韓国バンドカルチャーが今、面白い! Kミュージックを牽引する存在について語り尽くす

韓国の音楽というとK-POPが注目されがちだが、今盛り上がっているのがロック音楽、バンド音楽のシーン。その中心となっているチームや気になるアーティストを深掘りしてみよう。ブームを実感するスポットもご紹介。

韓国の音楽というとK-POPが注目されがちだが、今盛り上がっているのがロック音楽、バンド音楽のシーン。その中心となっているチームや気になるアーティストを深掘りしてみよう。ブームを実感するスポットもご紹介。

韓国バンドカルチャーが今、面白い! Kミの画像_1

内畑美里さん
韓国インディーズ音楽を中心に、イベントや、日韓両国アーティストの訪韓・来日公演のコーディネート、歌詞の翻訳などを手がけている。

山本大地さん
ソウル在住の音楽ライター。K-POPにとどまらない韓国音楽の魅力を伝える。YouTube「山本大地の韓国音楽レポート」もスタート。

アイコンとなるバンド、Silica Gel

——韓国の今のバンドブームを、ずっとシーンを追っている二人はどう見ていますか?

山本 私の周りでも、バンドやロック音楽を積極的に聴いていなかった人が聴き始めている実感があります。以前は若い人たちの間ではヒップホップやR&Bがヒップな音楽のイメージでしたが、今ではバンド音楽がカッコいい、あるいはそれを聴いている自分がイケてる、みたいな。また、一昨年くらいからアイドルバンドのDAY6や、SNSのインフルエンサーなどを集めた企画バンドのQWERがチャートでヒットしています。

DAY6

DAY6

JYPエンターテインメント初のボーイズバンドとして、2015年にデビュー。観客を熱狂させるアイドル性と、バンド音楽ならではのダイナミズムを併せ持ち、日本でも強い人気を誇っている。

内畑 ただ、もともとバンド自体が少なかったのかというと、そうではない。ホンデのような昔からライブハウスが密集するエリアもあります。大きかったのは、Silica Gelのメンバーが軍隊に入って一時休止したのち、2020年にカムバックしたこと。そこからのリスナーの反応のよさが全然違っていた。復帰後は、音楽性、歌詞、トータルなアプローチに以前よりもポップさが加わって。韓国には「ホンデ病」っていうワードがあるんです。自分だけがマニアックな音楽を知っていると錯覚して陶酔している、という意味。彼らはまさにそういった存在で、この現象の中心にいる。

Silica Gel

Silica Gel
(右)『POWER ANDRE 99』 ¥4,950/MAGIC STRAWBERRY SOUND

ロック、電子音楽、クラシック、フォークと、多様なジャンルをミックスし、唯一無二の世界観を生み出す。最新アルバムは、機械的な音を突き詰めた彼らの完成形とも言うべき作品。

山本 Silica Gelは今のアイコンですね。魅力としてはエレクトロニックやフォークなどいろんな要素が自然に混ざっていて、彼らにしかないサウンドを作っている。それと普段からMVや衣装へのこだわりが強くて、自分たちと感覚がマッチする人と一緒にやっている。たとえばMELTMIRRORという映像監督は彼らの友達で、初期の頃から一緒にビデオを作ってるんです。彼は去年、aespaの「Whiplash」のビデオも手がけています。

内畑 ファッションは、最新アルバムではHALOMINIUMというブランドが手がけました。性別にとらわれない、みんなが着られるモードな服を着用することが多く、メンバーがスカートをスタイリングしていたり。アイドルでもジェンダー規範について考えている人たちはいますが、外見はどうしても男性性、女性性の美しさにとらわれてしまうことがまだ多い。そのなかでSilica Gelはそうじゃない選択肢を自分たちにも、ファンにも与えています。

——ほかにシーンを支えてきたバンドは?

山本 wave to earthも代表的。
内畑 2回目の来日を果たしましたし、韓国外のファン、欧米のリスナーも多い。

wave to earth

wave to earth
(右)『play with earth! 0.03』 配信中/WAVY

リラクシングで甘いムードの中に、ジャズの即興要素が垣間見える音楽性。インターネット上で国外から人気に火がつき、今ではワールドワイドに活躍をしている。

山本 世界的に人気で、Spotifyのマンスリーリスナーが900万人近くいるんです。NERD CONNECTIONも人気があります。両者ともに、ここ数年本格的にブレイクしたまさに新世代です。

NERD CONNECTION

NERD  CONNECTION
(左)『And yet, We still』 配信中/YOUR SUMMER

1990〜2000年代のUKロックの影響を強く受けた音作り。叙情的なバラードが支持を集め、ヒットチャート入りした楽曲も。ドラマのOSTも数多く手がける。

内畑 The Black Skirtsはどうですか?

