【シュー・グァンハン】が知りたい。アジアを駆ける人気俳優に迫る

台湾でモデル・俳優として活躍し、多くの人気作に出演するシュー・グァンハン。今、海を越えて活動の幅を広げ、ますます多くの人を魅了している。最新主演作『青春18×2 君へと続く道』のエピソードとともに、その魅力に迫りたい

大事な記憶をたどり、 自分をリセットする

シュー・グァンハン
コート¥301,400・パンツ¥104,500/ドリス ヴァン ノッテン ブーツ¥206,800/ジルサンダージャパン(ジル サンダー バイ ルーシー アンド ルーク・メイヤー)

台湾と日本で撮影が行われた『青春18×2 君へと続く道』。映画にちなみ、旅のはじまりを予感させるようなセットで。ロング丈のトレンチコートは細身のシルエットが端正な表情。トランクを片手に、一歩を踏み出して。

ドラマ「時をかける愛」(’19)で第55回金鐘獎の連続ドラマ主演男優賞にノミネートされ、台湾のみならず、アジア全域からの注目を集めたシュー・グァンハン。宮崎駿監督の最新作『君たちはどう生きるか』(’23 )では台湾版のアオサギ役の吹き替え声優を務め、話題の韓国ドラマ「No way out」への出演も決定。ますます活躍の幅を広げる、国際的スターだ。

撮影スタジオに現れたグァンハンはふわりとした華がありながらも、すっとその場の空気になじむようにして写真に収まっていった。やわらかい色気とシャープな凛々しさを共存させ、楽しそうな笑顔を浮かべたかと思うと、好奇心旺盛な表情で机の上に置いてあるものに興味を注ぐ。メゾンのアンバサダーも務めるファッションアイコンとしても知られるが、まったく気取らず、日本語を交えながら気さくに話してくれた。

「普段はよく運動をしに出かけるので、ロゴが入ったカレッジパーカやスウェットといった、ゆったりしたシルエットの服が定番です。色は黒かグレーか白。スニーカーも好きなのでたくさん持っています。やっぱり歩きやすさ重視ですね。あと、帽子をつい買ってしまうことも多いです」

『余命10年』(’22 )や『ヤクザと家族 The Family』(’21)で知られる藤井道人監督の新作『青春18×2 君へと続く道』では、清原果耶とダブル主演に抜擢。日本から台湾に来たバックパッカー・アミ(清原)に恋する18歳のジミー役。そこから18年後、大学の同級生と会社を立ち上げて、走り続けてきた36歳の彼も演じる。

「青春時代の純愛がテーマではありますが、人が旅をすることで傷を癒やし成長する過程に重きが置かれていて、とても大きな意味を持った作品です。ある日会社の代表を解任されてしまった36歳のジミーは、初恋の相手・アミと過ごした18歳のときの思い出をたどる旅に出ます。旅によって過去の自分とどう和解をするか。その目的にとても共感しました。僕もそうですが、多くの人は一生懸命働き、仕事に没頭する日々を送っています。忙殺される毎日に青春時代に持っていた純粋な気持ちを忘れてしまったり、自分を見失うことがありますよね。過去の大事な記憶と再会し、自分自身をリセットすることはとても大切なことです」

撮影は台湾と日本で行われた。会社から打診された最後の仕事を東京で終えたジミーは鎌倉、長野、新潟、福島と移動する中で、いくつもの一期一会を経験していく。

「ひとつの撮影が終わったら、クルーの皆さんと一緒に次の場所に移動していく。まるでそれ自体が旅みたいで。特に僕が好きになった街は長野県松本市。静かで独特の世界観があって惹かれました。アミの故郷の福島県只見町は自然が豊かで、絵画のように美しかった。日本には思い出も多く、昨年は友人のバンド、落日飛車が出演したサマーソニックに訪れたことも記憶に残っています」

何が起こるかわからないのが旅の醍醐味

シュー・グァンハン
トップス(インナーとセット)¥85,800・パンツ¥316,800・靴¥174,900・ネックレス¥184,800/ジルサンダージャパン(ジル サンダー バイ ルーシー アンド ルーク・メイヤー)

アミを演じた清原果耶、36歳のジミーが長野県JR飯山線で出会う18歳のバックパッカー、幸次を演じた道枝駿佑。フレッシュな日本のキャストとの出会いも、にこやかな表情で懐かしんだ。

「果耶さんは素晴らしい実力を持った俳優。さまざまな刺激をもらいました。僕より随分年下の方ではありますが、とても成熟した精神力を持っている。一方とても可愛らしい少女のような一面もある。今回の共演は僕にとってとても美しい経験でした。道枝さんは〝とにかく可愛い〟(ここだけ日本語で)。隣にいると若者特有の活力と息吹を感じました。道枝さんもとてもプロフェッショナルな俳優ですが、彼を見ていると、自分が10歳以上年齢が上だと痛感します(笑)」

シュー・グァンハン

漫画『SLAM DUNK』や映画『Love Letter』(’95 )、ゲーム「桃太郎伝説」といった日本のカルチャーが映画を彩る。グァンハン自身はいまアニメ「葬送のフリーレン」に夢中だという。

「いま台湾ですごく流行っていて、僕も大好きです。主人公のフリーレンは1000年以上生きているエルフですが、彼女に比べると人生はとても短く感じます。命の意義を探求する視点がすごく面白い」

日本と台湾をつなぐ美しくも切ないストーリーを通じ、自身の〝旅〟とも向き合った。

「アミの『旅はゴールなんてない。何が起こるかわからないから面白い』というセリフがありますが、その通り。何があるかわからないのが旅の醍醐味です。僕は旅をするときはいつもこれまで知らなかったこととの出合いを期待しています。初めての経験は自分自身を成長させてくれるので、不安より期待のほうが大きいんです。仕事でいろいろな場所を訪れることも、ちょっとした外出も好きですね。車を運転して山や自然にあふれた場所に行くことも。旅をすると世界の広さを目の当たりにすると同時に、自分の存在の小ささを感じて。自然体でありながら謙虚な気持ちを持つことの大事さを思い返します。落ち込んだ気持ちがリフレッシュされる効果もありますよね。リセットしたり、充電したりすることは俳優の仕事を続けるうえでとても大切なこと。僕が旅をするときのマストアイテムは、財布と携帯電話。海外だったらそれに加えてパスポート。とてもシンプルです(笑)」

シュー・グァンハン
トップス(インナーとセット)¥85,800・パンツ¥316,800・靴¥174,900・ネックレス¥184,800/ジルサンダージャパン(ジル サンダー バイ ルーシー アンド ルーク・メイヤー)

ラフな白Tシャツにブルーグリーンのシースルートップスをオン。同系色のボトムスに、白いスニーカーを加えて、洗練された爽やかな着こなしに。

『青春18×2 君へと続く道』

©2024「青春18×2」Film Partners
©2024「青春18×2」Film Partners

会社の代表を解任され、人生の目標も居場所も失って故郷へ戻ってきた36歳のジミー(シュー・グァンハン)。初恋のアミ(清原果耶)から届いた一枚の絵はがきを手に取り、記憶の中の"あの夏"をたどる旅に出る。(全国公開中)

Hsu Kuang Hanプロフィール画像
Hsu Kuang Han

シュー・グァンハン●1990年、台湾生まれ。2013年に俳優デビュー。2019年、ドラマ「時をかける愛」で第55 回金鐘獎の連続ドラマ主演男優賞にノミネート。2023年、主演映画『僕と幽霊が家族になった件』が第96回アカデミー賞国際長編映画賞部門の台湾代表に選出。

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