03. Michelle Elie

川久保 玲の世界に魅せられた、モード界のパッショニスタ

profile
ハイチ出身。NYで学生の傍ら、モデル活動をスタート。10年間続けたモデル引退後は、スタイリスト兼デザイナーに転身。1992年からコム デ ギャルソンのコレクションピースの収集を続ける熱狂的コレクター。ドイツ・ケルン在住。

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©PHIL OH 「素材感と遊び心がユニークなコートとドレス。合わせると、まるで大変身した気分に!」。2016年春夏「ブルー・ウィッチ」コレクションは存在感抜群。
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©ANDRIANO CISANU 2015年春夏コレクションのテーマは「血と薔薇」。「できることなら全ピースを手に入れたい。私のいちばん好きな色、パワフルな赤ですべてが構成されていて、詩的で。完璧なまでに美しいんです」
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©MOEZ ACHOUR 「クチュールウィークの猛暑日に、このルックでパリを駆け回ったのを鮮明に覚えています」。1997年春夏シーズンの伝説的名作、コブドレスを着て。


コム デ ギャルソンは私にとって「生き方」を意味する

 ファッションウィークを誰よりも楽しみ、華やかに盛り上げるアイコン、それがミシェル・エリー。毎シーズン、ランウェイからそのまま飛び出したようなルックでストリートを笑顔で闊歩する。元モデルでデザイナーの彼女は、25年以上もコム デ ギャルソンの洋服を集めるコレクターとして、世界的に知られている。
「初めてコム デ ギャルソンの服を見たのは90年代。NY・ソーホーのセレクトショップでした。『いつか手に入れたい』と思ったけれど、まさかこんな膨大なコレクションになるとは予想もしなかったわ」
 そんな彼女が収集したピースで構成するエキシビションが、フランクフルトの応用工芸博物館で開催された。企画展タイトルは『Life Doesn,t Frighten Me. Michelle Elie wears Comme des Garçons』(現在は開催終了)。
「川久保玲の服を着るには、少し勇気がいります。それは、社会規範にとらわれない創造性、ビジョン、そして情熱が、着る人と見る人双方の感情を刺激するから。だからそのぶん、パワーを感じるんです。人生において挑戦を恐れるべきではないですよね。一つひとつステップを踏んでいけば、結果的に自らの経験と学びにもなるものだから」
 そんな思いを込めた展覧会は、ただ洋服を並べるのではなく、3Dプリントで製作した等身大のマネキンに着せてディスプレイ。そのルックを初めて見た瞬間や、手に入れた喜び、実際に袖を通して得た体験、またすれ違う人々の反応などのエピソードを添えた。
「コロナ禍のロックダウンでオープニングはバーチャル開催に。前例のないプラン変更の連続だったけれど、多くを学びました。4月にはやっと展覧会カタログが発売されます!」

一度きりの人生は短すぎて、退屈な服を着る暇などない

「ドレスアップをする機会は減ったけれど、私のスタイルも洋服への熱量も変わりません。ファッションに携わる人々は同じなはず。むしろこの状況を通してファッションと遊び、より楽しむことに挑戦していきたいです」
 今まで見たことのないまったく新しい発想の服に袖を通し、日常の中で直接体験する。「そして、自分なりの解釈を洋服に取り入れていくんです。いつも着るのが待ちきれません!」と話すミシェル。過去のアーカイブをひとつでも多く手に入れるべく、リサーチを続けている。彼女のように全身全霊でファッションを楽しむ秘訣とは?
「情熱をもって買い物をすること。そして、とっておきの逸品に投資すること。あなたが10年後も愛してやまないようなもの。誰もが自分にいちばん似合う服を見つけ、着続けていくべきです。それがユニークな持ち味を育んでいくから。個人的にはスタイルは一貫しているほうがいいと信じているし、エキセントリックなほうが面白いと思うんです。だって人生は短すぎて、退屈な服を着る暇なんてないから」
 インタビュー前日まで、息子が手がけるブランドCOLRSのショーのため、ナイジェリアにいたそう。彼女を突き動かすファッションへの情熱は、次世代にも脈々と受け継がれていく。

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