VALENTINO

vol.8 Haute-Couture

最高級の服地と熟練した職人技で世界にひとつしかないウェアを作り上げるオートクチュールの世界。SPURが創刊当初から追い続けるモードの最高峰のこのきらめきを、毎シーズンプレタポルテに投影し続けるふたつのブランドの最新ルックから大いに堪能したい

VALENTINO

ロマンティックなフェミニニティを掲げ、洗練されたテクニックで最上の美を表現してみせるヴァレンティノ。「ピエールパオロ・ピッチョーリのクチュールコレクションは、会場の演出に頼ることなく、服自体の美しさや職人技術で勝負しているのがさすがだなと思います」(乗松さん)。クラシカルな文様を優美にデフォルメしたプレタポルテのプリーツドレスにも、その繊細さとDNAはしっかりと息づいている。

ドレス¥804,000(ヴァレンティノ)・サンダル¥92,000(ヴァレンティノ ガラヴァーニ)/ヴァレンティノ インフォメーションデスク

クチュールコレクションはモードラバーの夢と憧れ

 パーツの一つひとつに精緻かつ贅沢な技術が盛り込まれ、職人の卓越したカッティングと縫製技術を駆使した「着る芸術品」でもあるオートクチュール。それだけにプライスもプレタポルテとは桁違いだが、SPURは創刊直後からメゾンのルポやクチュリエのインタビューなどに多くのページを割いてきた。SPURでオートクチュールの撮影やメゾンへの取材を数多く手がけたパリ在住のファッションジャーナリスト・乗松美奈子さんは、その背景をこう見る。

「ビッグメゾンが世界中でクルーズのショーを開催し、SNSで発信する現在と異なり、90年代はオートクチュールこそが特別なプレゼンテーション。必ずしも読者が買える服ではなくとも、ラグジュアリーなきらめきやファッションへの夢が詰まっているという意味で、SPURはオートクチュールを深く掘り下げてきたのだと思います」

そんな憧れの境地である一方、そのランウェイから得たヒントは、デイリーな着こなしにも応用可能と語る乗松さん。デザイナーがプレタポルテで表現しきれない贅沢なアイデアを垣間見られるという視点はまた、大いに現代的でもある。モードラバーにとってオートクチュールは、これからも垂涎の的であり続けるに違いない。

SOURCE:SPUR 2019年6月号「いつもモードは、 SPURと……」
photography: Junji Hata styling: Tomoko Iijima hair: JUN GOTO  make-up: Masayo Tsuda 〈mod’s hair〉 model: Milla Ganame edit: Satoko Hatakeyama