パラクライミング/會田 祥さん、田中星司さん(サイトガイド)【パラアスリートが見つめる未来 vol.12】

自分のクライミングを突き詰めて、見えない壁に挑む

SPUR3月号 會田 祥

2028年ロサンゼルス パラリンピックの新競技に採用されたパラクライミング。會田祥さんは、視覚障がいB1(全盲)クラスで活躍する。ルールは基本的に健常者と変わらない中、視覚情報を得られない状況で高みを目指し、パラクライミング界で存在感を発揮している。

「9歳の頃、パラクライミングに出合い、登る過程が楽しくて徐々にのめり込んでいきました。競技の面白さは、異なる障がいのある選手たちが同じ課題に挑むところ。視覚障がいや四肢欠損、筋力障がいなどさまざまな特性を持つ選手が活躍しています。各選手が自分の限界に挑戦し、試行錯誤しながら登っていく姿は見ごたえがあると思います。ただ、パラリンピックの競技に採用されてうれしい半面、これからわかるクラス分けで自分の障がいに該当するクラスがあるのか少し気にはなっていますね」

視覚障がいのあるクライマーが見えない壁に挑むためには、サイトガイドというホールドの位置や形状を言葉で伝える役割が欠かせない。選手の目となり、二人三脚で競技に臨むポジションだ。田中星司さんは、2022年頃から會田さんのサイトガイドを務めている。

「これまでは固定でお願いしている人はおらず、次の方を探していたタイミングで、ほかの日本人選手のサイドガイドをしていた田中さんと知り合いました。もちろん登るのは僕ですが、前提には田中さんがルートを理解していることが重要になってきます。僕がどういう動きをしたいのか、どこに手を、足を置きたいのか、あるいはもっと別の声かけが必要なのか、などをくみ取りつつ、臨機応変にガイドをしてくれます。常に僕の気持ちを考えながら、どんなアシストを必要としているのか、見極めてくれるんです。田中さんのガイドは『右手、○時に、それ』と言ったように言葉数が少ないですが、僕の理想は自己完結するクライミングなので、それくらいが自分に一番合っていると思っています。田中さんとはいい距離感を大切にするために、普段は一緒に練習はしていませんが、サイトガイドとして全幅の信頼を置いています」

SPUR3月号 會田 祥

サイトガイドの田中さんの声を頼りに、すいすいと的確に登っていく會田さんの姿には、思わず引き込まれる。

「クライミング自体も上手くなるのに年単位のスパンが必要だと思っていますが、パラアスリートは、健常者よりも上達にもっと時間がかかります。同じような種類の障がいや、程度が同じ障がいの人が少ないため、ノウハウ自体もほとんどありません。そんな中で、上達しているという実感がなくても、めげずに15年間続けてきました。これからも順位だけにとらわれず、自分のクライミングを突き詰めて登っていきたいです」

會田 祥プロフィール画像
會田 祥

あいた しょう●1996年8月14日、山梨県生まれ。2歳で先天性レーベル黒内障と診断。徐々に症状が進行し、17歳で視力を失う。過去6回出場した世界選手権ではすべて金メダルに輝く。現在は、三井住友海上あいおい生命保険(株)に所属。

田中星司プロフィール画像
田中星司

たなか せいじ●1978年9月13日、千葉県生まれ。28歳のときにクライミングを始める。2022年頃から會田選手のサイトガイドを務める。専門ジムでの勤務経験を通じて、現在はスクール「アストラ★クライミング」を運営する。

會田さんを読み解く3つのS

Society

現在所属している会社はアスリート雇用で採用してもらっていますし、僕の友人も大体クライマーです。それもこれもクライミングと出合わないと始まらなかったことなんだな、と実感しています。振り返ってみると不思議に感じますが、この競技を通して、いろんな世界を感じられればいいなと思っています。

Sleep

約2年前から寝るときはMediXというブランドのリカバリーTシャツを着用しています。初めて着たときにいつもよりも寝起きがよくて、スッキリしている感覚がありました。それからは遠征にも持参するように。寝つきは悪くありませんでしたが、さらにぐっすりと眠れるようになり、効率的に疲労回復できていると感じます。

Smile

壁をクリアできたときの達成感はひとしお。昨年の12月に行ったタイ遠征はかなり充実していました。2週間の滞在期間中は時間がある限り壁と向き合い、ひたすら登りました。クリアできなかった壁も多く、タイでも課題が残りました。まだまだ登ってみたい壁が世界中にあります。タイ料理は自分好みでおいしかったですね!

 

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