韓国の音楽というとK-POPが注目されがちだが、今盛り上がっているのがロック音楽、バンド音楽のシーン。その中心となっているチームや気になるアーティストを深掘りしてみよう。ブームを実感するスポットもご紹介。
韓国の音楽というとK-POPが注目されがちだが、今盛り上がっているのがロック音楽、バンド音楽のシーン。その中心となっているチームや気になるアーティストを深掘りしてみよう。ブームを実感するスポットもご紹介。

内畑美里さん
韓国インディーズ音楽を中心に、イベントや、日韓両国アーティストの訪韓・来日公演のコーディネート、歌詞の翻訳などを手がけている。
山本大地さん
ソウル在住の音楽ライター。K-POPにとどまらない韓国音楽の魅力を伝える。YouTube「山本大地の韓国音楽レポート」もスタート。
アイコンとなるバンド、Silica Gel
——韓国の今のバンドブームを、ずっとシーンを追っている二人はどう見ていますか?
山本 私の周りでも、バンドやロック音楽を積極的に聴いていなかった人が聴き始めている実感があります。以前は若い人たちの間ではヒップホップやR&Bがヒップな音楽のイメージでしたが、今ではバンド音楽がカッコいい、あるいはそれを聴いている自分がイケてる、みたいな。また、一昨年くらいからアイドルバンドのDAY6や、SNSのインフルエンサーなどを集めた企画バンドのQWERがチャートでヒットしています。
内畑 ただ、もともとバンド自体が少なかったのかというと、そうではない。ホンデのような昔からライブハウスが密集するエリアもあります。大きかったのは、Silica Gelのメンバーが軍隊に入って一時休止したのち、2020年にカムバックしたこと。そこからのリスナーの反応のよさが全然違っていた。復帰後は、音楽性、歌詞、トータルなアプローチに以前よりもポップさが加わって。韓国には「ホンデ病」っていうワードがあるんです。自分だけがマニアックな音楽を知っていると錯覚して陶酔している、という意味。彼らはまさにそういった存在で、この現象の中心にいる。
山本 Silica Gelは今のアイコンですね。魅力としてはエレクトロニックやフォークなどいろんな要素が自然に混ざっていて、彼らにしかないサウンドを作っている。それと普段からMVや衣装へのこだわりが強くて、自分たちと感覚がマッチする人と一緒にやっている。たとえばMELTMIRRORという映像監督は彼らの友達で、初期の頃から一緒にビデオを作ってるんです。彼は去年、aespaの「Whiplash」のビデオも手がけています。
内畑 ファッションは、最新アルバムではHALOMINIUMというブランドが手がけました。性別にとらわれない、みんなが着られるモードな服を着用することが多く、メンバーがスカートをスタイリングしていたり。アイドルでもジェンダー規範について考えている人たちはいますが、外見はどうしても男性性、女性性の美しさにとらわれてしまうことがまだ多い。そのなかでSilica Gelはそうじゃない選択肢を自分たちにも、ファンにも与えています。
——ほかにシーンを支えてきたバンドは?
山本 wave to earthも代表的。
内畑 2回目の来日を果たしましたし、韓国外のファン、欧米のリスナーも多い。
山本 世界的に人気で、Spotifyのマンスリーリスナーが900万人近くいるんです。NERD CONNECTIONも人気があります。両者ともに、ここ数年本格的にブレイクしたまさに新世代です。
内畑 The Black Skirtsはどうですか?
山本 このブーム以前からアイコニックだったバンドという意味では、The Black SkirtsとJannabiが代表的かなと思います。あとHYUKOHは日本でも有名ですよね。
内畑 それから、SE SO NEONも。HYUKOHがブームになったときもSilica Gelと同じで、若い人たちが歌詞とサウンドに共感、共鳴した。するとその後彼らに影響を受けたバンドが出てきたんです。今回も、アイコンが現れたときに似たサウンドが続く現象を感じていて。Silica Gelのムードを踏襲する流れが、シーンに広がっている実感がありますね。
——では、個人的に好きなバンド、これから注目のアーティストは?
内畑 バンドでカッコいいと思うのはsailor honeymoonですね。DIY・パンクロックという感じで、個人的に「新生コリアン・ライオットガール」と呼んでいます(笑)。「PMS Police」という生理を理解できない彼にイライラする曲があったり、歌詞のストレートさと、ファニーだけどパワフルな感じも好き。
山本 僕はシンガー・ソングライターからフォークとロック、二つの顔を持つJungwooやMeaningful Stone。そして、まだ20代前半のHANROROをおすすめしたいです。特にHANROROは歌唱力があって、歌詞もいい。自分の世代のことをよく考えていて。なかなか希望が持ちづらいと思うんですが、そんな同世代の置かれている状況を文学的な言葉で表現している。才能が認められて、少女時代のテヨンや、TOMORROW X TOGETHERの楽曲も手がけています。
内畑 韓国のインディーズ音楽ってほかのジャンルとのコラボレーションが盛んなのも特徴ですよね。私は普段電子音楽にも注目していますが、Silica Gelのメンバーと共同制作したHWIや、aespaのリミックスに参加したMount XLRなどのアーティストが、今年の韓国大衆音楽賞にエントリーされていました。電子音楽はまだマイナーなものの、音楽家が協力してシーンを盛り上げてきたことや、K-POPに楽曲提供した実績が評価されているフレッシュで面白いジャンルだと思います。
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