「男性」として撮られることの楽しさ、そして葛藤

スタイルポリシーは「オーセンティックであること。トレンドの先端にいるのではなく、むしろ"unfashion"でいたい」とエリカ。厚手のボーダーTシャツはMUJI、パンツはスウェーデンのWEEKDAY。今年の初めに買ったサンローランのライディング風ブーツで引き締めた

私は女だ、胸だってある。
ひとりの人間として撮られたい

――エリカ、モデルになったきっかけは?

「ストックホルムの自宅近くで開催された野外フェスでスカウトされたんだ。14歳の夏だった。私の第一声はこう、『無理無理、ありえない!』。サッカーをやっていてやんちゃだった当時の私にとって、モデルの仕事というのは、ドレスを着て、メイクアップをしてハイヒールを履くこと。それにおじけづいた。だから断ったんだけど、それから6年以上も事務所はメールをくれ続けた。『どう、その気になった?』って。学校では語学を学んで卒業して、旅をして世界を見てみたいと思ったのは21歳くらいのとき。それで『やってみるか』と決心して、事務所に連絡を取った。私は、周りから男の子のように見なされて育ったし、いつもメンズウェアを着ていた。デニムパンツ、ブーツ、オーバーサイズのシャツ、それにTシャツ。今日の格好とほとんど同じだね。すべてをあるがままの状態にしておきたくて。自分自身をとりつくろったり、何かのふりをしたくなかった。だから、モデルとしても、自分らしく感じられる服を着たいと思った。つまり、男性の服を着るモデルとして仕事をしたいと考えたんだ」

――時代を先取りしていたんだね! つまり、女性だけど男性モデルとして仕事をするというのはあなたのアイデアだったの?

「そう。『キャンディ』誌で『きみを若き日のレオナルド・ディカプリオに見立てて撮影してみたい』と言われて撮影をして、これがきっかけになってキャス・バードをはじめ多くの写真家から注目されるようになった。そうして、最初はためらっていた事務所の人たちも、『このアイデアはいけるな』って気づき始めたみたい。男の子みたいに見えること、男の子みたいに服を着ることは、私にとってごく自然で簡単なことだったけど、それがファッション業界の人には新しかったんだね。トム フォードの『リップス&ボーイズ』のキャンペーンでは、男性として撮影してもらった。誰もが私のことを男だと思ったみたい。素晴らしい仕事だったね。最初はうまくいっていたんだ、注目もされたしね。でも結局のところ、『アンドロジナスな女の子』という型にはめられてしまった。ジェンダーの境界を演じるのも最初は楽しかったけど、一日が終わる頃になると、『二度と男役なんかやるもんか』と思うんだ。『私は女だ、胸だってある。ひとりの人間として撮られたい』ってね」

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着たい服はどこにある?
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