2025年の注目バンドをプロが語る! バンドミュージックの現在地

若い世代を中心に再び盛り上がりを見せるバンドカルチャー。最前線はどんな状況なのか? 今、注目しているバンドは? 長年シーンを見つめてきた3人に、考察と偏愛を聞く。

若い世代を中心に再び盛り上がりを見せるバンドカルチャー。最前線はどんな状況なのか? 今、注目しているバンドは? 長年シーンを見つめてきた3人に、考察と偏愛を聞く。

サブスクでは出合えないところに、バンドの面白さがある

DOGO
2024年11月にデモをリリース、ライブ活動を開始したばかりの4人組バンドDOGO photo: アオイ ワカバヤシ

貧困が進んでいて、今の日本でバンドをやるのは難しいよなと思います。楽器の高騰もエグイし、スタジオもどんどん減っているので、バンドミュージックはクラシック音楽みたいになっていくと思うんですよね。バンドをやっている人=お金持ちの人というか。それくらいハードルが高い。だからこそ"生バンド"に憧れるし、そんな状況でも頑張る人はいて面白いバンドは生まれていくから悲観したりはしないのですが。

たとえば最近ならDOGO(1)というバンド。俺のイベントに客として現れた横山タケマロが始めたプロジェクトで、ライブと音源の印象がまったく違くて。ライブはかなりハードコアなんだけど、そのギャップが面白い。

あと今は、とにかくビジュアル系を掘っています。解散しているバンドだけどメガマソの涼平というメンバーが衝撃的で。男子とか女子とか超越している存在がかっこいいし、楽曲もめちゃくちゃいい。このバンドをきっかけにV系の世界に没入していて、しゃるろっとなんかも好きですね。

それから最近またハマったのがマニック・ストリート・プリーチャーズ(2・3)。年始に来日公演を観て、ジジイたちがすごく楽しそうにしている姿に号泣しました。バンドに触れるなら、やっぱりライブやライブハウスに行ってみてほしい。知らないバンドのCDを買ったり、知らないバンドの演奏を観たり、トライ&エラーを繰り返しながら好きなものを探す体験は、サブスクで流れてくる音楽を聞くよりも何百倍も刺激的だと思いますね。

マニック・ストリート・プリーチャーズ
1986年に南ウェールズにて結成されたイギリスを代表する"マニックス"。約3年半ぶりとなる最新アルバムをリリースし、今なお精力的に活動を続ける
マニック・ストリート・プリーチャーズ 「クリティカル・シンキング」
マニック・ストリート・プリーチャーズ 「クリティカル・シンキング」 (株)ソニー・ミュージックレーベルズ
REIJI OKAMOTO(OKAMOTO’S)プロフィール画像
REIJI OKAMOTO(OKAMOTO’S)

4人組ロックバンドOKAMOTO’Sのドラマー。今年1月にアルバム『4EVER』を発売。個人ではDJとしての活動を行うほか、「YAGI EXHIBITION」の主宰も務めるなど、クロスジャンルな活躍で現代のカルチャーシーンをけん引している。

女性アーティストがけん引する、今のバンドカルチャー

ザ・ラスト・ディナー・パーティー
ザ・ラスト・ディナー・パーティーは昨年のフジロックフェスティバルへの出演も話題となった

「バンド、冬の時代」とされ、時代遅れとまで言われていた2010年頃と比べると、最近は若者にもバンドミュージックを聞く文化が広がりつつあります。ファッション同様にノスタルジックなもののリバイバルムーブメントが起きていること、コロナ禍の反動によるライブ体験への渇望など……さまざまなエレメントが重なっていますが、ガールズパワーの影響も大きい。

昨年のグラミー賞でロック部門を受賞したボーイジーニアスや、日本でも大ブレイクを果たしたザ・ラスト・ディナー・パーティー(4)など、女性メンバーを中心としたバンドが脚光を浴びています。この状況は2025年も続いていく予想で、Man/Woman/Chainsaw(5)mary in the junkyard(6)の2組はブレイクの予感。彼らは盛り上がりを見せるロンドンのバンドシーンの中心的存在で、"マキシマリズム"と呼ばれるグランジ、シューゲイザー、ポストパンクといった多様なジャンルをクロスオーバーさせたサウンドが面白い。ほかにもBeabadoobeeなどの流れから女性ソロアーティストがバンド編成で活動をする傾向も強まっていて、Chloe Slaterは今後、要注目の人物です。

ひと昔前までは女性がバンドをやっていると"ガールズロック"と言われ正当な評価がされないこともありましたが、今は性別が枕詞にはならない時代。そのため当時は揶揄されることもあったホールなどの先駆者も、再評価の流れがきています。

Man/Woman/Chainsaw
ロンドンのティーンエイジャーによる新鋭ポストパンク・バンド、Man/Woman/Chainsaw photo: Sophie Barloc
mary in the junkyard
mary in the junkyardはサウス・ロンドンを拠点に活躍するトリオ
SHINO KOKAWAプロフィール画像
SHINO KOKAWA

エディター・ライター。雑誌『ロッキング・オン』『CUT』『BUZZ』の編集に携わり、『ロッキング・オン』では編集長も務めた。現在はフリーで数々の雑誌の音楽や映画の記事を手がけるほか、コメンテーターとしても活動を行なっている。

クライシスの中にあっても、バンドは必ず残っていく

ディア・ハンター
ブラッドフォード・コックスとモーゼス・アーチュレタによって結成されたアメリカのバンド、ディア・ハンター

バンドカルチャーにはここ数年、一種のクライシスを感じていますが、形は変えながらも必ず残っていくと思うので、そのためにもZINEや音源などを"モノ"として残していく重要性を感じています。今は、ニューアルバムを出したばかりのホースガール(8)が気になる存在。もともと好きだったケイト・ル・ボンがプロデュースしていることが関心を寄せたきっかけですが、クラフト感のある音作りをしながら、キャッチーだったり前衛的だったりするアプローチにトライしているので今年の初来日も楽しみなアーティストです。それからオアシスの復活の影響もあり、リバイバルムーブメントがきているので、個人的にはディアハンター(7)もおすすめしたい! インディーロックのジャンルではありますが、マイ・ブラッディ・ヴァレンタインステレオラブに興味がある方ならポップで聞きやすいはず。今年は再結成や来日も多いので世代関係なく、もっといろいろなバンドに触れてみてほしいです。

ホースガール
Z世代のオルタナバンド、ホースガールは今年初来日公演を予定 photo: Eliza Callahan
NAHOKO OTSUKAプロフィール画像
NAHOKO OTSUKA

翻訳家・通訳。15年以上前からライフワークとしてバンドカルチャーにまつわるZINEを制作。現在はディアハンターのフロントマンであるブラッドフォード・コックスの音源を収めたカセットテープの販売プロジェクトを進行中。

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