ネクストポップスターは誰だ! 辰巳JUNKと竹田ダニエルが、新時代のアイコンを語る【クレイロ】【シザ】【タイラ】etc.

強烈なアイデンティティを武器に、キャラクター性の際立つ新星が続々登場。友情やインスパイアする関係性など、各アーティストの主なつながりを総ざらい!

強烈なアイデンティティを武器に、キャラクター性の際立つ新星が続々登場。友情やインスパイアする関係性など、各アーティストの主なつながりを総ざらい!

辰巳JUNKと竹田ダニエルが語る、新時代のアイコン像

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ポップアイコンの顔ぶれが変わった!?

辰巳 2010年代後半はトラップ音楽が主流でしたが、コロナ禍を経てから、女性ポップアーティストが中心になりましたね。顕著だったのは、生演奏の人気が高まり、技能が重視されるようになったこと。専門教育を受けてきた若手のブレイクが目立ちます。ローラ・ヤングは名門のブリット・スクール卒ですし。テイト・マクレーやキャッツアイのダニエラは、同じキッズダンスの強豪出身。

竹田 スキルという点では、ドーチー(7)も注目を浴びていますね。ミックステープの中でいろんなフローを使い分けるなど、スキル勝負。今まで女性ラッパーは"ノリ重視"のような流れもあった中で、大御所に対抗できる実力の持ち主が出てきた。

辰巳 ステージでのダンスの振り付けや衣装、ヘアメイクまで、自分で提案するという徹底ぶりもすごい。MVもアート映画みたいで洒落ている。センスを感じます。

竹田 テレビ番組風や、寸劇っぽかったり。斬新なクリエイティブで、ラップのイメージをアップデートしました。

辰巳 シアトリカルですよね。その流れで言うと、サブリナ・カーペンター(4)のように演劇的な要素を取り入れたアーティストが増えている。コメディチックで、より遊び心にあふれたパフォーマンスの需要が高まっている気がします。それと同時に、私小説のような歌詞も依然人気。内面を吐露するような曲が共感を集めやすい。

竹田 SNSの影響がさらに拡大した結果、"キャラクター"を自分たちで発信できるようになったことも大きいですよね。インターネットの使い方が巧みなスターとしては、チャーリー xcx(9)やピンクパンサレス(2)が代表的。

辰巳 チャーリーは、キャリアも長いですけどね。ハイパーポップという音楽ジャンルを打ち立てて、今につながるY2K文脈にも影響を与えている。

竹田 チャーリーは人を見る目もある。TikTokスターだったアディソン・レイ(6)を見出してサポートし、音楽的な成功に導いたのも彼女ですし。

辰巳 ピンクパンサレスは、TikTok上でのショート曲を定着させましたね。最初にフックとなるメロディを作ってインターネットにアップして、人気だったものを一曲完成させるという手法をやっていた。ミーム化しやすい、瞬発的な強さがありますね。その中でK-POPをサンプリングするなど、韓国方面との相性もいい。

竹田 K-POP周辺は、チャーリーっぽいサウンドも多く取り入れています。

辰巳 そうですね。チャーリーはキャッツアイ(5)に楽曲提供もしていますし。

竹田 その点、K-POPがグローバルな人気を獲得しているのも変化ですね。キャッツアイはその象徴的な存在。韓国の大手事務所であるHYBEがプロデュースしながら、アジア系からラテン系まで、多様なルーツのメンバーで構成されている。人種やジェンダーのアイデンティティが多様化する中で、大きな支持を獲得していますね。

辰巳 Netflixオリジナル映画『KPOPガールズ! デーモン・ハンターズ』(2025)も爆発的なヒットでしたし。ブロードウェイのベテランが監修し、K-POPの音楽人材が楽曲を担当。作曲と歌唱を務めたイジェは、10年間、韓国の大手事務所SMエンタテインメントの練習生だったという実力派。アメリカのミュージカルとK-POPが融合した、象徴的な作品ですね。

自己のアイデンティティを投影したキャラクター性が人気のカギに

辰巳 キャラクターという観点で言うと、"美学"を確立させてファッション的な人気を誇るアーティストも。クレイロ(3)が代表的。

竹田 グレイシー・エイブラムスも、わかりやすいテーマやビジュアルで人気を獲得しています。

辰巳 一方、"ぶっちゃけ"的なキャラクターも台頭しています。ローラ・ヤングの「メッシー」は、彼氏の愚痴や、生理の話までおおっぴらにして支持を獲得。クリーンな部分だけ見せるのではなく、修正を加えない徹底的にリアルな描写が人気になってきていますね。

