長い間若手不毛地帯だったイタリアで、次々と希望の光が輝き始めた。 デザイナーへの共通質問Q1 モットーは?Q2 アイコンやインスピレーション源は?Q3 手放せないファッションアイテムは? Brand: VITELLI/ヴィテッリ Designer: Mauro Simionato/マウロ・シミオナートInstagram: @vitelli_official 広告ビジュアルなどを手がけるクリエイティブ・ディレクターが、2016年にニットウェアブランドとして設立。サステイナビリティに焦点を当て、100%イタリア製にこだわる。地元や若手ブランドとのコラボも要注目。 A1 ひとつのニットで地域を救うA2 Gioventù CosmicaA3 ハイスクール時代のお手製モッズコート ニットの風合いを残しながらヤーンをフェルト状に圧縮した「Doomboh」のビブと、デッドストックのシルクを使ったパンツ チューリップ帽は「Cremate」とのコラボだ 1930年代にミラノで描かれたオイルペイントと、その前に置かれたメンフィスによるデザインのピッチャー。ともに宝物 パンツに施したのはニットのヤーンを刺しゅうとして使った新しい試み 地下の“秘密基地”に置かれたアンティーク編み機 80年代のコマーシャルワークに影響を及ぼしたアートディレクターフランコ・シェピの本。壁の写真は英雄のジュゼッぺ・ガリバルディ 「穴蔵のクリエイティブ・コミュニティ」 本当にココでいいのか? 2021年春夏のプレゼンのためにたどり着いたのは、ミラノの古びたアーケード。その薄暗さに足を踏み入れるのを躊躇したが、入り口そばのショップスペースがアトリエのようでひと安心。コレクションに触れて大ファンになったのがVITELLIだ。 「80年代に北イタリアから始まった音楽ベースのサブカルチャー“Gioventù Cosmica(コズミック・ユース)”がテーマなんだ」とデザイナーのマウロ。彼にとって何より重要なのがサステイナビリティだ。デッドストックやリサイクルヤーンを、古いニット機械で編み上げる。「リサイクルヤーンをフェルト状に加工して使用する『Doomboh』ラインに特に力を入れているんだ。新作では、デッドストックシルクに縫いつけ飾りにもしてるよ」。ニット好きにはたまらないヤーンの三段活用! 一方で地元の若手アウトドアブランドなどとのコラボも積極的。彼らはミラノに新しいクリエイターのコミュニティを作り上げようとしている。その発信源が地下の巨大な秘密基地というわけ。「アトリエとしてだけでなく、若いクリエイターたちに多目的スペースとして提供しているんだ。ともに新しいカルチャーを盛り上げたい」 Brand: ARDUSSE/アルデュッセ Designer: Gaetano Colucci/ガエターノ・コルッチInstagram: @ardusse.official ナポリ生まれ、ローマ育ち。ローマのルイス大学、スタンフォード大学を経てロンドンのCass Business Schoolで修士号を取得。経済を学ぶも、ファッションへの情熱を捨てきれずに独学で服作りを習得。 A1 言われたことが正しいなら受け入れるA2 ハンター・シェイファーA3 父のロロ・ピアーナのレザージャケット 中性的な要素を感じさせるラッフル使いのシャツ。パンツには水彩画風のプリントを施している 理想郷プリントのテキスタイルをラッフルとしてアクセントにしたロマンティックなシャツ。パンツのパッチにはポエムが綴られている 2021年春夏のムードボード。ラベンダーをベースにしたパステルカラーのイラストは、まさにデビューコレクションの世界観そのもの 家のテーブルの上にもカラフルな花々で理想郷を描く 「自然とゲーム、現代っ子のパステルな理想郷」 新人など見つけることができないと諦めていた、コロナ禍の2021年春夏ミラノコレ。現地スタイリストから「大々的にデビューするヤツがいる」と聞き会場へ。室内には本物の土。草花や木の根が点在し、森に迷い込んだかのような、詩的な世界が広がる。そこに、パステルのスーツにハンドペイントのプリントが目を引く、美しさとあどけなさが融合するコレクションが登場した。