“ Me ” から “ We ” へ。デジタル時代が連れて来たのは “ 分かち合う ” 気持ち

パリのデパートで発表されたフランスのファッションブランド「ヴェトモン」の2017年春夏コレクション。通常の営業時間に行われたこのショーでは「リーバイス」「ジューシー・クチュール」「コム デ ギャルソン」など17の多彩なブランドとのコラボレーションが披露された。ところで、この「ヴェトモン」をブランドと言ってよいのだろうか。

というのも、デムナ・ヴァザリアと弟のグラム、5人のデザイナー仲間からなる「ヴェトモン」は自らを "クリエイティブ集団" と名乗っているからだ。彼らが匿名性を貫いているにもかかわらず(おそらく、それゆえに)、「ヴェトモン」という名前は世間に知れ渡っている。ファッション界で大切に受け継がれてきた "しきたり" を堂々と覆すことで、「ヴェトモン」は既存のブランドに飽きあきしていた人々の注目を集めることに成功した。個人の才能に価値をおくファッション界にあって「成果を分かち合おう」「エゴを捨てよう」「功績を独り占めしよう」と思うな「助け合って成果を出そう」といったサマーキャンプで学ぶ美徳の精神を大事にするヴェトモンの姿勢は世間にインパクトを与えたのだ。

「個人の成功を追求すべし」という理念は人々に長い間支持され、年長者の世代には当然のことと受けとめられている。だが、それも今や時代遅れになりつつある。デジタル技術のおかげで、乗り物の中でも、職場でも家庭でもあらゆるものがインターネットでつながり、誰もが対等にデータをやり取りできるようになった。新進アーティストやスタートアップ企業はこのような時代に多様な人々が共存できる社会を目指して新たなパラダイムを創造しようとしている。


"UNTITLED,"1987 @THE KEITH HARING FOUNDATION/ZETA IMAGE
 

  ビヨンセは第50回スーパーボールのハーフタイムショーやミュージックビデオ『レモネード』で、21世紀型の集団主義をたたえるかのように、女性だけのバンドを率いたパフォーマンスを披露して観客を魅了した。バーニー・ サンダースのキャンペーンは大統領選の戦いというより、コミューンのような一体 感に包まれていた。マーティン・ルーサー・キング牧師やマルコムXがいなくても、怒りや悲しみから「Black Lives Matter(黒人の命は大切)」運動が生まれた。

不動産業界にも大きな変化が訪れている。シェアオフィスを貸し出す「WeWork」には「活気あふれるコワーキングスペースで可能性を広げよう」というネオンサインに誘われて若者たちが集まり、フラットホワイト(ミルク入りエスプレッソ)を飲 みながらビジネスに励んでいる。同社の企業価値は2年間で50億ドルから160億ドルに跳ね上がり、シェアオフィスのコンセプトを拡大してシェアハウスを提供するビジネスにも着手した。(続きを読む)

SOURCE:
「The We Generation 」By T JAPAN(https://www.tjapan.jp/
IAN DALY TRANSLATED BY FUJIKO OKAMOTO

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