アニー・リーボヴィッツの仕事を観よ。現代の女性を視よ。#03

バレエダンサー、ミスティ・コープランド ニューヨーク市、2015年 Misty Copeland, New York City, 2015 © Annie Leibovitz. From WOMEN: New Portraits, Exclusive Commissioning Partner UBS

「人物をとらえられるとは思っていないの。
確かにそれが仕事だけれど人物をとらえるなんてしょせんムリよ。
人生はこんな一次元的な瞬間よりも複雑で大きいの」
[ドキュメンタリー映画『アニー・リーボヴィッツ レンズの向こうの人生』(2007年)より]

そう語りながらも、被写体の内面まで映し出すような肖像を撮影してしまう。

「セレブたちは、なぜ彼女の前で裸になるのか?」
これはそのドキュメンタリー映画に付けられたキャッチコピーだ。
確かに、ジョン・レノンもデミ・ムーアもアーノルド・シュワルツネッガーも裸だ。
あるいは彼女について、セレブたちは雄弁に語る。
ミック・ジャガーもウーピー・ゴールドバーグもヒラリー・クリントンも語る語る。

そんなアニー・リーボヴィッツ氏による新作肖像写真展
「WOMEN: New Portraits」が、世界10都市巡回展の一環として、
2月20日よりTOLOT /heuristic SHINONOMEで開催されている。
これは今年日本で設立50周年を迎えるUBSの記念イベントである。

肖像写真の第一人者と言われる彼女についてまとめておこう。1949年アメリカ、コネチカット州出身。空軍大佐の父とモダンダンサーの母との間に生まれ、父親の仕事の関係で全米各地、そしてフィリピンで暮らした。サンフランシスコ・アート・インスティチュートで絵画を学んだが、イスラエルで撮影した反戦運動の写真を『ローリングストーン』誌に持ち込んだところ、編集者の目に留まり、掲載される。彼女の輝かしいキャリアはこうして始まり、以後、ポップ・カルチャーの力強く鮮烈なイメージを写し続けている。

1973年には同誌チーフ・カメラマンとなり、1975年にザ・ローリング・ストーンズのツアー撮影を手掛け、一躍有名になった。
1980年、ジョン・レノンと妻オノ・ヨーコを撮影。
その数時間後にジョンは自宅玄関先で暗殺され、写真は『ローリングストーン』誌のジョン・レノン追悼号の表紙となった。
1983年以降は『ヴァニティフェア』誌の仕事もするようになり、1991年にデミ・ムーアの妊婦姿のヌードが同誌8月号の表紙を飾り、論争となる。
1998年には『ヴォーグ』誌に移籍した。
国立肖像画美術館 (National Portrait Gallery, ワシントンD.C.)、メトロポリタン美術館(Metropolitan Museum of Art, ニューヨーク)、スミソニアン・アメリカ美術館(SmithsonianAmerican Art Museum, ワシントンD.C.)ナショナル・ポートレート・ギャラリー(National Portrait Gallery, ロンドン)、エルミタージュ美術館(State Hermitage Museum in St.Petersburg, サンクトペテルブルク)で展示が行われ、作品も収蔵されている。受賞多数。

今回の写真展は、リーボヴィッツ氏が1999年に出版し絶大なる人気を博した写真集『Women』から始まったプロジェクトの一環。私生活でもパートナーであった評論家のスーザン・ソンタグ氏はこのプロジェクトの初期に共同制作を担い、これらの作品群を「現在進行形の作品(a work in progress ) 」と表現した。この写真展「WOMEN::New Portraits」は、現代社会における女性の役割の変化、そしてこれからを映し出したものだ。アーティスト、ミュージシャン、経営者、政治家、作家、慈善活動家など、様々な領域で活躍する女性のポートレート。本展から新たに加わった作品とともに、プロジェクト初期のオリジナル作品や未発表の写真も出品されている。

‘WOMEN: New Portraits’ a global tour of new photographs by Annie Leibovitz, commissioned by UBS, launches in Tokyo on 20 February at TOLOT/heuristic SHINONOME. © Keizo Kioku

スーザン・ソンタグは著書『写真論』の中で、「写真を撮っている人たちはたいがい、美しいものについての一般に認められている観念にただ賛成しているにすぎないが、野心的なプロはそれに挑戦しているのだとふつうは考えている」(近藤耕人訳/晶文社刊)と書いている。

ポートレートという永遠のテーマを前に、リーボヴィッツの写真は他の作家とどう違うのかあらためて凝視し、考える良い機会である。

中●写真家|アニー・リーボヴィッツ氏
右●UBSグループ・チーフ・マーケティング・オフィサー|ヨハン・イエルボウ氏
左●UBSジャパン・カントリーヘッド |中村善二氏
‘WOMEN: New Portraits’ a global tour of new photographs by Annie Leibovitz, commissioned by UBS, launches in Tokyo on 20 February at TOLOT/heuristic SHINONOME. ©Koki Nagahama, Getty Images

写真展に寄せて、リーボヴィッツ氏はこう述べている。
「UBSと共に、私が大切にしてきたテーマに取り組めることを大変光栄に思います。この壮大なテーマと向き合うことは、例えてみれば、大海原を写真に撮り続けることに似ているかもしれません」。

UBSジャパン・カントリーヘッドの中村善ニは「日本におけるUBSの設立50周年を、アニー・リーボヴィッツ氏によるこの特別な写真展開催で、幕を開けることができたことを大変嬉しく思います。日本では、女性の社会進出や職場における機会平等の推進を強化していますが、第一線で活躍する女性に焦点を当てた本写真展は、タイムリーな開催となったと考えています」と語っている。

‘WOMEN: New Portraits’ a global tour of new photographs by Annie Leibovitz, commissioned by UBS, launches in Tokyo on 20 February at TOLOT/heuristic SHINONOME. © Christopher Jue, Getty Images

アニー・リーボヴィッツ|WOMEN: New Portraits 展
「WOMEN:New Portraits」
会場:TOLOT/heuristic SHINONOME
    東京都江東区東雲2-9-13 2F
会期: 2016年2月20日~3月13日
時間:11:00- 19:00

www.ubs.com/annieleibovitz-jp

入場料無料

NEWS アニー・リーボヴィッツの世界巡回展が日本へ>

鈴木芳雄プロフィール画像
鈴木芳雄

美術ジャーナリスト/編集者。ライフスタイル誌編集者時代から国内外各地の美術館・美術展、有名アーティストを取材する。共編著に『光琳ART 光琳と現代美術』『チームラボって、何者?』など。愛知県立芸術大学客員教授。

FEATURE
HELLO...!