【釜山国際映画祭2025】現地レポート! 開幕作品『どうしようもない』イ・ビョンホンの圧巻の説得力とソン・イェジンの表情演技に注目!

9月17日からスタートした釜山国際映画祭。今年は30年目を迎えたアニバーサルイヤーということもあって、例年以上に豪華絢爛のプログラムが続々とラインナップ。SPUR連載「ドラマLOVERS倶楽部」班を代表して“さすらいのライター山崎”が初めての釜山へGO!  参加したのは19日までのわずか3日間ではありましたが、開幕作品『どうしようもない』のイ・ビョンホン、ソン・イェジンから「カルトブラッシュ」というコンテンツに登場したカン・ドンウォン、日本からは『8番出口』二宮和也に『イクサガミ』の岡田准一、『愚か者の身分』の林裕太などをはじめ、それはもう、韓国の日本のアジアの、いやいや世界のトップ俳優たちの怒涛のラッシュです。そう、まるで、スターオーラのシャワーを浴びるが如し。そんな至福の釜山を熱くレポートします!

9月17日からスタートした釜山国際映画祭。今年は30年目を迎えたアニバーサルイヤーということもあって、例年以上に豪華絢爛のプログラムが続々とラインナップ。SPUR連載「ドラマLOVERS倶楽部」班を代表して“さすらいのライター山崎”が初めての釜山へGO!  参加したのは19日までのわずか3日間ではありましたが、開幕作品『どうしようもない』のイ・ビョンホン、ソン・イェジンから「カルトブラッシュ」というコンテンツに登場したカン・ドンウォン、日本からは『8番出口』二宮和也に『イクサガミ』の岡田准一、『愚か者の身分』の林裕太などをはじめ、それはもう、韓国の日本のアジアの、いやいや世界のトップ俳優たちの怒涛のラッシュです。そう、まるで、スターオーラのシャワーを浴びるが如し。そんな至福の釜山を熱くレポートします!

上映作品は過去最多の241作品! 観客とキャッチボールの俳優トークが目白押し

BIFF2025 釜山国際映画祭

釜山国際映画祭2025のメイン会場となる「映画の殿堂」野外ステージにて。photo:Getty Images

釜山国際映画祭のメイン会場となる「映画の殿堂」は、古くからの繁華街、南浦洞(ナンポドン)の釜山駅から地下鉄2号線で人気のリゾート地、海雲台(ヘウンデ)に向かう途中のセンタムシティ駅にあります。その駅を降り立って一歩街に足を踏み入れてみれば、そこはもはやお祭りムード。韓国だけでなく世界各国から集った映画ファンたちで熱気がムンムン溢れていると言いましょうか。

そんな現地では「映画の殿堂」を中心にロッテ百貨店内や新世界百貨店内など街中に点在する数々の映画館で過去最多の241作品が上映される上、作品の上映後には監督や出演俳優たちの舞台挨拶まで。

ミラ・ジョヴォヴィッチ BIFF2025 釜山国際映画祭

ミラ・ジョヴォヴィッチ出演作「プロテクター」も上映。こちらは野外ステージでのオープントーク風景。 photo:Getty Images

そのほかにも著名な映画監督や制作スタッフ陣が映画制作のノウハウなどを直接指導してくれる「マスタークラス」や、観客とのキャッチボールで俳優がじっくり1時間トークしてくれる「アクターズハウス」、野外ステージで行われる監督や俳優たちの「オープントーク」、並びに夜間の野外上映(ちなみに渡辺謙・坂口健太郎主演の『盤上の向日葵』も上映されました)、俳優や監督などが推す過去の傑作を上映する「カルトブラッシュ」などなど、それはそれは盛りだくさん。しかも、連日それらが同時並行していろんな会場で行われるわけで、だから、どの上映? どの舞台挨拶? どのトーク? どのプログラム?と、めちゃくちゃ悩みに悩む贅沢さなのでございます(ちなみに全てのプログラムはチケットを購入すれば誰でも観られます。人気作や人気コンテンツは当然ながら激しい争奪戦覚悟の上ですが…)。

開幕作品パク・チャヌク監督の『どうしようもない』 劇場中が、ブラックな笑いで満たされるさすがの傑作

イ・ビョンホン 映画『どうしようもない』 釜山国際映画祭

映画祭2日目。「映画の殿堂」野外ステーで行われたオープントーク。監督パク・チャヌク、主演のイ・ビョンホン&ソン・イェジン、パク・ヒスン、ヨム・ヘラン、イ・ソンミンが登壇。photo:Getty Images

そんな中、やっぱり外せないのは今年の開幕作品、巨匠パク・チャヌク監督の『どうしようもない』 。ということで、早速、上映劇場へ。

主演は圧倒的存在感を放つイ・ビョンホンと、ヒョンビンとの世紀の結婚から3年、この作品で俳優復帰となったソン・イェジンという垂涎の組み合わせ。しかもパク・ヒスン、イ・ソンミン、ヨム・ヘラン、チャ・スンウォンと脇役陣もトップ俳優を揃える豪華な面々。

