ギャスパー・ウリエル #13

『たかが世界の終わり』(2月11日公開)新宿武蔵野館、YEBISU GARDEN CINEMA 、ヒューマントラストシネマ有楽町他全国順次公開
©Shayne Laverdière, Sons of Manual 配給:ギャガ

名匠アンドレ・テシネ監督の『かげろう』('03)で注目された時から、ギャスパー・ウリエルにはずっと“年下の男の子”のイメージがついてまわったが最新主演作『たかが世界の終わり』のグザヴィエ・ドラン監督はギャスパーよりも5歳下である。

「でもグザヴィエは自分の撮りたいヴィジョンに全く振れがなく、それでいて僕たち俳優の自由を尊重してくれる誰よりも成熟した何かがある。音楽のチョイスなどは今どきの27歳なのにね。今回の作品は、ジャン=リュック・ラガルスの戯曲を基にしているんだけど、僕が演じたルイという男を始め、詳しいバックグラウンドが描かれていない。それを僕なりに考えて表現する面白さは、グザヴィエとの間に信頼関係があってこそだよ」

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 ほとんどルイの田舎の実家で展開される『たかが世界の終わり』。若手の映画監督にしては珍しく、少々毒々しい色合いのケーキなど、“消え物”にも細かい目配りがある。

「いや、僕はむしろ日本映画なんかの食事シーンの方が情報量もあって作品に占める比重が大きいと思うよ(笑)。実は、気づいていない人もいるけれど、この映画、グザヴィエはどの土地の話ともいつの話とも言っていない。映画を観てくれている人が勝手に解釈するようにと。でも、その割には食卓に上がっている料理にしろデザートにしろ、グザヴィエの故郷のカナダ・ケベックのものなんだ(笑)。純粋なフランス料理じゃなくて、そういう茶目っ気も余裕だよね」

今から20分後にホテルのプールサイドに来たらインタビューを受ける。ギャスパーに初めて会ったのは『かげろう』が出品された年のカンヌ映画祭。あわてて、かつてフランス人の彼がいたという友人に通訳をお願いして、ほとんど事前情報もないままインタビューさせてもらったのだが......

「あの時は自分から英語を喋るのも恥ずかしかったし(笑)」と後年明かしてくれたように、ギャスパーったら、英語もペラペラだったとのこと。

「北海道には行ったことがあるんだよ。元カノを追いかけて」という告白が一番の衝撃だったっけ。

「新作は、リリー=ローズ・デップが伝説のダンサー、イサドラ・ダンカンを演じる映画」と聞いて「じゃ、ヴァネッサ・レッドグレイヴが晩年のイサドラを演じた『裸足のイサドラ』('70)とは(ストーリーが)違うのね」と言ったら「その映画、どんなものなの?」とグイグイ聞いてくれたギャスパー。いわゆる誰もが知っている映画史に欠かせない作品ではない方が、俳優として知っておきたいという本能が強くなるのかも。

「『SAINT LAURENT/サンローラン』('14)の時もそうだけど、自分が生きている現代とは違う時代の人間を演じる場合は、やはり細かいところまで意識しておきたい。もちろん人間の本能はさほど変わらないのかもしれないけどね」

ジャーナリスト佐藤友紀プロフィール画像
ジャーナリスト佐藤友紀

映画や舞台、ダンスに造詣が深く、独自の視点で鋭く切り込むインタビューに定評が。ジョニー・デップから指名されることも多々。

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