モランディの言葉「見えているものを懸命に見よ」 #6

まもなく東京では終わってしまうジョルジョ・モランディ(1890-1964)の展覧会について書いておこう。

20世紀前半に活躍したイタリア人の画家モランディはパブロ・ピカソよりも10年ほど後に生まれ、10年ほど先にこの世を去っていった。描いたのは主に風景と静物。特に身のまわりにあった瓶や水差しを筆跡の残る落ち着いたトーンの色で描いた絵が有名である。

《静物》1946年 国立近代美術館(ローマ) © Roma, Galleria Nazionale d’Arte Moderna e Contemporanea, by permission of Ministero dei Beni delle Attività Culturali e del Turismo

今回の展覧会は同一の瓶や箱、壺、水差しを組み合わせを変えたり、要素を入れ替えたりすることでヴァリエーションを生んだことに注目して構成されている。兵庫県立美術館から始まり、4月10日(日)まで東京ステーションギャラリー、4月16日(土)~6月5日(日)岩手県立美術館に巡回する。

《静物》1948年トリノ市立近現代美術館、グイド・エド・エットーレ・デ・フォルナリス財団 © by courtesy of the Fondazione Torino Musei

彼はイタリアの画家や芸術運動の影響を受けてはいたものの、特定の党派に属することはなかった。

旅も少ない。絵画研究のためにローマやフィレンツェ、ヴェネツィアを訪れることはあったけれども、国外に旅行することは稀で1956年、パリに旅行するがこれが最初の外国訪問。66歳だった。人生のほとんどを生まれ故郷のボローニャと避暑地のグリッツァーナ(ボローニャ近郊、アペニン山麓の村)で過ごしたのである。彼はボローニャのフォンダッツァ通りにあるアトリエの薄暗い部屋に閉じこもり、卓上に並べられた静物と近くの風景というたったそれだけを終生描き続けた。

《花》 1952年  ミラノ市立ボスキ・ディ・ステファノ邸美術館 ©Comune di Milano – Casa Museo Boschi Di Stefano


《風景》1962年  ウニクレディト・アート・コレクション  ©Marco Baldassarri, Bologna

モランディはこんな言葉を残している。
「本当に理解するためには、多くのものを見るのではなくて、見えているものを懸命に見ることが必要だ」

  
カーサ・モランディ(モランディの家) photo©Paolo Ferrari, Bologna

ジョルジョ・モランディ―終わりなき変奏

会場:東京ステーションギャラリー
会期:4月10日(日)まで
時間:10:00 - 18:00(金曜日は20:00まで開館/入館は閉館30分前まで)
http://www.ejrcf.or.jp/gallery/exhibition/201602_morandi.html

4月16日(土)~6月5日(日)岩手県立美術館に巡回

鈴木芳雄プロフィール画像
鈴木芳雄

美術ジャーナリスト/編集者。ライフスタイル誌編集者時代から国内外各地の美術館・美術展、有名アーティストを取材する。共編著に『光琳ART 光琳と現代美術』『チームラボって、何者?』など。愛知県立芸術大学客員教授。