Jun. K いえ、実は変わっていないんです。自分の音楽で最も重要な部分は、スタイルというよりは、「テーマをどのように込めるか」だと思っています。歌詞で表現しきれなければ、ビジュアルなどでも表現できるよう力を尽くします。今は音楽だけで説明しきれる時代ではないと思っていて。「人々の感情に訴えかける」ということをずっと考えていますね。
古家 なるほど。では新曲の「Command C+Me」は、どんな流れで制作したんですか?
Jun. K 今年の頭にこの曲が完成した際、僕は正直「難解な曲だな」と思いました。もちろん難解なものには解釈する楽しみも込められているので、必ずしも否定的な意味ではないんです。私たちが生きているこの世界には、多くの模倣や複製が存在しますよね。PC上では「command+C」で簡単にコピーできるけれど、安易に行うのは恐ろしいですよね。そんな今、社会に起きている現象を表現しました。それと英語の音をあてて「come and see me」として、「みんな、僕を見に来てくれるよね」と別の意味を持たせました。
Jun. K ライブができなくなって、アルバムも出せなくなり、曲を作るモチベーションを見出すことが難しかったですね。曲を作る仲間と直接会うことも難しかったですし。普段は1人でメロディと歌詞を書くので、1人で作業するのが気楽ではあるんです。でも編曲の方向性を決めるときは、対面で会うことでインスピレーションを得たり、エネルギーを受け取れたりしますから。ボイスメモを送って意見を交わすことはあっても、寂しい時間でした。
古家 最初から最後まで本当に見応えがありました。2PMをはじめ第2世代のアーティストの皆さんは、ものすごく努力をして日本で音楽活動を頑張ってきたから、これほどしっかりと人気が今に至るまで定着しているのだなと。そして11、12月には、大阪と横浜でソロライブ『Jun. K (From 2PM) BEST LIVE “3 NIGHTS”』を開催しましたね。セットリストを作るときは、何を一番に考えましたか?
Jun. K 実は決めるのにとても時間がかかったんです。自分で書いたメモをスタッフに渡したら、「これは脚本?」と言われて(笑)。照明の付くタイミングから登場の仕方まで、細かく構成を書き込んでいたんですよね。本当にいいものを作りたかったし、観てくださった方に「またJun. Kのコンサートを観たい」と絶対に思ってほしかったので、つい熱が入りました。僕はいつも、ただコンサートを観てもらいたいのではなく、お客さんと一緒にそのときのエモーションを感じたいんです。皆さんがライブで見ているのは、映像ではなく生身の人間。一緒に感じて呼吸することが何より大事です。
Jun. K 聴き込んでくださりありがたいですね。ちなみに、古家さんが一番好きな僕の曲は何か、聞いてもいいですか?
古家 アルバムでは『THIS IS NOT A SONG』が一番好きなんですが、曲は『LOVE & HATE』の収録曲「With You」。マーヴィン・ゲイ愛を感じます。そしてアルバム『LOVE LETTER』の表題曲も、スウィング・ジャズ感が気持ちいいですね。以前にインタビューで、幼いころに聴いたブラック・ミュージックからかなり音楽的に影響を受けたと話されていましたが、本当にR&B、ソウル、ジャズといったサウンドを愛しているんだなという印象を受けました。今でも僕は、「LOVE LETTER」を自分のラジオでよくかけているんですよ。
Jun. K 2PMでいうと、「ミダレテミナ」です。この曲は僕が作ったんですが、事務所のプロデューサーであるJ.Y. Parkさんの曲ではないものがタイトル曲になったのは、JYPの歴史上でこれが初めてだったんですよ。絶対無理だろうと思っていたんですが、選ばれて、本当にうれしくて。決まった日は、会社の屋上で母に電話しました。 僕は幼い頃から作曲をするなど音楽に関心を持っていましたが、家の中では反対もあって。そんな中、ずっと僕のことを信じてくれたのが母でした。
古家 お母様、喜んだでしょうね。
Jun. K 「本当におめでとう」と言ってくれました。ただただ感謝の気持ちが湧いてきて……その日のことは忘れられないですね。そして、ソロでターニングポイントになった曲は「NO LOVE」です。普通はマイクを隣に置いて作曲することが多いですが、この曲はマイクに向かって、跪いて作っていったんです。歌詞もない状態で、自分の内から溢れてくるものを表現したんですが、今でも当時の自分の熱情のようなものを時々思い返します。初心を思い出させてくれる曲ですね。
K-POPらしさとは曲の進行
古家 なるほど。ではJun. Kさんがリスナーとして聴いていて、気持ちが高まる曲はどんな曲ですか?
Jun. K 僕は80年代の日本のシティポップが大好きで、よく聴いているんですよ。メロディが本当にいい曲が多いです。あと、当時のミックスもすごく好きで。『THIS IS NOT A SONG』のアルバムではあの雰囲気を出したかったんですが、今の制作環境や機材は洗練されてしまっているから、あの雰囲気をどうやっても出せないんですよね。
Jun. K 僕が思うには、曲の進行が大きな要素だと思います。ジャンルはさまざまに融合しているので定義が難しいんですけど。K-POPはこれまで、バース、フック、プリコーラス……という型が主流でしたが、今はフックが大事で、バースがない場合もある。ポップスという大きな枠の中で、いろんな視点が生まれているように思いますね。
Jun. K メッセージの内容がどうというよりは、僕の中にテーマやアイデアが浮かんだときに、それをファンの皆さんや多くの方々と共有したいです。それが僕の夢であり、これからずっとやり続けていきたいことですね。音楽を作って世に出すまでの過程は、本当に大変です。大勢の人と意見を交わして、悩みながら作り上げていく。僕自身に自信も必要です。どうすれば人の心に残るものを作れるか。そんなことを最近はよく考えています。音楽を続けていくことは簡単でも当たり前でもありません。ひたすら悩み考え、アイデアを共有することによって、続けていくことができる。音楽にとどまらず、映像やバラエティなどあらゆる表現方法を考えて、どうしたら人々と共有できるかを常に模索していますね。
古家 ありがとうございます。最後に、ファンの皆さんへの思いを教えてください。
Jun. K 僕の本名はミンジュンですよね。でも僕は、Jun. Kというアーティストでもあります。先日ソロライブを行ったときに、その“アーティスト・Jun. K”を守ってくださったのが、ファンの皆さんだと実感しました。大阪の初日ではあまりのありがたさに、何度も熱いものが込み上げてきて、泣きそうになりましたね。僕が何年も日本に来られなかったのにもかかわらず、こんなに会場をいっぱいにしてくださる方々がいる。改めてこの方たちを幸せにしたいと思ったし、これからはファンの皆さんを僕が守っていきたいと思いました。より感動を届けられるような努力をしていきたいですね。