場する指折りの怪談小説。「菊花の約」「蛇性の婬」「白峯」など全9編。

『新版 徒然草 現代語訳付き』

『新版 徒然草 現代語訳付き』
兼好法師著 小川剛生訳注 角川ソフィア文庫/1,188円

人生、生と死、自然観、美意識、恋愛、孤独などについてあるがまま綴った日本三大随筆のひとつ。江戸時代以降、庶民の間で大ベストセラーに。全243段。

現代に生きる者として、 違和感を持つ心のまま読んでいい/山崎ナオコーラさん

山崎ナオコーラプロフィール画像
小説家・エッセイスト山崎ナオコーラ

1978年生まれ。國學院大學文学部日本文学科卒業。2004年に『人のセックスを笑うな』(河出書房新社)で第41回文藝賞を受賞しデビュー。『美しい距離』(文藝春秋)で第23回島清恋愛文学賞、『ミライの源氏物語』で第33回Bunkamuraドゥマゴ文学賞を受賞。

大学の卒論のテーマに選んだほど『源氏物語』が好きな山崎ナオコーラさん。話題のエッセイ集『ミライの源氏物語』では、『源氏物語』の新しい楽しみ方を提案している。

「この物語が千年も読み継がれているのは、読者がいたからにほかなりません。どの時代にも、こんなに面白いんだから次世代の人にも読んでほしいと、紹介したり残したりする読者がいました。当時は高貴な人の名前を出すのはマナー違反とされ、本文に登場人物の名前は全然出てきません。けれど"花散里"や"夕霧"など読者がつけたあだ名がそのまま伝わり、今の人たちも使っています。このように読者参加型の作品なのが魅力的です」

印刷技術のない時代だから残っている本は全部手書き。複数のパターンがあり著者以外の誰かが複数冊書き写していたと思われる。

「あの長い物語を紫式部一人だけで書き続けられたとは到底思えません。恐らく宮中に編集者的な人や、あのキャラクターはどうなった? と聞いてくるような人がいたから続いたのかなと思います。そういう読み手も含めた複数人で、文末などを変えつつ書き写したのではという気がして、そこも興味深い」

初めて読む人にとっての一番のハードルは、古典は勉強という意識が強く、読書や趣味的な楽しみと結びつけにくいこと。しかし、飛ばし読みで十分、と山崎さん。

「国語教育の弊害なのか、本は最初から最後までめくらないと読書とは呼ばないという思い込みがありますよね。でも飛ばし読みでもいいし、読みやすいところから読んでもいい。読書は自由だと思います。完全な理解なんてまったく必要なくて、ただ楽しんで、ちょっと考え事をすればいいというだけのこと」

『源氏物語』を楽しめないもう一つの理由は、ルッキズムや性暴力、エイジズムと、今なら犯罪やハラスメント以外の何物でもない、という場面が次々と出てくることも挙げられる。

「『許せない』『犯罪じゃないか』というシーンがあるから読みたくない、と拒否する人もいるでしょう。でも読んでみると、当時の慣習を知ったり、自分にも差別意識が潜んでいたことに気づいたりする。すると、現実にそういう場面に出くわしたら、あのときの気持ちだと思い出し、行動にストップをかけられるかもしれない。自分は加担しないようにと思えるきっかけになるから、差別をなくすという意味でも、むしろ読んで自分で考える。そのことが大事だと私は思います」

とっかかりとして、好きな登場人物の章や有名な章から読み始めるのも一案。山崎さんの好きなヒロインは最終章の浮舟だ。

「浮舟は研究シーンで長らく二股をかけている罪深い女と言われてきた人。でもどう考えても性暴力に遭ってそのような生き方になっているだけで、本人の意思ではないとしか読めないんです。一番好きな理由は、最終的に恋愛をやめて出家するところ。当時は高い地位や経済力のある相手と恋愛しなければ、本人も家も立ち行かなくなる時代。つまり恋愛をやめると家族や家に仕えている人たちの食い扶持をなくすので、出家するか死ぬしかないんです。それでも浮舟は23歳で出家して、この長い恋愛物語の外に出る。その最後の場面が印象深い。浮舟には出家後、恋愛なしのきらきらした日常があるんじゃないかと私は想像していて、いつか浮舟のその後についての現代小説を書きたいと思っています」

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「宇治十帖」と呼ばれる第3部では、源氏の子である薫と、親友でライバルの匂宮とが、皇子の娘の浮舟を取り合う。浮舟は匂宮から性暴力を受け、絶望して自殺を図るも助かる。しかし結局俗世を捨てて出家。恋愛をやめた浮舟が幸せであってほしい。

また、裕福ではない夕顔の家に光源氏が忍び込むシーンも心に残っている。紫式部の普段の生活環境では見かけない、貧しい夕顔の家を描写する場面では筆が乗りに乗っていて、そこからもっといろいろな小説を書きたかった人ではないかなど、想像も膨らんでくる。このように読者に多様な感想を抱かせ、物語に参加させる吸引力のある作品なのだ。

「これも教育の弊害で、当時の読者の気持ちになって読まなければいけないと思いがちですが、古典でも今の自分が、違和感を持つその心のまま読んでいいと私は思います。ここは許せないけれど、この部分は今と全然変わらないというように、いろいろな感情を味わった読者がいたから、次の世代に伝わってきた。だから感想をSNSでつぶやいたり雑談したりすることで、未来の読者につなげていけるんじゃないかなと思っています」

