ドレス¥170,000/VISITFOR(セシリー バンセン) 06-6110-7337
ロマンティックなシルエットを生み出すエアリーなドレス。細いボーダー状に織った立体感のあるジャカード素材を採用した。シアーな質感とパフスリーブがフェミニニティを演出しながら、バックスタイルには肌がのぞく大胆なカッティングを施している。何色にも染まるオールホワイトは、まとう人の“自分らしさ”に寄り添ってくれる。
今制作しているアルバムのテーマのひとつが「純潔と混交」。ここ数カ月で、これまでの人々の世界の常識がひっくり返りましたよね。まだまだつらいこともたくさんありますが、私は元の世界のままのほうがよかったとは感じていなくて。今回のことは変化の過程で、きっと必要な現象だったのかもしれないと考えています。交ざり合ったり、違いを受け入れることで、世の中はよりよくなっていくと信じているからです。
今年の初めには制作活動の一環で、慶良間諸島を訪れました。儀式的な力がある土地に行くとき、よく選ぶ服の色は白。そこに自分が異物として混入するのではなく、光も闇も受けて交ざり合いたいからです。“私”というものはつい肉体だけだと思いがちですが、世界に存在しているさまざまなものも私でありえる。たとえば、服が風をはらんだときのラインは、一番身近な可視化されたもうひとつの自分かもしれない。そして感情も、私の中で生まれたものだけではなく、漂う空気の中に含まれている気持ちを取り入れ交ざったもの、とも思ったりします。
慶良間の岬に立つと潮風を受けて、着ていた白いワンピースがふわっとなびきました。その瞬間引き出されたのは、服がつくった風の空間の中に、かつてこの場所で命を絶つことになった少女たちの気持ちも入っているかもしれない、という思い。同時に、ここで私が生きて表現できることを噛み締めました。布をまとうと、肉体だけではつくれない風の空間ができ、感情の居場所が生まれる。私にとって服を着ることは、風とともにいるということ。そして、いつも“気持ち”を教えてもらうのです。
Ichiko Aoba
青葉市子●1990年生まれ。音楽家。2010年に初のソロ作品『剃刀乙女』を発表。最新作は自主レーベルhermineからリリースしたシングル「海底のエデン」。CMや舞台に音楽家として参加するほか、声優やエッセイの執筆などでも活躍。
風をまとうフラットな白
空気を含むシルエットと軽やかになびく素材。動くたびに形を変えるホワイトの服は、どんな感情も受け入れてくれる。