韓国詩と巡るソウル。喧騒と静寂、伝統とモダンが交差する世界へ

リズミカルな一節と、荘厳な建築へ。パワフルなフレーズとともに、活気あふれる雑踏へ。韓国で生まれた美しい詩を胸に出かければ、この場所の魅力をもっと深く、もっと強く感じることができる。街並みに似合うモードな装いを纏って、心を解放する旅へ出かけよう

リズミカルな一節と、荘厳な建築へ。パワフルなフレーズとともに、活気あふれる雑踏へ。韓国で生まれた美しい詩を胸に出かければ、この場所の魅力をもっと深く、もっと強く感じることができる。街並みに似合うモードな装いを纏って、心を解放する旅へ出かけよう

@MMCA Seoul

@MMCA Seoul
ジャケット¥1,886,500・ボディスーツ¥357,500(参考価格)/ルイ・ヴィトン クライアントサービス(ルイ・ヴィトン) コルセット¥231,000・パンツ¥31,900/チカ キサダ

パワーに共鳴する、自由な装い

ソウルへの招待状のような詩に引き寄せられて、初めにたどり着いたのは現代的な街の"顔"と言えるミュージアム。雄大な光と影が折り重なる空間には、パワースリーブのジャケットがよく映える。透ける素材やプリントも組み合わせて、さらにプレイフルに。刺激的な場所にいざなわれた、高揚感を享受したい。

スーツケースを引く音だけで 私はあなただとわかったよ。
ゴートな格好で現れたんだね。ソウルの春とよく似合うよ。
ヤギの形をした雲ふたつが 今あなたの頭上を流れたんだ。
でこぼこの上を歩いているみたいだって?
楽しみにして。ソウルはもっとドキドキ、ハラハラなんだから。

ソウルは愛のど真ん中みたいなの。これが わたしがソウルについて話せることのすべて。
どこでも小さなリンゴのような ウサギの目のような 心臓に出会えるよ。
あなたはもう 赤くて白い心臓の中に入っているの。

ソウルは大きな一輪の花。静寂の右足と緑の左足で景福宮キョンボックンを散策して。
南山ナムサンタワーに登ってみて。
漢江ハンガンにあるコンビニで ラーメンも食べてみて。

망원マンウォン 성수ソンス 연남ヨンナム 신당シンダン。丸々とした発音の街並みも歩いてみて。
華やかな大通りは アコーディオンのような路地を抱いているの。
古い工場や靴屋通り 食器屋通りを通ることになるよ。
低い集合住宅の間にひっそりと佇む小さな本屋や
くすぐったいカフェの扉を開けることになるわ。

実は あなたはまだソウルにいないよね。でも あなたはすぐに来るの。
時間の街 ソウルへ。私はすぐあなたに気づくはず。
春の樹の匂いいっぱいのスーツケース。
ボタンが見えなくてもポケットが見えなくても
つぼみに似ているあなたの服。

※GOAT (Greatest of All Time)「史上最高」の意味でインターネット上で使われるスラング。

「ソウルからの手紙」 (本特集のために書き下ろし)
イ・ウォン/きむ ふな訳

イ・ウォンプロフィール画像
詩人イ・ウォン

1992年「世界の文学」にてデビュー。詩集『彼らが地球を支配したとき』 『yahoo!の川に千の月が昇る』『世界でいちばん軽いオートバイ』『不可能な紙の歴史』『私は私のやさしいシマウマ』、エッセイ集に『散歩の中にこめたもの』『詩のための辞書』など。これまで現代詩学作品賞、現代詩作品賞、衡平文学賞などを受賞。現在はソウル芸術大学文芸学部教授を務める。

@MMCA Seoul

景福宮など、近隣の歴史的な街並みと調和する国立現代美術館ソウル館。
서울특별시 종로구 삼청로 30 30 Samcheong-ro Jongno-gu
tel. 02-3701-9500 M3号線安国駅
営業時間:10時~18時、10時~21時(水・土)
@mmcakorea

@乙支路

乙支路
ジャケット¥485,100・パンツ¥176,000・帽子¥168,300/ロロ・ピアーナ ジャパン(ロロ・ピアーナ) ドレス¥559,900/トッズ・ジャパン(トッズ)

そぞろ歩くための静かな服

ストイックに"散歩する人"の言葉に触発されて、ソウルの街を闊歩する日には街に溶け込むミニマルなスタイルで。ただし、2重になったドレスはあえてジャケットの上から重ねて複雑な表情を演出する。整然としたビル群の裏にある蛇腹のような路地、薄暗い道に飛び交う快活な笑い声。相反する要素が重なり合うソウルには、"ひと筋縄ではいかない"レイヤードがふさわしい。