竹田 その視点で言うなら、シザ(8)の存在も大きいですね。きれい事だけじゃない、人生の苦悩を描いている。アルバム全体を通したストーリーテリングが巧みで、作品ごとにキャラクターを作り変えるようなところもあります。

辰巳 シザは、R&Bの枠に当てはまらない音楽性も斬新だった。デビューアルバムのフローのよさと、散文のような曲作りという構成が、多くのポップスターに衝撃を与えましたね。実はサブリナ・カーペンターも、シザの影響を受けて作風を変え、ブレイクしたという話もある。

竹田 シザからの影響で言うと、セイラーやトゥイなどアジア系R&Bアーティストも。アジア人女性としてどう生きるのか、というアイデンティティも大切にしていますね。

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辰巳 ルーツと言うなら、タイラ(10)も南アフリカ出身であることに根ざし、"西洋的な王道ポップ"に括られない音楽を志向しています。カリ・ウチス(11)も、ヒスパニックとしてのルーツを引き継ぎ、英語とスペイン語の2言語で売れています。プエルトリコ出身のヤング・ミコも、レズビアンであることを公言し、クィアなラテンポップに日本のアニメやゲーム趣味を交ぜている。

竹田 今のポップアイコンには、"どこで生まれ、どう育ってきたのか"という背景が欠かせない。その文脈で語るなら、エセル・ケイン(1)が代表的。アメリカの保守地域で抑圧されてきた経験をベースにした、リアルなストーリーテリングが支持を集めていますね。

辰巳 「エセル・ケイン」というのは架空のキャラクター。本人は、キリスト教の根強いアメリカ南部出身で、トランスジェンダーとして生きてきた背景をもとに物語を作っています。

竹田 最近台頭しているアイコンに共通して言えるのは、自身の人種や性的アイデンティティに向き合い、メンタルヘルスなど今までタブー視されていた部分も表現しているところ。その筆頭株こそ、チャペル・ローン(12)ですね。自身も同性愛者であることを公言し、曲にも、クィアとして社会で生きる上での物語が込められている。LGBTQ +コミュニティからの支持も厚い。音楽以外に本人の発言が信頼できる、政治的に共鳴できると思われている点も、人気を集める大きな要因になっています。

辰巳 クィア性を全面に出したアーティストが、あれほどメインストリームで成功したということに、新時代の幕開けを感じますね。

竹田 これからは「全員にウケなくてもいいから、共感する属性のアイデンティティの人に響くこと」が大事になる時代へ。最近だと、ザラ・ラーソンが政治的発言も含めて注目を集めている。より多様なキャラクターを持つ新星が登場してくると思います。

辰巳JUNKプロフィール画像
辰巳JUNK

セレブリティや音楽、映画、ドラマなど、アメリカのポップカルチャー全般に精通。著書に『アメリカン・セレブリティーズ』(スモール出版)など。

竹田ダニエルプロフィール画像
竹田ダニエル

カリフォルニア出身、在住。「音楽と社会」を結びつける活動を行い、日本と海外のアーティストをつなげるエージェントとしても活躍する。

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「サブリナ・カーペンターは、今を代表するポップアイコン。女性らしさを思いきり誇張するキャラクターならではの、キュートな佇まいに釘づけ」(中澤さん・以下同)

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「リトル・シムズは、ボーイッシュでプレッピーな装いが得意。ハンチングなどのハット使いも、真似したくなる」

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「2000年代にタイムスリップしたかのような、キャッチーなY2Kスタイルのビーバドゥービー。ちょっぴりセクシーで、ちゃめっ気にあふれるバランスも巧み」

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「若手ホープのサマラ・シンは、オールドスクールなアメリカンスタイルが得意。ミニカーのついたベルトなど、キッチュな小物合わせもチャーミング」

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「個人的な注目株No.1は、ドーチー! 時代のムードを体現したプレッピースタイルの虜に。計算されたサイジングで抜け感を出し、フレッシュに見せる手腕に脱帽」

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「クレイロは、ノスタルジックなレトロガーリーの旗手。ただスウィートなだけに終わらない、ウィットに富んだ隠し味がポイント」 

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「グリフは、毒っ気のあるロマンティックなムード。レースやソックスを使った足もとのコーディネートは参考にしたくなる」

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「チャーリー  xcxが打ち出す、強いだけでない"ワルイ女"を演出する女性像は衝撃的。クラブミュージックにフィットする、エッジィな着こなしはまさに"BRAT"」

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「グレイシー・エイブラムスは、そのノーブルな顔立ちを生かした正統派フェミニン。コンサバティブになりすぎないのは、シンプルなボブヘアと、しっかりした眉毛のおかげ」

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「フローはデスティニーズ・チャイルドを彷彿とさせる、1990〜2000年代らしい空気感がたまりません。ボディポジティビティにあふれる着こなしも大好き」

