オリジナリティに富んだ発想に、目の肥えたモードラバーも注目。服作りのバックボーンとなる哲学を知れば、さらに惹かれるはず。
Tu es mon Tresor
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フィットするヒップラインが美しいデニムパンツ。ヴィンテージ由来のバックルバックも後ろ姿のアクセントに。肩にかけたスカーフ全体には、紋織物でブランド名のグラフィックが施されている。
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時がたつほど愛着が増すクリエイティブなデニム
ブランド名は「あなたは私の宝物」という愛らしい意味を持つフランス語。国内外で人気を集めていて、海外のセレブリティの間で注目度が高いことでも知られる。佐原愛美が24歳のときに表参道に開いたブティックがブランドの始まりで、設立10周年の2020年からデニムに特化してリローンチした。生産の全工程を国内で完結させることで、環境への配慮も行なっている。
パールを刺しゅうしたデニムは、ブランドのデビュー当初から継続するアイコン的な存在。
LASTFRAME
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日本の職人の伝統技術をフレームに収めて未来へつなぐ
ひねりのきいたグラフィックが目を引く、スカーフやニットバッグが代表的なアイテムだ。シルクのスカーフは、すべてオリジナルテキスタイル。デザイナー奥出貴ノ洋の故郷、石川県で120年以上の歴史を刻む、紋織物技術によるもの。レザーバッグの美しいフォルムは、浅草の職人の確かな技術で仕上げられている。日本の職人の未来に寄与するクリエイティブに心惹かれる。
ハンドルにつくシルクスカーフは、取りはずして一枚で楽しむこともできる。
Fetico
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パターンワークを駆使して、女性の造形美を強調する
サロペットのブラトップ部分は、取りはずせる2way仕様。
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フェティコは2020年に生まれたばかり。クリスチャンダダなどのコレクションブランドで経験を積んだデザイナーの舟山瑛美が、パタンナーの高浜温子とタッグを組み誕生した。今季は、ヴィーナスのような量感のあるシルエットをイメージ。袖を通せば、自分の体が本来持つ美しさを実感できる。リアリティにも目を向けた服作りなので、手持ちのベーシックアイテムと相性がよいのもうれしい。
ハリのある高密度のシャツ地で、センシュアルなデザインも気負わず着られる。
CFCL
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先進的な精神で作られる、オールシーンで頼れる服
ドレスもカーディガンも、100%ペットボトルリサイクル素材を採用しているが、この事実はCFCLの取り組みの一端でしかない。環境への配慮から、国産の素材選びや流通経路の透明性も追求。「現代生活のための衣服」をテーマに、3Dコンピューター・ニッティングの技術を駆使。ほぼすべてのウェアはシワにならず洗濯機で洗える。モードな見た目、かつ機能性の高い服は、毎日の強い味方だ。
コンピュータープログラミングを活用し作られた、シームレスで有機的な形だ。ストレッチ性も抜群。
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2種類のリブを編み組み合わせた、うねりのあるシルエット。
Kota Gushiken
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ユニークなアイデアで誰もがポジティブに
主にハンドメイドなどによる、ニットとクロッシェで構成される。デザイナーの具志堅幸太は、家にいる時間が長くなったことで、無意識のうちに草木を求め、安心感を覚えたという。最新作では、一緒に暮らし始めたビカクシダ・ネザーランドという、人の手にも見える植物の葉に着想したデザインを前面に編み込んだ。土に還る素材を用い、地球へのやさしさも忘れない。
大幅にサイズの違う2サイズ展開。モデル着用分は、サイズ2。サイズ1は体にフィットするコンパクトな形。
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過去にも発表した"モナリザ"の最新作のニットT。独特な表情がアイコニック。
Mister it.
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手持ちのTシャツに合うよう配慮したデザインが魅力
「実在する人物の顔を思い浮かべて、その人が喜びそうな少しの気遣いをデザインに落とし込んでいる」と語る、砂川卓也。メゾンマルジェラのデザイナーを経て、ミスターイットを2018年にローンチ。目を引くデザインでありながら、日常のワードローブに合うもの作りを念頭に置く。今回紹介するドレスもシャツも、糸から開発した綿100%素材。シルクのようなタッチが心地よい。
ホワイトドレスの胸元には、同色でクロッシェレースと刺しゅうが。透け感も美しい一着。
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半袖シャツにロングスリーブをボタンで付属させる新発想。長袖の後ろ側は、ストレッチ性の高いシースルーニットで、重なる半袖のフレアシルエットを強調する。
Satoru Sasaki
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違和感のあるディテールが光るレス・イズ・モアなデザイン
デビューから2年。常に意識しているのは、デザイナー本人が「奇妙なテイスト」と語る、さりげない"違和感"。ミニマルなデザインでありながら、存在感を放つコレクションが目を見張る。セリーヌのデザインチームやタロウホリウチのアシスタント経験からなるキャリアが、モード感と着やすさを両立する服作りのベースに。トレンドとは一線を画した服は、間違いなく永く愛せる。
人気ドレスの素材を、キュプラサテンに変えた最新作。
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バストラインより高い位置のポケットがユニーク。
RIV NOBUHIKO
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日常のスケールに落とし込んだクチュール
セントラル・セント・マーチンズ出身の日韓のデザイナーデュオが手がける。すべての服を立体裁断で作り、「日常にフィットするクチュール」がコンセプト。キャミソールドレスは、特注のレースと花柄のシグネチャービーズ、さらに600以上のビーズを手作業で縫い合わせた。ヴィンテージデニムとソファの生地を切り抜き、手作業で融合したスカートにも、クチュール的な深みが感じられる。一点取り入れるだけで、日常のスタイリングが刺激的に。
異素材のレイヤーは、記憶の重なりが着想源。
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人の手で調整した自然なフリンジ。
KAYLE
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スタイリングアイデアで印象を変える服
「展開するアイテムの幅を広げすぎず、一着の細部までこだわる表現を目指している」と、デザイナーの加東智恵。その言葉どおり、今季はシャツを基軸に多様なデザインを発表した。ノースリーブのシャツは胸元とウエスト部分が大きく開かれ、ミントグリーンの長袖シャツはウエストを覆わない短めの丈。どちらも一枚で着ると大胆に肌を見せる形が印象的だ。付属の紐の巻き方や重ね着のアレンジで何通りもの着方が楽しめる。奥深いデザインが秀逸。
トップスもスカートも、天然コットンのタイプライター生地。
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カットオフ風の裾も粋。
SEEALL
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普遍的なもの作りは、カルチャーとのリンクから
「トレンドは追わない」と明言するデザイナーの瀬川誠人。アートやカルチャーからインスピレーションを得て、背景を持つアーカイブスをベースにすることで、エターナルな表現を追求する。たとえば、ベージュのジャケットのフロントに縦に走る切り替えは、キュビズム絵画からのアイデア。パンツは、1980年代のマンチェスター・ムーブメントのクラブキッズの着こなしをイメージしている。世界中の職人技術に目を向けた、素材へのこだわりも信頼できる。
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