頭ひとつ抜けている、 圧倒的な選手を目指す! パラバドミントン/里見紗李奈さん【パラアスリートが見つめる未来 vol.17】

パラバドミントン/里見紗李奈さん

SPUR8月号 里見紗李奈 パラバドミントン

東京2020パラリンピックより、正式種目に採用されたバドミントン。里見紗李奈さんは、2024年のパリ大会で女子シングルス(WH1)に出場し、東京大会に続く連覇を達成した。

「パラリンピックで2連覇したときは、まずほっとしました。東京大会が終わってからの3年間、ほかの国際大会に出て、勝つことを目標にしていましたが、やっぱりパラリンピックは私にとって特別な大一番でした」

4年に一度のスポーツの祭典で2連覇を目指すことへのプレッシャーと覚悟は相当なものだろう。

「初出場したときは、パラリンピック自体がどんなものなのかわかっておらず、とにかく対峙する相手に勝ち続けていった結果、優勝できました。次の大会では、どうすれば大切な日にピークを持っていけるのか、心身ともに厳しい練習合宿をどう乗り切るかなど、常に金メダルを意識していました。絶対に負けたくないなって。周りからのプレッシャーもいい刺激になり、なんとか乗り切りました」

そんな彼女に、大会後プレッシャーから解放されてからしたことを尋ねると、「練習」と回答。

「連覇してから、より、頭ひとつ抜けている、圧倒的な試合をしたいと強く思うように。そのためにもパリから帰って、すぐに練習を再開しました。今はしっかりと時間を確保できる期間なので、フィジカルから技術まですべてのレベルアップを図っています」

SPUR8月号 里見紗李奈 パラバドミントン

@2025JPBF

これまでの競技生活を振り返り、「健常者のときからは想像できないところにいる。今やっと競技者としても自信がついてきた」と語った里見さん。

「2016年に交通事故に遭ってから、車いす姿を知り合いに見られるのが嫌で、引きこもっていた時期もありました。そんなときに父が勧めてくれたのが、パラバドミントン。そこで障がいのある方々の話を聞くことができ、一人暮らしをしたり、自立してたくましく生きる姿を知って、感化されました。どこかで私はもう一人では生きていけないんだろうなと思っていたので。周りの方々や両親、素敵な環境にすごく救われていますし、感謝しています」

現在、パラリンピック3連覇への挑戦権を手に日々前進中だ。

「幸せで特別な目標だと思っています。世界ランキング1位になってから、次の目標がわからなくなりそうなときも正直ありましたが、今は昨日よりも強くなったらいいなという気持ちで頑張っています。私、かなりの負けず嫌いなので(笑)。やるかやらないかは自分次第という環境の中で、自らを追い込んでいます。少しずつ変わっていく手ごたえを感じながら、充実した毎日を過ごしています」

里見紗李奈プロフィール画像
里見紗李奈

さとみ さりな●1998年4月9日、千葉県生まれ。高校3年生のときに交通事故に遭ったことで、車いすでの生活に。2017年から本格的にパラバドミントンを始める。中学校でバドミントン部に所属していた経験からすぐに頭角を現し、国際大会での上位入賞を果たす。'19年の世界選手権では、競技を始めてから2年余りでシングルスの金メダルを獲得。'24年のパリパラリンピックではシングルス2連覇、ダブルスで銀メダルに輝いた。NTT都市開発所属。

里見さんを読み解く3つのS

Smile

家族以上に多くの時間を共にする強化指定選手のみんな。日頃から仲がよく、一緒に練習し、切磋琢磨できる関係です。ここまで楽しく続けられているのは、周囲の人や環境があってこそ。休日は飼い犬と過ごし、競技以外のことを考えてリフレッシュしています。

Sleep

睡眠の質に影響する寝具にはこだわっていて、エアウィーヴのマットレスやリカバリー対応のベッドカバーを使っています。リカバリーウェアを着るよりも、手軽に取り入れやすいので(笑)。あとは湯船に浸かり血行をよくして、疲れをとるようにしています。

Society

車いすユーザーになって、初めて知る世界がたくさんありました。意外と車いすでもできることが多いな、という発見もありましたが、子どもが「お手伝いできることは……」と声をかけてくれたときは、その気持ちがうれしいので断らずにお願いするようにしています。

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