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「バンビのようにきゃしゃな体型を生かした、唯一無二のスタイルで魅せるタイラ。ネックレスを何連にも重ねたり、腰まわりに装飾を取り入れたりして、ヘルシーな肌見せを実現」

2025年 音楽界の相関MAP

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伝統ポップ志向

1 Chappell Roan(チャペル・ローン)
真にクィアなアーティスト
ドラァグクイーン姿が象徴的。その世界観と社会的発言で、熱い支持を集める。

2 Sabrina Carpenter(サブリナ・カーペンター)
コメディの女王
俳優仕込みの演技力と抜群のユーモアセンスで、男女の恋愛を痛快に表現する新時代のアイコン。

3 Reneé Rapp(レニー・ラップ)
ミュージカル『ミーン・ガールズ』で活躍し、歌手活動を開始。バイセクシュアルを公言。

インディー志向

4 Ethel Cain(エセル・ケイン)
トランスジェンダーとして、アメリカの保守地域に育った経験をもとに楽曲を制作。

5 Lola Young(ローラ・ヤング)
恋愛やメンタルヘルスまで、Z世代のリアルな悩みを代弁。

6 Clairo(クレイロ)
「ベッドルーム・ポップ」の代表格。力の抜けた歌声で、レトロでフォークな音を奏でる。

7 Gracie Abrams(グレイシー・エイブラムス)
感情移入しやすい歌詞と曲調で、ファンを獲得。

ダンス志向

8 Charli xcx(チャーリー xcx)
最高に"ワルイ"女
レイヴカルチャーに影響を受け、ハイパーポップを牽引。2024年に『BRAT』が一大ブームに。

9 Addison Rae(アディソン・レイ)
最新アルバム『Addison』が好評を博し、ラナ・デル・レイの前座も務めた。

10 Amaarae(アマレイ)
ガーナ系アメリカ人。アフロポップとR&Bを融合したダンスポップ。

11 Tinashe(ティナーシェ)
楽曲「Nasty」がバイラル・トレンドを記録。K-POPにも多大な影響を与える。

12 Pink Pantheress(ピンクパンサレス)
90年代UKガラージやハイパーポップを取り入れた、Y2Kらしいサウンドで音楽シーンを席巻。

13 HUNTR/X(ハントリックス)
映画『KPOPガールズ! デーモン・ハンターズ』(2025)の劇中歌が大ヒット。

14 KATSEYE(キャッツアイ)
アジア系やラテン系など多様なルーツのメンバー構成が特徴。

15 BLACKPINK(ブラックピンク)
「コーチェラ2023」にて、K-POP史上初のヘッドライナーを務め、破竹の人気は止まらない。ソロ活動も高評価。

16 Tate McRae(テイト・マクレー)
ダンサー兼シンガー。最近ではザラ・ラーソンとのツアー共演も話題に。

17 Tyla(タイラ)
南アフリカ出身。同地発祥のハウスミュージックジャンル「アマピアノ」を志向する音楽性。

R&B志向

18 Kali Uchis(カリ・ウチス)
コロンビア生まれ。ラテン音楽をベースにスペイン語曲も発表。

19 thuy(トゥイ)
ベトナム系アメリカ人。癖になるメロディと共感を集める歌詞が人気。

20 Sailorr(セイラー)
ベトナム系アメリカ人。名前の由来は船で渡米した移民の歴史から。

21 SZA(シザ)
多くの歌手をインスパイア
ジャンルにとらわれない音楽性と、物語性のある歌詞は唯一無二。ビヨンセからも称賛された。

22 Ravyn Lenae(レイヴン・レネー)
「Love Me Not」でブレイク。サブリナの前座も務めた。

ラップ志向

23 Young Miko(ヤング・ミコ)
プエルトリコ出身で、レズビアンを公言。クィアラテンポップを牽引。

24 Little Simz(リトル・シムズ)
心の傷や孤独、ジェンダーについてなど、内省的なテーマをラップで語る。

25 Doechii(ドーチー)
スキル勝負の新星
最新アルバムが大絶賛を受け、2025年米ビルボードの「ウーマン・オブ・ザ・イヤー」に選出。

26 Flo Milli(フロー・ミリ)
アラバマ出身。南部らしいヒップホップスタイルでファンを獲得。

27 GloRilla(グロリラ)
テネシー出身。「F.N.F. (Let's Go)」がバイラル・ヒットを記録。

28 Latto(ラトー)
アトランタ出身。BTSのジョングクと発表した「Seven」も話題に。

29 Sexyy Red(セクシー・レッド)
SNSでミームを生み出す、露骨にセクシーなリリックが武器。

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