五感に身を委ねて
好きなスタイルを
強化していく
「ファッションは外に出て他者に見せるためのものという認識ではなく、アイデンティティそのもの。自粛生活だからといって、衣食住の“衣”の比重が軽くなることはありません。毎日着替えましたし、オンラインショッピングも続けていました」と語る、吉田佳世さん。この期間はゆっくり内省する時間が格段に増え、これまで忙しさにかまけて忘れそうになっていた五感の尊さを改めて見つめたという。
「目の前の生活や仕事に追われると時間短縮のため便利なことについ頼りがち。頭で考えうる範囲だけで選んだり、物事を成立させたりしようとしてしまいます。ですが、もっと五感に正直に、己のインスピレーションに身を委ねて自分が本当に美しいと思うものにフォーカスしたいと考えるようになりました」
そんな心の声を頼りにワードローブから引っ張り出したのは2着のドレス。
「赤と白のヴィンテージのドレス(右上)は、ロンドンに住んでいた20年前に買ったもの。自分のルーツを感じるし、手もとにあるのに忘れかけていた宝物に今一度、目を向けたいという気持ちです。白のミニドレス(左上)はセシル バンセン。フリルのついた白はマイ・スタンダード。自粛生活が明けたら真っ先に着たいですね。そんな服と一緒に楽しみたいのは香り。嗅覚もまた、心を揺さぶる五感のひとつ。今は、ロンドンの若い調香師が手がけるPerfumer Hに夢中です(左下)。香りとファッションの融合は、私にとってのネクストステージかもしれません! そして最後は花。毎日家で飾り、有機的な存在からたくさん元気をもらいました(右下)。これからは、こういう自分の『好き』をどんどん強化していきたいですね。それはどんな状況下においても、自分自身を信じることにつながるから」
photography: Hiroko Matsubara edit: Kaori Watanabe