2021.02.19

02. APOC STORE/Tracey Suen & Jules Volleberg

デザイナーに自由とチャンスを!常識を変えるネットショップ

profile
アート業界からキャリアをスタートしたTracey Suenと学生の頃からファッション一筋のJules Volleberg。出会いは3年前、前職のセレクトショップ。新進気鋭のデザイナーやアーティストが自ら商品を決め、売れる場を作りたいと、2020年8月にAPOC STOREをオープン。apoc-store.com

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LA発エリカ・メイシュのカラフルなクロシェ編みニット。メイド・トゥ・オーダーで完成までの期間も楽しみ。
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コペンハーゲン拠点のキャロライン・オート。空き缶をアップサイクルしたパールイヤリング。
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TDケントのサングラスは3Dプリンターで造形後、手作業でシルバーチェーンを装飾する一点もの。
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「カイン・ブライス・グエンは単繊維のモノフィラメント糸を用いたニットがトレードマーク」。その技術力にジュールズも脱帽。
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廃材に新たな価値を落とし込むサステイナブルなコリーナ・ガウトス。
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「ディスクを用いたアートピースのようなサン・ウーの洋服。眺めるたびにワクワクする」とジュールズ。
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セリア・カルデロン・アセンシオのタイツは伝統的な手染めで描く唯一無二のパターンが魅力。
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トレイシーが注目するスンニ・スンニ。「NYを拠点にする新たなコンセプチュアルシューズブランド」


わずか3カ月で実現させた夢

 トレイシー・スーンとジュールズ・ヴォルバーグによるキュレートネットショップ、APOC STOREは2020年夏に誕生した。従来のリテール業界では、店舗側が取り扱うブランドの商品を選ぶのが当然。でも、その仕組みにふたりは大きな疑問を抱いていた。
「才能あるデザイナーが大勢いるのに、彼らがバイヤーと接点をもつ手段すらないという状況を多く見てきました。既存のバリアを壊し、デザイナーが自分の洋服をなるべく自由に売れるプラットフォームを作りたかったんです」と話すトレイシー。小売業の常識を覆す画期的なアイデアのプロジェクトは、「3カ月たたずにローンチしていました。今考えても、どうやったのか思い出せない!」と笑う。ジュールズ曰く、「ロックダウンの3カ月は、まるで1年分くらい濃密な時間に感じた」。コロナ禍でシーズンごとに洋服を買うという考え方も変化した。今はどんなものが求められているのだろうか?
「量ではなく良質なもの、インディペンデントなショップやデザイナーに投資する気持ちで買い物をする人が増えています」とジュールズ。トレイシーは「外出の機会が減った分、新たに洋服を買うときは、喜びを運んでくれる特別なピースに注目が集まっている」。
 ファッションへの熱い情熱の源は、それぞれ幼少期へとさかのぼる。
「ファッションは想像以上に私たちに多大な影響を与えています。何を選び、着るかは自分を物語ることになるから。私は子どもの頃からかたくなに誰にも服を選ばせなかったみたい。ただ直感に従って、自分がいい気分になる洋服を身につける。着こなしに理由なんていらないんです」と語るトレイシー。ジュールズも「僕は4歳でデザイナーのドキュメンタリーを観て以来、ファッションに夢中なんです。若きデザイナーの発掘は毎日の楽しみ。休日だって欠かせません!」。

APOC STOREが目指すのは「創造性と多様性」

 一点もの、メイド・トゥ・オーダー、3Dプリンター製造など、デザインに限らず、生産方法も個性豊か。今では60以上のデザイナー、アーティストのアイテムを取り扱う。ふたりが思い描くファッションの未来は?
「さまざまな経営モデルで構成された風景です。長い間、大量生産しセールを繰り返し、資本主義に駆り立てられた大企業は業界を均質化してきました。それは創造性と多様性を狭めるだけでなく、地球にも悪いこと。徐々に既存のシステムに反対するクリエイティブも増えてきていますよね。異なる形式が共生できる未来を期待しています」
 デザイナーを信じ、ゆだねる。そして、その一つひとつに情熱を込める。ふたりのAPOC STOREには、今まで見たことのない驚きが満ちている。

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