山本 このブーム以前からアイコニックだったバンドという意味では、The Black SkirtsとJannabiが代表的かなと思います。あとHYUKOHは日本でも有名ですよね。

内畑 それから、SE SO NEONも。HYUKOHがブームになったときもSilica Gelと同じで、若い人たちが歌詞とサウンドに共感、共鳴した。するとその後彼らに影響を受けたバンドが出てきたんです。今回も、アイコンが現れたときに似たサウンドが続く現象を感じていて。Silica Gelのムードを踏襲する流れが、シーンに広がっている実感がありますね。

HYUKOH

HYUKOH
(右)『AAA』 配信中/DOOROODOOROO ARTIST COMPANY, Sunset Music Productions Co., Ltd.

最近では台北発のバンド、サンセットローラーコースターとともにチーム「AAA」を始動しアルバムをリリース。ロマンティックなサウンドにグルーヴ感が融合した、エキゾチックな世界。

——では、個人的に好きなバンド、これから注目のアーティストは?

内畑 バンドでカッコいいと思うのはsailor honeymoonですね。DIY・パンクロックという感じで、個人的に「新生コリアン・ライオットガール」と呼んでいます(笑)。「PMS Police」という生理を理解できない彼にイライラする曲があったり、歌詞のストレートさと、ファニーだけどパワフルな感じも好き。

sailor honeymoon

sailor honeymoon

ドラム兼ボーカルのアビは、フォトグラファーとしても活動。ギターのジェウンは他バンドにも参加など、活躍の幅が広い二人。歌詞のストレートさが唯一無二の魅力。

山本 僕はシンガー・ソングライターからフォークとロック、二つの顔を持つJungwooやMeaningful Stone。そして、まだ20代前半のHANROROをおすすめしたいです。特にHANROROは歌唱力があって、歌詞もいい。自分の世代のことをよく考えていて。なかなか希望が持ちづらいと思うんですが、そんな同世代の置かれている状況を文学的な言葉で表現している。才能が認められて、少女時代のテヨンや、TOMORROW X TOGETHERの楽曲も手がけています。

HANRORO

HANRORO
(右)『HOME』 配信中/KAKAO ENTERTAINMENT

歌唱力に定評あり。時代のムードを反映したストレートに心に刺さる歌詞も人気。新アルバムでは、キャッチーな旋律でポップロックを奏でる。

内畑 韓国のインディーズ音楽ってほかのジャンルとのコラボレーションが盛んなのも特徴ですよね。私は普段電子音楽にも注目していますが、Silica Gelのメンバーと共同制作したHWIや、aespaのリミックスに参加したMount XLRなどのアーティストが、今年の韓国大衆音楽賞にエントリーされていました。電子音楽はまだマイナーなものの、音楽家が協力してシーンを盛り上げてきたことや、K-POPに楽曲提供した実績が評価されているフレッシュで面白いジャンルだと思います。

HWI

HWI
(左)『humanly possible』 配信中/Sound Supply_Service

업체eobchaeという現代美術家グループに属し、映像作家だった経歴を持つ彼女。電子音楽をベースにした、浮遊感のある近未来的なサウンドが持ち味だ。

Mount XLR

Mount XLR

韓国大衆音楽賞を受賞。イギリスの名門音楽大学出身で、インテリジェントな音作りが特徴。IDMやUKガレージなどニッチジャンルを極め、前衛音楽シーンを牽引している。

山本 そうですね。バンド音楽に関連したジャンルにも興味を持ってもらえると、どんどん新しい世界が広がっていくと思います!

【おすすめアドレス】ソウルのミュージックシーンの“今”をリアルに体感できる場所を、二人がナビゲート!

コスムドチ ティラミス /고슴도치 티라미수

コスムドチ ティラミス /고슴도치 티라미수

「インディーズレーベルを立ち上げて、音楽シーンを盛り上げた方がオーナー。ティラミスが看板メニューのカフェですが、セッションライブをするスペースも。オルタナティブなスペースとして愛されています」(内畑さん)

goseumdochi tiramisu

서울특별시 마포구 희우정로5길 29
29, Huiujeong-ro 5-gil, Mapo-gu
電話番号:0507-1351-1135
最寄駅:2・6号線合井駅
営業:10時〜19時 休:月曜
Instagram:@goseumdochi.tiramisu

チャンネル1969 /채널1969

チャンネル1969 /채널1969

「ロックからジャズ、フォーク、アンダーグラウンドまで、幅広いジャンルのライブを開催。ソウルのミュージックラバーには広く知れ渡っているスポットです。スタッフも優しく気軽に入れるので、旅行中に新しい音楽と出合うのにもぴったりな場所」(山本さん)

channel 1969

서울특별시 마포구 연로로 35, 지하 1층
B1, 35 Yeonhye-ro, Mapo-gu
電話番号:0507−1335−1969
最寄駅:2号線、京義・中央線、空港鉄道弘大入口駅
営業:20時〜24時(水・木)、20時〜翌2時(金・土)、17時〜24時(日) 休:月・火曜
Instagram:@channel1969.seoul

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