今井太郎／午前2時に聴きたいメロウなヒップホップ

PROFILE
1997年、京都府出身。モデル、DJ、新宿のセレクトショップ「ジャックポット」スタッフ。2019-’20年秋冬、バレンシアガのランウェイを歩き、’20年春夏は広告にも登場した。ブラックアイパッチのルックブックの制作も手がけるなど、多方面で才能を発揮している。

　ＤＪしていたところを、バレンシアガのキャスティングディレクターにスカウトされ、瞬く間にパリのランウェイデビューを果たした今井太郎さん。ファッション、カルチャーの最先端にいる彼は、普段どんな音楽を聴いているのだろう？ “2AM SUMMER NIGHT”をテーマに、ナイトアウトを楽しんだあとの倦怠感やもう少し余韻に浸りたいときのメロウなプレイリストが届いた。
「選んだなかでも、キッド・カディの『パースート・オブ・ハピネス』（E）は、発売当初から当時のヒップホップとはまったく違う角度からのアプローチだと感じていました。たとえば、ヤケ酒したあとに楽しくなるムードというか、マイナスからプラスに転じて、上を向いている感じがすごく好き。“これから幸せになっていく”という感覚は、まさに今の気分にぴったりです。いまだに自分の中では最先端でありクラシック。アルバム通しても、一生聴きたいと言えるほど好きですね」
　次のおすすめはＴシャツも愛用しているエイサップ・ロッキー（A）と、タイラー・ザ・クリエイターがコラボしている「ポテトサラダ」（D）。
「エイサップとタイラーはおしゃれでラップのレベルも高い。高校生のときから自分のアイドルですね。初めてＤＪしたときもかけたんですが、仲間と盛り上がった記憶が蘇ってきます」
　１年半前に初めて訪れたヨーロッパがロンドンだったという今井さん。
「ブレント・フェイヤズの『ファック・ザ・ワールド』（C）のＰＶは、まさに自分の歩いていたロンドンの街並みや、当時のカルチャーショックをまざまざと思い出させてくれる。ビートもラップもファッションもすべてカッコいいんです」
　スナップで披露したエルトン・ジョンのツアーＴシャツ（B）は、知り合いの古着店で見つけたそう。
「買った当時はエルトンのことをよく知らなかったんですが、改めてヤング・サグとのコラボ『ハイ』（2）を聴いたら想像以上によくて。彼の自伝的映画『ロケットマン』も観たくらい、ハマってしまいました」
　一方、自身のＤＪスタイルは、自己満足系。「知らない曲でもみんなが踊れるように、ある程度、流れは気にするようにしています。あのＤＪがかけているこの曲は何？とアテンションがもらえたらいいな」
　先日のアベマＴＶでのプレイも好評だったが、ＤＪの仕事はマイペースに知り合いから声がかかれば受けるようにしているんだとか。そんな彼に、今後の抱負を尋ねると、こう答えた。
「今、クラブは営業すら難しい状況ですが、自分にできることを模索して、今後は東京のナイトシーンを盛り上げていきたいです」
　では、モデル業やファッションのこだわりは？「目立ちたがり屋で好奇心旺盛なので、モデルの仕事は向いていると思う。一時はバイヤーになりたかったくらいファッションは大好きだし、個性をアウトプットする手段。ヒップホップ好きの間ではグラフィックＴシャツは基本のアイテムですが、ゴリゴリのトラックをかけながらも、襟の大きなレザージャケットを羽織ってみたり、いい意味でイメージを裏切るのが自分らしさかもしれません。カッコよければ何でもいいんです」
　モデル、ＤＪ、ショップスタッフと忙しい毎日を送るが、今後はフリーランスで挑戦し続けるつもりだと意気込む。
「何事もチャレンジしてみないとわからないから、まずは行動して経験を積もうと思います。可能性は無限大なはずだから、諦めずに多面的に活躍できるようになりたいですね」

内田莉子／週末の夜にシェアしたいチルなムードのブラックサウンド