長い間若手不毛地帯だったイタリアで、次々と希望の光が輝き始めた。
デザイナーへの共通質問
Q1 モットーは?
Q2 アイコンやインスピレーション源は?
Q3 手放せないファッションアイテムは?
Brand: VITELLI/ヴィテッリ
Designer: Mauro Simionato/マウロ・シミオナート
Instagram: @vitelli_official
広告ビジュアルなどを手がけるクリエイティブ・ディレクターが、2016年にニットウェアブランドとして設立。サステイナビリティに焦点を当て、100%イタリア製にこだわる。地元や若手ブランドとのコラボも要注目。
A1 ひとつのニットで地域を救う
A2 Gioventù Cosmica
A3 ハイスクール時代のお手製モッズコート
「穴蔵のクリエイティブ・コミュニティ」
本当にココでいいのか? 2021年春夏のプレゼンのためにたどり着いたのは、ミラノの古びたアーケード。その薄暗さに足を踏み入れるのを躊躇したが、入り口そばのショップスペースがアトリエのようでひと安心。コレクションに触れて大ファンになったのがVITELLIだ。
「80年代に北イタリアから始まった音楽ベースのサブカルチャー“Gioventù Cosmica(コズミック・ユース)”がテーマなんだ」とデザイナーのマウロ。彼にとって何より重要なのがサステイナビリティだ。デッドストックやリサイクルヤーンを、古いニット機械で編み上げる。
「リサイクルヤーンをフェルト状に加工して使用する『Doomboh』ラインに特に力を入れているんだ。新作では、デッドストックシルクに縫いつけ飾りにもしてるよ」。ニット好きにはたまらないヤーンの三段活用! 一方で地元の若手アウトドアブランドなどとのコラボも積極的。彼らはミラノに新しいクリエイターのコミュニティを作り上げようとしている。その発信源が地下の巨大な秘密基地というわけ。「アトリエとしてだけでなく、若いクリエイターたちに多目的スペースとして提供しているんだ。ともに新しいカルチャーを盛り上げたい」
Brand: ARDUSSE/アルデュッセ
Designer: Gaetano Colucci/ガエターノ・コルッチ
Instagram: @ardusse.official
ナポリ生まれ、ローマ育ち。ローマのルイス大学、スタンフォード大学を経てロンドンのCass Business Schoolで修士号を取得。経済を学ぶも、ファッションへの情熱を捨てきれずに独学で服作りを習得。
A1 言われたことが正しいなら受け入れる
A2 ハンター・シェイファー
A3 父のロロ・ピアーナのレザージャケット
「自然とゲーム、現代っ子のパステルな理想郷」
新人など見つけることができないと諦めていた、コロナ禍の2021年春夏ミラノコレ。現地スタイリストから「大々的にデビューするヤツがいる」と聞き会場へ。室内には本物の土。草花や木の根が点在し、森に迷い込んだかのような、詩的な世界が広がる。そこに、パステルのスーツにハンドペイントのプリントが目を引く、美しさとあどけなさが融合するコレクションが登場した。「着想源は古代ギリシャの詩人テオクリトスのアルカディア。現実世界からの逃避である理想郷を描きたかったんだ」という声に振り返ると、そこには頰をつねって現実か確認したくなるほどのイケメンが! デザイナーのガエターノだ。「ブランド名のARDUSSEはArcadiaとJeunesseを掛け合わせた造語。アルカディアはこれまでさまざまな形で表現されてきた。僕は自然が大好きだけど、ゲームやSF、ルカ・グァダニーノの映画も好き。だからプレゼンやキャンペーンでは、自分なりの理想郷をつくったんだ」
Brand: VADERETRO/ヴァデレトロ
Designer: Antonio D’andrea/アントニオ・ダンドレア(右)、
Hanna Marine Boyer/ハンナマリン・ボイヤー
Instagram: @vaderetro_
パリで学んだハンナマリンと、ロンドンで職務の経験を持つアントニオ。偶然出会いモロッコへ移住後、レトロ愛とリテール経験を生かし2020年にナポリでブランドを設立。現在はミラノベース。
A1 過去は現在の未来。普遍的なものに美しさがあり、当たり前なことがスタイルになる
A2 一人を選べない
A3 黒い足袋
「イタリア流レトロスタイルの祭典!」
「私たちはブランドではなくArt de Vivre(暮らしの美学)! 個性的かつ多様なレトロスタイルで、アートや文化を発信しているんだ」
彼らに会ったのはミラノコレ中に開催されたトレードショー。洗濯物を干すかのように麻紐にぶら下げて作品を展示していた。ハンド刺しゅうの施されたトップスなど、懐かしさや温かみを感じ思わず手にとった。「工場生産ではなくアルティザンに価値を感じている。特にこだわっているのはハンドメイドやハンドフィニッシュ。ブレザーやニット、さらにTシャツやフーディだって手仕事を加えている」と、デザイナーの二人が笑顔で教えてくれた。シグネチャーのひとつが地元ナポリが誇るテーラリング。ダブルのディナージャケットの袖にも小花の刺しゅう。このディテールがまたいい! 「人種や性別、年齢の垣根のないスタイルを提案したい。でもコレクションはちょっと時代錯誤でオールドファッション。それがヴァデレトロなの」