大阪中之島美術館で開催中の展覧会『VISIONARY JOURNEYS(ビジョナリー・ジャーニー)』展。ルイ・ヴィトンの歴史と旅の精神を体感できる注目の展示とレセプションに来場した豪華ゲストのスナップを届け。
2025年7月15日、大阪中之島美術館でルイ・ヴィトンの没入型エキシビション『ビジョナリー・ジャーニー』展が開幕した。大阪・関西万博、そしてメゾンの創業170周年を記念して開催される本展は、日本とルイ・ヴィトンの深い文化的な対話のもとに生まれたつながりにフォーカスし、12のテーマを通じてブランドの革新と伝統を探る、壮大な“旅”を体験することができる。ファッション史家のフロランス・ミュラーがキュレーションを務め、展示空間を手がけたのは建築家の重松象平。ブラックキューブ状の外観や開放感に溢れた内部構造を活かし、まるでメゾンの旅の軌跡をたどるように空間が構成されている。
トランクのインスタレーションから始まる旅

トランクのヘミスフィア(半球)。© Louis Vuitton
5階の展示会場へと向かう途中に出現するのは、「アトリウム」と呼ばれるインスタレーション。5階建ての吹き抜け空間を活かし、モノグラム柄の和紙で作られた8個の巨大なトランクタワーが、まるでランタンのように光を放ち、来場者を迎え入れる。これは、従来「積まれる」イメージだったトランクを「吊るす」ことで生まれた、世界初の試み。美術館の入り口から5階に向かう導線上にある長いエスカレーターの上下動のなかで自然と鑑賞できる構成になっている。その先には、エキシビション会場へのゲートとなる138個のトランクで構成された「ヘミスフィア(半球)」が登場。この2つの演出は、“トランクスケープ”というコンセプトに基づいた重松象平の象徴的なインスタレーションであり、「トランクはルイ・ヴィトンのアイデンティティの根幹であり、イノベーションが詰まった存在。それを単なる展示物としてではなく、構造物として空間を形づくるインスタレーションとしてもご覧いただきたい」と語っている。
ルイ・ヴィトンの歴史、そして日本との深い文化的交流

© Louis Vuitton
「アトリウム」に続く展示は「アニエール」「原点」「冒険」「素材」「アトリエ」など12のテーマで構成。イノベーション、サヴォアフェール(匠の技)、グローバルな取り組みを通して、メゾンの進化を多角的に見つめなおす構成となっている。
展覧会キュレーター、フロランス・ミュラーは次のように語る。
「12のテーマ、そして10の独立した部屋で構成された本展覧会における共通テーマは“日本とルイ・ヴィトンとの深い関係性”です。19世紀から続くその関係の軌跡をお伝えするために、膨大な研究資料とアーカイブを調査し、1000点以上の作品を収集して、本展を創り上げました。展示作品は非常に多くありますが、それらを通じて、ルイ・ヴィトンが伝えたいストーリー、そして日本との相思相愛の関係を改めてご認識いただけることと思います」。
なかでも特筆すべきは、日本との長きにわたる文化的交流を紹介する「ルイ・ヴィトンと日本」の展示。村上隆、草間彌生、川久保玲、NIGO®といった世界的アーティストとのコラボレーションや、茶道文化から着想を得たトランク、十三代目市川團十郎白猿のために製作された鏡台用トランクなど、日本の伝統と現代が交錯する。
世界初公開となる資料やアーカイブにも注目したい。1874年にルイ・ヴィトンのトランクを購入した、日本人として初の顧客とされる人物である鮫島尚信氏の肖像画に加え、購入時の記録が残る顧客リストも併せて公開されている。
「モノグラム・キャンバス」にフォーカスした展示では、モノグラム・パターンが初めて考案された1897年当時のサンプルが、パリの公文書館から取り寄せられ、本展のために初めて開封・展示されるという歴史的快挙も実現した。
Number_i 平野紫耀がオーダーした特注トランクを公開
もうひとつのハイライトは、アーティストでありルイ・ヴィトンのアンバサダーである平野紫耀がスペシャルオーダーした「ツールボックス・トランク」。彼自身の趣味であるバイク、そしてアーティストとしてのライフスタイルを反映したこの一点もののトランクは、Number_iの世界ツアーに同行することを想定して制作された特注品だ。ブラックのコーティッド・キャンバスに、ゴールドカラーの金属パーツ、そしてNumber_iのロゴをあしらったメタルプレートを配した外観。バイクの工具箱を模した構造は、彼の愛するものとルイ・ヴィトンの旅の精神が交差するデザインとなっている。
職人たちの技術と情熱に光を当てる「アトリエ」に展示されているのは、フランス・アニエールにあるアトリエのアーカイヴ映像や、職人たちの舞台裏に迫るコンテンツ。細部に宿る精密さと、ものづくりにかける情熱を体感できる空間構成となっている。
展示作品と空間が一体化する壮大なインスタレーション体験

© Louis Vuitton
バンコクや上海での開催実績がある『ビジョナリー・ジャーニー』展が、日本の現代美術館で開催されるのは今回が初めてのこと。空間そのものが展示の一部となり、竹やアクリル、畳のようなデザインなど、多様な素材や設計によって空間と一体となって旅するような演出が全編にわたって展開されている。“メゾンの真髄”を垣間見る旅へぜひ足を運んで。