2020.07.06

01/佐藤里沙さん

心地よい服がもたらした
シンプルな感動を忘れない

「ジル サンダーのリネントップスは緊急事態宣言が発出される直前に友人とショップで見かけて、ふたりしてハッとしたほど惚れ込んだアイテムです。その頃はまだ肌寒かったので、暖かくなったら着たいと思っていました」
 佐藤里沙さんは自粛期間中のある日、そのトップスを着て徒歩圏内の明治神宮に散歩に出かけたという。
「自宅の周辺を歩くだけだからといって、カジュアルな格好でなきゃいけない理由はないですよね。服は着たいと思うときに着るべき!と思い立って、このトップスを選びました。そうしたら、歩いているうちに服の中を風が通って、爽やかな心地に。お天気もいいし、なんだ、最高じゃないか、というシンプルな気持ちがよみがえってきて。このときの感覚は一生忘れないと思います」
 自宅にいる時間はなるべくルーティンをつくったほうがいいと思い立ち、ゆるやかに続けられる習慣づくりを心がけた。
「自粛中は後退するより、少しでも前に進む期間にしたいと思いました。そこで、MoMAのオンライン講座が無料で公開されていたので『デザインとしてのファッション』コースを1日おきに見ることにしました。動画で英語の授業を聞いて、テキストのPDFを読むという流れです。1年半前にNY2年ほど生活していたときに戻ったみたいな気分になりましたね。そのときにできた友人たちとはFaceTimeで顔を見ながら話していて。NYは東京よりも先にシリアスな状況になっていたので、精神的なコントロールの仕方についてアドバイスをくれました。どんな気持ちも、早めに誰かに吐き出したほうがいいよ、とか。みんなでオンラインクッキングもしました。そして私の誕生日には遠隔で自宅にお花が届くように手配してサプライズ誕生日会を開いてくれたんです。人と会ったり、話したりすることは本当に大事なんだなという気づきをくれましたね」
photography: Saki Omi 〈io〉 edit: Michino Ogura

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