BABYMETAL スペシャルインタビュー

さまざまな試練を克服し、進化し続けた10年間を、SU-METALとMOAMETALとともに振り返る。

BABYMETAL スペシャルインタビュの画像_1

Profile
2010年に結成。SU-METAL(Vocal, Dance ・左)、MOAMETAL(Scream, Dance・右)のふたりをメインに活動中。サードアルバム『METAL GALAXY』は、アジア人アーティストのアルバムとして史上初の全米ビルボードロックアルバムチャート1位を記録。3月に開催されるメタルフェス「KNOTFEST JAPAN 2020」では世界のビッグネームたちと共演する。

――今年結成10周年を迎えるおふたりですが、当初はヘヴィメタルについてあまり知識がなかったそうですね。メタルの魅力に目覚めるきっかけは、何だったんですか?

SU-METAL(以下) 確かに最初は怖いものというか、近寄りがたいものというイメージを持っていたんです。「なんでこんなに音が大きいのかな」とか「なんでこんな奇抜なメイクをしているのかな」とか、理解するのに時間がかかりました。でも、2014年に観たメタリカさんのライブが本当に衝撃的で。音楽を耳で聴くのではなく、心に直接ドスンと刺さる感覚があったんです。メタルが持っている力は心を揺さぶるもので、それだけ強いメッセージ性がある。そこに気づいて、この音楽をもっと伝えたいな、メタルという音楽が存在することが幸せだなと思ったんですよね。
MOAMETAL(以下) それに英語の歌詞を訳して調べてみると、社会に対する鬱憤を吐き出していたり、反骨精神が込められていることが多いんです。だから人は熱狂するんだなと感じて、どんどんハマりました。

――女性が少ないヘヴィメタル界でこれだけ成功したBABYMETALは、世界的にも貴重な存在です。女性だから苦労したと思う点はありますか?

 最初はそれこそ、女性かつ子どもだったので、「これはメタルじゃない」と言われたし、「メタルをバカにしているのか」という意見もありました。やっぱり子どもがワチャワチャやっていたら、メタル・ファンを侮辱していると受け止められてもおかしくないと思うんですよ。でもそういう意見があったからこそ、さっき言った反骨精神じゃないけど、ライブ・パフォーマンスを見せて、本気でこの音楽と向き合っているんだと説得してきたようなもの。批判的意見と闘うこともメタルの精神だと受け取ってくださる方もいましたし、「こういうメタルの表現もあるのか」と納得してくれたんでしょうね。
 私はどちらかというと、女の子でよかったなって思う。「珍しいね」と声をかけてくれる人が多いし(笑)。そして女の子だから表現できることもあって、衣装には、強さの中にやさしさが込められているんですよね。

BABYMETAL スペシャルインタビュの画像_2

衣装をまとって別の次元で生きる自分に変身する

――あの衣装はやっぱり、身にまとうと気分が引き締まるものですか?

 そうですね。私たちは普段の姿を「仮の姿」と呼んでいて、ステージ上での自分たちをSU-METALとMOAMETALだと思っているんです。衣装を身につけるときが、その切り替えのタイミングなのかな。変身して「SU-METALになる」っていう感じで(笑)。SU-METALは自分が持っていないものを持っていて、彼女に輝いていてほしいから、それをサポートしたいって考えています。たぶん、あまり自分に自信がないんです(笑)。
 私も、MOAMETALは別の次元で生きているように思えます。だから、「仮の姿」の私とは違うし、MOAMETALになったら自信が持てたり、そういうところはあるのかもしれないですね。

――2018年にはYUIMETALさんが脱退し、3人からふたりへと体制が変わるという大きな変化もありましたね。

 そうですね。ただ、慣れるのが大変だったという感覚はないんです。それよりも、2年前から7人体制だったり3人体制だったりいろんな体制を試みて、どうしたら皆さんに「一番よいBABYMETAL」を届けられるのかということに専念していたので。
 私の感覚としては、始まったときからBABYMETALに安定はなかったんですよ。常に壁があるというか。「これはメタルじゃない」っていう批判から始まり、それを乗り越えたと思ったら今度は「すごいグループがいるらしいぞ」と期待されるようになって、またその壁を越えなきゃいけない。そして、期待にやっとこたえられるようになったタイミングで、体制が変わることになって。私たちにとっては全部が同じくらい高いハードルで、全力で突き進んできたからこそ、これだけ大きな試練を与えられ続けてきたと思うんです。その結果、すごく成長できたという実感があるし、サポートしてくださった方々も大勢いました。でも今回は、そういう方々からも「こんなのはBABYMETALじゃない」という反応があって。そういう人に対して、どうやって「いや、これがBABYMETALの道ですよ」と証明するのか? BABYMETALって、形があるようでないんですよね。常に進化しているし、常に何かと闘っている。ある意味でそれが最新アルバム『METAL GALAXY』に表れているんです。固定観念を壊すアルバムで、それを受け入れてくれた人もいるし、受け入れられなかった人もいると思いますが、私たちがやるべきなのは、このBABYMETALの道を突き進むことのみ!と思っています 。

BABYMETAL スペシャルインタビュの画像_3

与えられた体験を活かして今度は与えられる存在に

――結成当初は文字通りの“BABY”だったおふたりも、20代になりました。大人になった実感はありますか?

 そうですね、10代のときにこういう経験をするって、すごく大きいと思うんです。ツアーをしながら世界を教室にして勉強してきたみたいで。いろいろな音楽、価値観、そして考え方と出合って、学校では教えてもらえないことを教わりました。じゃあ、そんな経験をした自分に何ができるのか。今までたくさん与えてもらったけど、これからは何かを与えられる存在になりたいと、20歳になるタイミングで思うようになりましたね。
 人生の半分をBABYMETALで過ごしているので、やりがいを感じていますし、やってこられてよかったなと思うし、もうひとりの自分の物語を見ている感覚ですね。これからどうなっていくのか自分でも楽しみです。

――世界中を飛び回って大活躍しているおふたりにインスパイアされる女性も多いと思います。そんな人たちにどんなメッセージを発信したいですか?

 世界を広げること、でしょうか。私の場合は、海外を旅して自分の世界が広がるほど、私が悩んでいることなんかすごくちっぽけなのかなって感じることができたんです。自分が思っている以上に世界は広くて、同じ悩みを抱えている人は大勢いて、それを乗り越えた人もたくさんいるんだろうなって。
 私たちはわからないなりに、いろんなことに挑戦してきました。だから、もちろん怖いときもあるけど、挑戦した者勝ちだなと思っているので、なんでも挑戦してみるべきだってことを伝えたいです。

――おふたりがヘヴィメタル初心者にすすめたいバンドは誰でしょう?

 やはりBABYMETALです(笑)。特に『METAL GALAXY』ではメタルにさまざまなアレンジをしていて、楽しい気持ちにさせてくれる曲ばかりです。あまり聴いたことがないという方にも、受け入れられると思うので、BABYMETALを通じてメタルに興味を持ってもらえたらいいですね。