パトゥのスタイル・ポリシーを、徹底解剖!

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ニット€595(D)・ショーツ€395(B、D、E )・カゴバッグ€395(A、B)・イヤリング(日本未入荷)/PATOU

ギョームのオフィスにて。マリンセーターの裾には、合唱団の子どもの制服をイメージし、レースを。袖に刺しゅうしたイニシャル“JP”は、ギョームにとってはロゴというよりビジュアルモチーフ。ショーツはスポーティなアイテムながら、クチュールなボリュームで、構築的に。

ギョームが語る、新生パトゥ

和気あいあいとした社風、エコ・フレンドリーなものづくり、顧客への思い。それらが反映されたのが、新生パトゥのコレクションだ。

ギョーム・アンリがジャン・パトゥというメゾンに出会うべくして出会ったのは、2年近く前のこと。「運命を感じさせる話だから、ぜひ語らせてほしい」という彼の言葉に、その一部始終を聞くことにした。

待ち人来たる。ギョームとパトゥの、運命的な出会い

「2018年3月にニナリッチを辞めた後、僕は暇な時間に、それまでできなかったパリの散策に乗り出した。あるとき出向いたのが、自分にはあまりなじみのなかった16区。まずはトロカデロ広場のアールデコ調のサロン・ド・テ『カレット』に初めて行って、カフェを一杯。その近くのパッシー墓地へ足を延ばしたらたまたま見つけたのが、ジャン・パトゥの墓碑。僕はパトゥという響きが気に入り、思わず顔がほころんでしまったのを覚えている」。ギョームはまるで語り部のようにぐいぐいとこちらを引きつけながら、切り出した。

「その翌週にはLVMHグループの重役とアポがあり、再びカレットへ。雑談の流れで僕が彼に語ったのは、前の週の散歩のこと。すると顔色を変えるほど驚いた彼は『なぜパトゥの話を?』と。『耳にすると自然とほほえんでしまう名前だから』と、僕。次に『実は今LVMHはジャン・パトゥに投資しようとしている。興味はあるか?』と真剣に切り出されて驚いたのは僕のほうだ! すぐに『スマイルをもたらすメゾンの仕事をするのは、望むところ』と答えた。思えばカレットは1920年代末には文人たちで栄えていたから、もしかしたらジャン・パトゥも常連だったかもしれないね」。待ち人来たる、とはこのことか。「パトゥはまさしく、僕が待ち望んでいたプロジェクトだったんだ」

 その後メゾン名は「パトゥ」と改められ、ギョームは新生「パトゥ」づくりへ乗り出すことに。1914年創立のこのメゾンは、’87年以降長い眠りについていたから、ほぼ真っさらな状態だった。クチュール・サロンのオープン数年後にスタートした香水部門だけは、その後資本を替えつつずっと存続していたとはいえ。つまりギョームの任務はコレクションの立ち上げだけでなく、メゾンのコンセプトやイメージづくりからオフィス兼アトリエの設立、スタッフの構成まで。1年がかりのこれらの仕事が、ギョームなりの「パトゥ」スタイルの方向性を定めるのに役立ったことは、言うまでもない。

物件探しからコンセプトまで、新生「パトゥ」の誕生記

 まず物件でこだわったのは、グループ活動の場としての歴史を持つ場所であること。郵便局や教会、数々の学校を見たのち行き着いたのが、この元女学校。そして「秘密のラボラトリーではなく、開放的でフレンドリーなメゾンをイメージ」して、アトリエを入り口すぐ隣のオープン・スペースにしつらえた。また自身の仕事部屋は、上階のプレスルームとオフィスの奥に。「こうして僕は出勤時にも退出時にも全員と顔を合わせ、ここで起こっていることすべてを目にするんだ。スタッフたちが何でもシェアして仲間意識を持てることは、とても大事」と、彼は断言する。

 また彼はジャン・パトゥのモードについて学ぼうとしたが、コスチュームや写真などは意外と少なく、複数の美術館やパリ市の資料館に散在している。「まとまったアーカイヴスがないのが、かえってよかった」と、ギョーム。「勉強になったのは、彼の伝記だ。読んでわかったのは、彼がモードだけでなく文学やアートも愛したこと、何より、実業家としてのビジョンの持ち主だったこと」。こうしてギョームはビジュアルからではなく、その人となりから、パトゥの世界へ入っていった。

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シテ島、ノートルダム寺院の隣にあるパトゥ本社。ギョームいわく「ここは右岸と左岸を結ぶ、パリのヘソ」。入り口左手に広がるアトリエでトルソーにかぶせたオーガニックコットンには、メゾンのエスプリを語る詩をプリント

フレンドリーなメゾン、顧客が必要とする服

「1920年代の彼のコンセプトは、今日にも十分通用する。たとえばワードローブに対する考え方。デイウェアとイブニングに週末のレジャー用ウェア、という3つのカテゴリー分けは彼の発案だ。当時女性たちは一日に4、5回着替えていたところ、彼は回数を減らしたわけ。また彼はセレブリティへの衣装提供というきらびやかな世界よりも現実感を大事にし、スタッフや友人、そして妹など、周りの女性たちのニーズを満たすことに努めていたんだ」。なんという開眼だろう! 顧客の顔をイメージできること。ギョームは自分が探し求めていたものがこんなシンプルなアプローチにあったことを実感する。

「以前の僕は、コレクションごとにテーマを設けてストーリーを語ろうとした。でも今は違う。パトゥでは、僕は顧客たちの“相棒”でありたい。誰のために作る? 彼女たちのライフスタイルは? 何を必要としてる? そう考えたら、デザインのアイデアはおのずと生まれた。ひとりの女性が月曜と火曜では違う自分を演じることを想像すると、バリエーションも自然に広がったんだ」

 そして彼が取り組んだのは、トレンチコートやボウタイブラウス、ユニフォームジャケット、マリンニットなど。「フレンチガールのワードローブを作ることに専念したんだ。僕が愛するすべてのキー・アイテムのおさらい。地方生まれの僕がずっと抱いていたパリへの憧れも思い出してね」

 こうして昨年9月末、ギョームはプレゼンテーション形式で、初コレクションを発表した。「ファッションにコミュニケーションは不可欠でしょう。プレゼンテーションなら、僕も会場にいてゲストたちと話せるし、第一、エネルギー消費を節約して環境問題にも貢献できる。こんないいことはない」と、ギョーム。「僕が語りたいのは過去のストーリーや歴史の重みではなく、親しみやすさ。由緒あるメゾンの復刻だからこそ、僕はフレンドリーなタッチを加えたかった。パトゥはモダンの象徴だったジャン・パトゥのエスプリが息づく、新しいメゾンだから」

 デイとイブニング、リラックスとドレスアップ、軽やかとシリアスといったコントラストをいい塩梅に織り交ぜたワードローブは、再出発したギョーム・アンリの自信作だ。

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左は往年のジャン・パトゥのフェイスパウダーの容器。右はこれをもとにアスティエ・ド・ヴィラットが制作した、陶器のランプシェード。本社の内装に使用

取り扱い予定先
A ビオトープ (ジュンカスタマーセンター) 0120-298-133 ※2月8日から白金台ビオトープにてポップアップを開催B 阪急うめだ本店「D.エディット」 06-6361-1381(代表)
C マルティニーク丸ノ内 03-5224-3708
D イザ 03-3486-0013
E エストネーション 0120-503-971
※プライスは本国販売価格です。€ 1 =約122円(2019年12月26日現在)

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