ケイト・ブランシェット #16

『The Present』 ©AFLO 

年明け早々、NYブロードウェイで観たケイト・ブランシェットの出演舞台『The Present』は、予想以上に面白かった。チェーホフの『プラトーノフ』を現代に置き換え、ケイトの夫アンドリュー・アプトンが翻案したもの。ちゃんとアンサンブル劇としても成立していながら、ケイトのコミカルさも際立っていて。案の定、芝居がはねた後の楽屋口は、サインを求める人、生ケイトを一目見ようとする人でごった返していたが、これが同じNYの舞台でも、『ヘッダ・ガブラー』を上演したBAM(ブルックリン・アカデミー・オブ・ミュージック)の時はわずか6、7人。しかもオタクっぽい男の人ばかり。
「あれは、共演したヒューゴ(・ウィーヴィング)の追っかけの人たちよ」とケイトも笑っていたが、『マトリックス』シリーズ、恐るべし、だ!

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「女同士のラブシーンは難しくなかったか?」というジャーナリストからの含みのある質問に、「女同士のF○CKシーンってこと?」とハッキリ聞き返したケイト。でも、かつて「難しいラブシーン」について率直に語ってくれたことがあって、心打たれた。
「やっぱり相手が少年のような男の子だったり、『リトル・フィッシュ』(’05)のベトナム系の若者だったりすると気をつかうわ。いくらプロの俳優といっても経験値は違うわけだから。そういう時は、逆に何事もなかったように撮影に臨むの。こちらの緊張を悟られないようにね」

「小学校の時に折り紙を教えてくれた日本人の同級生のおかげよ(笑)」と、ケイトは日本文化への興味をしょっちゅう、口にする。
「演劇学校を出てすぐ、ジェフリー・ラッシュにスカウトされて、舞台『オレアナ』に出たんだけど、あの作品で参加したアデレード演劇祭で観た山海塾にも魅了されてしまったわ。白塗りの舞踏って、ずっと見ていると逆にダンサー個人個人の特色が目立ってくるの」
この他、深津絵里主演の舞台『春琴』、坂東玉三郎がエリザベス1世は男だったという戯曲に取り組んだ『エリザベス』など、人から聞いて観たいと熱望するもの多し。

アンジェリーナ・ジョリーの家ほどではないが、3人の息子たちがまだ学齢に達していないときや長い休みの時などは、「積極的にロケ地に連れて行った」というケイト。
「子供って本当に順応性があって、『バベル』(’06)のモロッコロケの時なんかは現地の子たちと言葉なんて通じないのにちゃんとコミュニケートして遊んでいたし、『エリザベス ゴールデン・エイジ』(’07)の時は、輝ける甲冑姿のママは一躍ヒーロー(笑)。自分たちもチャンバラごっこで興奮していたわ。スタッフの方たちの仕事も邪魔にならないように見学させてもらって、サマースクールみたいよ(笑)」
それはママ・ケイトが賢いからだろう!

 

ジャーナリスト佐藤友紀プロフィール画像
ジャーナリスト佐藤友紀

映画や舞台、ダンスに造詣が深く、独自の視点で鋭く切り込むインタビューに定評が。ジョニー・デップから指名されることも多々。

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