 歩いていった 道があった 歩いていった 知らない道だった ゆっくり
歩いた 休息のために歩き始めたのではなかった
 歩幅が一定でなかった 歩いていった 足跡は言い訳だ その方向に歩か
ねばならない切実な理由のような 四方に言い逃れをする中途半端な弁解のような
 ちょっと足を止めて周囲を見回した 思索のために歩き始めたのではなかった
知らない風景だった 深い足跡が刻まれた

「散歩する人」より一部抜粋(詩集『僕には名前があった』より)
オ・ウン/吉川 凪訳

@乙支路

下町情緒あふれるエリアで、小さな商店や食堂が並び、生活者たちの熱気に満ちている。再開発の計画があり、数年後には失われてしまうかもしれない景観を目に焼きつけたい。

韓国詩と巡るソウル。喧騒と静寂、伝統とモの画像_5
ジャケット¥495,000/グッチ クライアントサービス(グッチ) ブラウス¥107,800/イザ(ニナ リッチ) スカーフ¥35,200/ケイスケヨシダ カンパニー・リミテッド(ケイスケヨシダ)

時には立ち止まって、空を眺めて

乗馬において馬が立ち止まるために用いる、"くつわ"から着想を得たホースビット。アイコニックなパターンに倣って、小休止。足を止めれば、詩の主人公同様に見えなかった景色が見えてくる。晴れやかなイエローと風に揺れるスカーフも、頭に余白をつくる時間を後押しする。

韓国詩と巡るソウル。喧騒と静寂、伝統とモの画像_6
ポロニット¥631,400(参考価格)・パンツ¥382,800/エルメスジャポン(エルメス) ブラウス¥61,600/マメ クロゴウチ オンラインストア(マメ クロゴウチ) スカート¥97,900/TOGA 原宿店(TOGA) ブローチ¥35,200/デ・プレ

街の文化と伝統に敬意を表して

次々と新しいものが生まれる一方で、トラディショナルな文化も身近に感じることができるソウル。韓国の伝統衣装であるチマチョゴリにインスピレーションを得て、品格あるシルクメッシュのブラウスやスカートを重ねてスタイリング。故きを温ねることで見つかる気づきを、歴史ある街並みと詩人のやわらかな言葉が教えてくれる。

今となっては
生きていくとは何だろう

そんな問いと一緒に横になっていると
顔に
陽射しが降りてきた

陽が通り過ぎるまで
目を閉じていた
そうっと

「回復期の歌」
(詩集『引き出しに夕方をしまっておいた』より)
  ハン・ガン/きむ ふな 斎藤真理子訳

@漢江

漢江
ジャケット¥660,000・パンツ¥260,700・靴¥236,500/ボッテガ・ヴェネタ ジャパン(ボッテガ・ヴェネタ) セーター¥40,700(参考価格)/THE WALL SHOWROOM(スポーティー&リッチ) ネックレス¥264,000/エスケーパーズ アナザーワールド(ソフィー ブハイ)

水面を眺めて、自分を取り戻す

旅は新しいものに出合うためだけにあるのではなく、非日常の中で心を"回復"するためのものでもある。デザイナーが子ども時代に思いを馳せて生まれたチェック柄のジャケットとデニムは、緊張からあなたを解き放ち、オプティミスティックなマインドへと導く。静かに流れる川を前に、ゆるやかに自分との対話を楽しんで。

@漢江

ローカルにも旅行者にも愛されるソウルを象徴する場所、漢江。東西に延びる約1000mの幅の川の周囲には11の公園があり、ラーメンを食べたり、サイクリングをしたりみんなが思い思いの時間を過ごしている。

韓国詩と巡るソウル。喧騒と静寂、伝統とモの画像_9

明日、朝の光が差し込んだら
僕にとっていちばん柔らかなものたちを
あなたに見せるつもりです。

ひとしきり眺めてから
きっちりとたたんでしまっても

すぐにまた広げてみたくなる
そんな思いがいくつもあればいいのですが。

「返信」
(詩集『泣いたって変わることは何もないだろうけれど』より)
パク・ジュン/趙 倫子訳

@ソウル駅

ソウル駅
コート¥1,210,000(予定価格)/ミュウミュウ クライアントサービス(ミュウミュウ) ニット¥313,500・パンツ(参考商品)/ガブリエラ ハースト ジャパン(ガブリエラ ハースト) シャツ¥48,400・タイ¥22,000/オーラリー 靴¥193,600/ジルサンダージャパン(ジル サンダー バイ ルーシー アンド ルーク・メイヤー)

無垢な心でアート空間に浸る

美しい情景に出合うと、帰る場所にいる大切な人が思い浮かぶのはなぜだろう。旅先でのセンチメンタルな心情を想起させる詩に浸るため、訪れたのは光が差し込むアートスペース。"無邪気な色彩"をテーマにデザインされた鮮やかなコートを羽織って、清らかな思いと向き合うひとときを。

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