夢と現実のバランスを取りながら生きることを、より大切に
飯田珠緒さんが繰り返し口にした言葉は“矛盾”だった。
「『夢を忘れずに』は愛する忌野清志郎さんの言葉で、私にとってのモットー。でも今は夢見る力よりも現実の対処に精いっぱいだったりもする。便利なものが求められていることは知りながら、無駄のない人生なんてつまらない! とも感じます。前だけを見て進んでいこうとしても、どこかで思い出のために生きてるところもある。ファッションも同じ。絶対必要ではないけれど、人生に彩りを与えてくれるもの。かっこいいものも、可愛いものも好き。ロマンティックもパンクも大切。ずっと好きなものはあるけれど、マイブームはコロコロ変わるし、好きな人の影響を受ければ同じものに夢中になってしまう。自分のテイストを突き詰める憧れもありますが『仕方ない、だっていろいろ好きなんだもん』という気持ちも。言うなれば、私って“ごった煮”スタイリストなのかもしれません(笑)。でもそんな自分を受け入れて、夢と現実のバランスをこれからも表現していきたいと思ったんです」
逡巡しながらつかみ取ったテーマは“己に潜む矛盾との闘い”だ。母から受け継いだ真珠のネックレスと、おもちゃのリングをごちゃ交ぜにしてビジュアルに。
「もちろん母の真珠のほうが大切ですが、金メッキのおもちゃの指輪だって可愛くて捨てられない。この“矛盾”がファッションの醍醐味でもあります。改めて、雑誌はそんな楽しさへの気づきの場だということも実感しました。かつての私のように、一枚の写真が誰かの原動力となる。だからプロとして真摯に、これからも丁寧に仕事に向き合いたい。自分ひとりではなく、チームで力を合わせると想像を超えるミラクルが起こる。それは本当に面白くて、意味のあることなんです」
photography: Mitsuo Okamoto artwork: Masakazu Kitayama〈 Help!〉 edit: Kaori Watanabe