肌寒くなるとクローゼットから取り出すチェックのジャケットは、メンズブランドTAILORBYRDのヴィンテージ。TシャツはNYのパンキッシュな古着店METROPOLISで見つけたもの。GAPのホワイトデニムと合わせた
ファッションの世界は、美のあり方について視野が狭いと思われがちだ。だが実際は逆で、ハイ・ファッション界は社会通念に縛られない、懐の深い場所なのだ。昔からずっと「普通でない」美しさを受け入れてきたファッション界が特に愛しているのが、中性美、アンドロジナスな美しさだ。80年代にモデルやミュージシャンとして活躍したレスリー・ウィナーやジェニー・ハワース、90年代のジェニー・シミズやステラ・テナントがその例だ。
スウェーデン出身でトムボーイな美貌を持つエリカ・リンダーは、この名高いアンドロジナス・ビューティの系譜に連なるモデルだ。ただし、他のモデルとは違う点がある。エリカは男性モデルとしてメンズウェアを着こなすのだ! その風変わりなモデルとしてのキャリアは、彼女が若き日のレオナルド・ディカプリオに扮してエディトリアル撮影を行なったことで始まった。続いて、圧倒的にフェミニンな美貌でウィメンズウェアを着こなすメンズモデル、アンドレイ・ペジックとの男女を入れ替えた撮影で物議をかもし、トム・フォードをも魅了した。そしてルイ・ヴィトンのニコラ・ジェスキエールは、男性としてではなく女性として、さらに言うなら、強いひとりの人間として、エリカを起用。ジェンダーの境界を自在に行き来する彼女の能力は、すぐに映画業界の注目を集めることとなり、演技の経験がまったくなかったにもかかわらず、エリカは難しい主役の座を勝ち取った。その映画が『アンダー・ハー・マウス』、レズビアンをテーマにした大胆な作品で、かかわるスタッフは全員女性だ。
雑誌にしろ映画の撮影にしろ、男性役にしろ女性役にしろ、確かなことがひとつある。エリカにはカメラを惹きつける才能があるということだ。現在27歳のエリカに、自分のフェミニニティを乗りこなす戦いの記録、今までのキャリアと彼女自身、そして未来について聞いた。
動物が大好きなエリカ。どちらかというと犬派だが、猫も鳥も好きだそう。ガールフレンドと鳥を飼い始め、ウィノナ・ライダーから取って、名前は「ウィノナ」に
PROFILE
ERIKA LINDER
1990年生まれ、スウェーデン出身。メンズモデルとしてデビュー。ケイティ・ペリーのMVへの出演、トム フォードの広告などで注目を浴びる。2015年よりルイ・ヴィトンのウィメンズのショーに独占出演。初主演映画『アンダー・ハー・マウ ス』が今年の10月に公開された。憧れの女優はティルダ・スウィントン、フェミニニティの象徴はグレタ・ガルボ。
着たい服はどこにある?
トレンドも買い物のチャンネルも無限にある今。ファッション好きの「着たい服はどこにある?」という疑問に、SPURが全力で答えます。うっとりする可愛さと力強さをあわせ持つスタイル「POWER ROMANCE」。大人の女性にこそ必要な「包容力のある服」。ファッションプロの口コミにより、知られざるヴィンテージ店やオンラインショップを網羅した「欲しい服は、ここにある」。大ボリュームでお届けする「“まんぷく”春靴ジャーナル」。さらにファッショナブルにお届けするのが「中島健人は甘くない」。一方、甘い誘惑を仕掛けるなら「口説けるチョコレート」は必読。はじまりから終わりまで、華やぐ気持ちで満たされるSPUR3月号です!