これだけでも興味津々ではありますが、物語はというと、イ・ビョンホン演じる製紙一筋に25年、ひたすら専門職として働き続けてきたベテラン会社員のマンスが突然リストラされるところからスタート。大きな庭付き家に美しい妻ミリ(ソン・イェジン)、二人の子供に二匹の愛犬たちまで。その生活を死守するために、マンスは再就職を誓うのですが、1年以上も就職できない日々が続いて、挙句に家まで失いかけるハメに。最後の願いをかけて臨んだ就職先には、自分よりも優秀と思われる二人(イ・ソンミン&チャ・スンウォン)が。このままでは、家も家族の幸せも全てがなくなってしまう!!と追い込まれに追い込まれたマンス。そんな彼が選んだのは…。

イ・ビョンホンの圧巻の説得力と実生活の結婚と出産の経験が生きたソン・イェジンの表情演技に注目!

イ・ビョンホン 映画『どうしようもない』 釜山国際映画祭

映画『どうしようもない』のリストラされる主人公マンスを演じたイ・ビョンホン。photo:Getty Images

ということで、これがやっぱり圧巻の面白さ。原作はドナルド・ウェストレイクの小説「斧」なのですが、パク・チャヌク監督は20年前からこの作品の映画化を計画していたのだそう。「長い間かかって、韓国で初めて披露することができ、今、感無量です」と監督。欧米ではすでに絶賛の嵐なのですが、さすが、パク・チャヌク監督です。独特の陰影の深い芸術性高い映像と、絶妙のタイミングでのカットアウトで綴られる思わず吹き出さずにはいられないほど彼特有のブラックコメディ。上映中は、クスクスの忍び笑いから大爆笑までそこかしこに満ち満ちていたわけですが、いわゆる普通の人であるマンスの極端な選択とその心の内の葛藤は、人ごとではなく、笑いながらもなんだかとっても身に染みると言いましょうか。

「私が演じたマンスは、個性が強いキャラクターではなく、すごく平凡な人物。平凡だけど突如としてものすごくドラマチックな状況に直面するようになり、その状況を乗り越えるために極端な選択をするわけですが、その状況を平凡な男がどのように受け入れ、その時々にどんな感情をもっていたのか、ということにとにかく集中して演じました。どうやったら説得力のあるマンスを演じられるのか。そのことが撮影中ずっと悩んでいた宿題だったと思います」とイ・ビョンホン。表情や行動だけでなく、流れる一筋の汗にさえ深い説得力があるのはやっぱり彼ならではと感嘆。

ソン・イェジン

「どうしようもない」の主人公マンスの妻ミリ役を演じたソン・イェジン。photo:Getty Images

その妻ミリ役を演じたソン・イェジンは「ミリはある意味映画の中で、最も現実的なキャラクターだと思っています。その現実的なミリがどんどん劇的な状況に追い込まれていく。本当の母親のように妻のように現実的な普通のオンマを維持しながら、この作品のある種特殊な“色”とどうすれば調和させることができるのか。多くの悲劇的な状況が襲いかかってくる過程を、彼女はどう見守っていくのか、どう難局を突破していくのか、ミリが想像以上に楽天的で賢い故の現実的な人物であるという点に集中しながら演技をしました。とはいえ、現実的な姿を演じるために事前に準備したとしても、それが現場で自然に出てくるわけではないですよね。幸いにも私が結婚し、子供を産んだ経験があったのもよかったのではないかと思います」。彼女が映画のラストに見せる、マンスの全ての状況を感じ取った時のなんともいえない複雑な表情は必見です。

「マンスは紙を作ることに人生をかけている。でも、私自身は紙を作ることになんの重要性も感じませんが、これを私にとっての映画に置き換えてみると、すぐに理解できました。映画が現実社会の助けになるわけでもなく、ただ2時間の娯楽にすぎない。なのに、自分は持てるもの全てを注ぎ込んで、人生をかけているではないか。そういう意味では、マンスの心の内はある意味、人生をかけて働くどんな職業人にも通じるところ。だからこそ、多くの人の共感を得られるのでは」と監督。日本公開の際はお見逃しなく。

ちなみに、今、大人気のバイプレイヤー、ヨム・ヘランはイ・ソンミンの妻役で登場。かなり過激なセクシーシーンもあったりするのですが、「これまでやったことのない新しいキャラクターの顔を見つけるのが大変でしたし、すごく面白かった。監督に学びながら、私の領域がすごく敏感に豊かになるとても良い経験でした」とのこと。観客からの質問が俳優陣の中で一番多かったのもヨム・ヘラン。新しい彼女の顔もぜひ、楽しみに。

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