『ミライの源氏物語』

『ミライの源氏物語』
山崎ナオコーラ著 淡交社/1,760円

平安時代の名作『源氏物語』を現代の規範に照らし合わせ、ハラスメントやジェンダーなどの社会問題の視点から読み解く。新しい読み方に触れられる一冊。

今でいうところの○○だ、と 現代に置き換えてみると面白い/児玉雨子さん

児玉雨子プロフィール画像
作詞家・小説家児玉雨子

1993年生まれ。神奈川県出身。明治大学大学院文学研究科修士課程修了。アイドル、テレビアニメ主題歌などに作詞提供。2023年『##NAME##』(河出書房新社)が第169回芥川賞候補作にノミネート。著書に『誰にも奪われたくない/凸撃』(河出書房新社)がある。

「近世文学は中高の授業であまり取り上げられなかったのですが、大学で触れてみたら諧謔や洒落、滑稽さとか、ふざけているものが多くて、なんだこれは、面白いじゃないかと思ったのが、好きになった最初の契機です」

昨秋上梓したエッセイ集『江戸POP道中文字栗毛』でも、のめり込みぶりを遺憾なく発揮している児玉雨子さん。近世の作品の楽しみ方をたっぷりと伝えてくれている。

「まだよく知られていない面白い作品がたくさんあるんですよ。たとえば、あの平賀源内が風来山人というペンネームで書いた『根南志具佐』は、政治的風刺と同時に、自分のパートナーがモテまくることを物語化した、BL小説。源内自身はゲイだったといわれていて、当時男色(男性の同性愛)は社会的にはある程度知られているものでしたが、この小説は自分の惚気というか、パートナー自慢をしている結構すごい小説なんです」

近世文学の入門編として、まずはキャラクターに注目する読み方はどうだろう。山東京伝の『青楼昼之世界錦之裏』は、当時の人気キャラクターが登場する作品だ。

「ここに出てくる夕霧太夫は実在した有名な花魁。ほかにも小紫など当時の売れっ子の遊女を多くの作家がフィクション化しています。これはある意味キャラ文化のはしりかもしれません。彼女たちは現実の恋愛も壮絶だったのですが、その恋愛物語で最後は心中させる。その過程を各作家がさまざまに書いています。夕霧ものや小紫ものは、今でいうナマモノカップリング(有名人同士の絡みを妄想して楽しむ)みたいな感じですね」

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近世文学に出てくる、遊郭を舞台にした作品での買春や人身売買は、現代の感覚で肯定するのは難しい。しかし、『青楼昼之世界錦之裏』は昼間の遊郭や花魁のリアルを描いていて、作者の山東京伝がファンタジーの裏側を見せようとする姿勢が興味深い。

このように、今でいうところの○○だ、と現代に置き換えて読むのも面白い。恋川春町の『金々先生栄花夢』は現代のメンズファッション誌のようなもの、と児玉さん。

「恋川春町は黄表紙というジャンルを確立した作家。江戸っ子、つまり都会の男性のイケてるファッションはこれ、という絵を絵師に描かせたり自分で描いたり。『金々先生栄花夢』はおしゃれ男子の休日の過ごし方や流行語とかも書かれていて、まさに『メンズノンノ』。彼は当世風を本で広めた人です」

その後、黄表紙は諧謔や暗喩的な洒落のわかる、大人のためのエンタメ本へと変化。『敵討義女英』のようにシリアスな物語も登場する。この作品は家同士の因縁によって、小しゅんという女性が、愛した男に自ら命を捧げて親の仇討ちを遂げさせるという復讐物語。

「南杣笑楚満人という作家の初ヒット作品で、特に女性読者にすごくウケたので、その後は女性が出てくる小説を書くようになったらしい。この頃までの小説は男性がメインの物語が圧倒的で、女性が出てきてもお姫様や花魁など特殊な背景の人か、脇役が多かった。ところがこの作品で小しゅんが描かれたことをきっかけに、物語に町娘のようなごく普通の女性が大事な役で登場し始めたんです。これはエポックメイキングな出来事」

前述した『青楼昼之世界錦之裏』では、真昼の遊郭の日常が描かれている。華やかな夜から一変、化粧も落とさず寝てしまった女性たちの様子が描写されていて、まるでYouTubeで見る朝のルーティン動画のよう。

「日常を描くといえば、式亭三馬の『浮世風呂』。多様な女性たちが女風呂でただただ世間話をしているパートは、場所をスーパー銭湯に置き換えても違和感ゼロ。明確なストーリーがないこともあり文学的意義をあまり見出されてこなかったのですが、交わされている雑談から当時の市井の人々の生活が伝わり価値が高い。定点カメラで追うような構成はYouTubeっぽいし、女たちのおしゃべりがLINEでのやり取りみたいで楽しい」

約200年前の小説でも、現代に置き換えると人間が本質的にはそれほど変化していないように読み取れる近世文学。現代の事象と勝手に重ね合わせるなどして、もっと気楽に自由に触れていい、と児玉さん。

「古典は自由に妄想したりテキストの解釈を広げたり、いくらでも楽しめる。かつてテストの点数がよくなかったからとか、教養がないからとか思わなくていいんです。大説という中国の古典の対義語として生まれたといわれている小説。謙遜の入った『ただの娯楽ですよ』という言葉なんですから」

『江戸POP道中文字栗毛』

『江戸POP道中文字栗毛』
児玉雨子著 集英社/1,650円

千手観音の腕を借りた人々の顛末を描く「大悲千禄本」など、隠れた近世文学を今の感覚でビビッドに紹介するエッセイ集。3編のリメイク短編小説も所収。

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