「着想源は古代ギリシャの詩人テオクリトスのアルカディア。現実世界からの逃避である理想郷を描きたかったんだ」という声に振り返ると、そこには頰をつねって現実か確認したくなるほどのイケメンが! デザイナーのガエターノだ。「ブランド名のARDUSSEはArcadiaとJeunesseを掛け合わせた造語。アルカディアはこれまでさまざまな形で表現されてきた。僕は自然が大好きだけど、ゲームやSF、ルカ・グァダニーノの映画も好き。だからプレゼンやキャンペーンでは、自分なりの理想郷をつくったんだ」 Brand: VADERETRO/ヴァデレトロ Designer: Antonio D’andrea/アントニオ・ダンドレア(右)、 Hanna Marine Boyer/ハンナマリン・ボイヤーInstagram: @vaderetro_ パリで学んだハンナマリンと、ロンドンで職務の経験を持つアントニオ。偶然出会いモロッコへ移住後、レトロ愛とリテール経験を生かし2020年にナポリでブランドを設立。現在はミラノベース。 A1 過去は現在の未来。普遍的なものに美しさがあり、当たり前なことがスタイルになるA2 一人を選べないA3 黒い足袋 古きよきイタリアをイメージしたムードボード タロットが来季のテーマ、ジプシーへつながる 最近ハマっているという“Sadhguru”のYouTubeチャンネル。「WoodWick」のキャンドルはHumidor Cigarが気に入っているが、ちょうど切らしていたのでこの日はVanilla & Sea saltに ストーリー仕立ての2021年春夏キャペーン。テーマは“エンゲージメント”。手編みのタンクトップにはかぎ針編みの装飾が施されている “ランチ”と題されたキャンペーン写真 「イタリア流レトロスタイルの祭典!」 「私たちはブランドではなくArt de Vivre(暮らしの美学)! 個性的かつ多様なレトロスタイルで、アートや文化を発信しているんだ」 彼らに会ったのはミラノコレ中に開催されたトレードショー。洗濯物を干すかのように麻紐にぶら下げて作品を展示していた。ハンド刺しゅうの施されたトップスなど、懐かしさや温かみを感じ思わず手にとった。「工場生産ではなくアルティザンに価値を感じている。特にこだわっているのはハンドメイドやハンドフィニッシュ。ブレザーやニット、さらにTシャツやフーディだって手仕事を加えている」と、デザイナーの二人が笑顔で教えてくれた。シグネチャーのひとつが地元ナポリが誇るテーラリング。ダブルのディナージャケットの袖にも小花の刺しゅう。このディテールがまたいい! 「人種や性別、年齢の垣根のないスタイルを提案したい。でもコレクションはちょっと時代錯誤でオールドファッション。それがヴァデレトロなの」 Column | まだまだ気になる新人さん イタリアン・モードの復活に欠かせないこの二人も絶対に押さえて~。フェデリコ・シーナはなんと伊版ジャックムスになるのではないかとささやかれている逸材。ロマーニャ地方の歴史や文化が持つ、ロマンティックな要素を加えた“地元LOVE”あふれるコレクションがいい。もう一人はフランチェスコ・ムラーノ。ファッションの専門校IEDミラノの卒業コレクションが「ミラノ・モーダ・グラデュエート2019」で優勝。イタリア製にこだわる新星なの! “ドレープの王子”と呼びたくなるような、美しい流線に惚れぼれ〜。Brand: FRANCESCO MURANO/フランチェスコ ムラーノDesigner: Francesco Murano/フランチェスコ・ムラーノInstagram: @murano.francesco パワーショルダーを主軸とするテーラリングと、バロックアートのようなドレープがシグネチャー 1997年生まれのフランチェスコ Brand: FEDERICO CINA/フェデリコ シーナDesigner: Federico Cina/フェデリコ・シーナInstagram: @federicocinaofficial 故郷ロマーニャはワインで知られるだけありブドウのモチーフが象徴的に使われている。新作では木版で伝統的なプリントを施した サステイナブルな物作りをするフェデリコ 世界の注目新人さん!